「戊辰鳥 後を濁さず」第1話
あらすじ
戊辰鳥 後を濁さず
―つちのえたつとり あとをにごさず―
第一部「釜場」
三月十五日(金)一日目
農家の跡取りである自分(トキ)は相続対策で古いアパートを解体し、その土地を売ることにした。
周辺の地盤のデータをいろいろと調べると、やはり弱い地盤であるらしく、新しく家を建てるにはそれなりの基礎か地盤改良が必要だと予想された。そのため、地盤の正確な情報があらかじめわかった状態であれば、きっと買い手がつきやすいと思い、土地を更地にした後、地盤の調査を開始した。どうせやるなら硬い地盤まで調べるつもりだ。この件についていろいろと相談に乗ってくれた友人(モグラ)のツテで、千葉の四街道の会社に依頼することとした。
すぐさま動いてくれた。
一日目は移動と機材搬入と準備で終了。
更地となっているフットサルコート一面分くらいの大きさの区画はクレーン付きのトラックがそのまま乗り入れられるようになっている。
そのため、調査で必要になるというヤグラは作らずに、クレーンを伸ばした先のフックをヤグラがわりにして、作業をする予定だと、顔にシミだらけの職人さん(ジンベエザメ)が教えてくれた。
トラックの荷台には、ボーリングマシンといって地面を掘る動力となる、跳び箱程度の大きさの機械と、その動力を伝わって回転しながらドリルのように土を掘り進んでいく金属製の連結式の筒がたくさんあった。あとは、大きな金属製の水槽と、ポンプが大きいのが一つと小さいのが二つあった。加えて、それらを動かすための発電機が二つ積んであった。
これから掘る予定の位置を区画の真ん中に決めたジンベエザメは、スコップでその位置を掘り始めた。なんでもただ筒を回転させるだけでなく、筒の先端から水を出しながら掘るようで、掘りながら溢れてくる水を一旦溜める場所が必要になるらしい。
ジンベエザメは作業をしながら、色々と教えてくれたが、一番驚いたのは、ジンベエザメ一人だけで作業を進めていくということだった。
一通りの準備はすぐに終わり、調査作業にかかれるはずだが、今日は終わりと言っていた。なんでもジンベエザメは、これからモグラと会って街のスナックに行くらしい。
やられた。
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