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バンドをやっていたり、ひとりで歌ったりもします。その時に出来た、つくった歌詞の集まりです。 曲のついてないものが多いですが、曲がついた詞もあります。 自分のつくった詞がどこまで人… もっと読む
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記事一覧

星月夜

あぁ まだ 手を 離さないで
いつか 今日が 意味を持つとして
僕と君は 共に生きられない

愛してる 嘘ではないけど
僕ら 一人を選びきれなくて
このまま 雑な愛撫をする

いつの間にか 夜になって
窓辺で 並んで空を見つめてた
さっきまでの 雨は止んでいた

風に揺れる髪を 掬うたび見えた
気のせいで済ませた涙

うねる夜 星も月も
偽物みたいに輝き
朝に消えてく
もう二度と会うことはない

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ドーナツホール

さよなら あなたの眼は見ない
無邪気に触って 汚れた指先
本気になっても 報われない
大人のふりしていた

いつまでも続く気がしてた恋人ごっこ
あなたの中ではもう終わったこと
傷ついてないふり 気づいてほしかったけど
もうそこにあなたはいない

ずっと考えていた
私は存在?それとも傷?
どうやったって私は 忘れられない
あなたのこと 苦い蜜の味

「ずっと一緒にいよう」 「好きだよ」
見え透いた嘘

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8月とゴッホ

夏の大展覧会 小学生の頃母に手をひかれ
静かな冷たい暗がりで ダウンライトに照らされた油絵
うねりを帯びたあの気圧 私の心に入り込んだ

母さん、覚えていますか 一人で過ごす私にどこか連れて行ってやろうと
選んだのがあの美術館 何も言わず理解してほしそうな銅像が外に立つ

外では蝉が鳴きわめいて 命をもっとと叫ぶ声がする
炎のように生きたという 耳のない男の恨めしそうな肖像画

漠然とただ過ごして

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君と僕の誕生日

ずっと好きだったあの娘に彼氏ができた
照れながら、らしくないでしょと笑いながら、僕だけに打ち明けてくれた
高校の同級生だったあいつと
お互い地元で就職したから、しょっちゅう一緒に飲んでいたのと
つかの間の帰省と、久々の故郷に、まだ僕自身感覚が戻っていなくて
昨日朝まで飲んだ高校時代の奴らの中にあいつはいたっけな
二日酔いのぼやけた頭に、君のしゃべる事実だけが氷のようにしみてゆく

浦島太郎はきっと

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モラトリアム

恋の歌が作れなくて 愛の言葉も紡げなくなって
だから誰かを励ますような歌を 何もかも知ったように歌って
そうやって 救いようのない自分をごまかしていたの

多分、私の中の迷いを 声にすることが恐ろしくなって
このすさんだ社会を批判して 自分ごとのようなそうじゃないような
だからこんな 動揺している私を見せたくなかった

一つ一つ慎重に 元に戻らない言葉を吐く
アイスティーの溶けきった 氷を探すよう

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ものばかり

大ぶりなネオンと笑い声で満たされた深夜の繁華街
何も考えてなさそうな幸せな顔をした奴らばかり
でもこの路地を裏手に回れば輝きと裏腹のはきだめを
なかったことにして避ける先進国とはその名ばかり
毎日どこかで人が人を殺し、知らない誰かに祈り捧げ
産んだかと思えばすぐにゴミ箱へ投げ捨てる希望の薄明かり

この白々しい騒がしさに全身を染めることもできずに
だからといって真っ向から戦う勇気もなく人を憚り

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住所不定無色

仕事は今日辞めた 彼女とも別れた
俺は今やっと 俺のために生きていく
どこかでエンジン音が響く 用もなく外へ出る
誰も止めない 何も待っていない 深い夜へ踏み出す

人づてにきいた話 昔の仕事仲間の話
あいつは辞めたあとで 夢を追って死んだという
家出同然で飛び出した故郷 ネオン街と重ねて
照らされてできた影の中 思い出が亡霊のように浮かぶ

こんな時に誰かに電話しそうになる
頑張ったねと言っても

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日曜日

二人ベッドで寝がえりで 目が合って笑いあって
声上げて笑いあって 濡れた朝日に目を細める
水たまりの道標 どこまでも照らされていて
そんな日曜日 今日はどこか出かけよう

昨日夜更かしして観た映画を返さなきゃ
そういえばシャンプーも切れていたよね
近場の街に行くべ 寝ぼけて訛る君が可愛くて
そんな日曜日 今日はもう少し遠出しよう

虹色のレジャーシート もしものビニール傘2本
コーヒー、紅茶、魔法

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二時限目

紙ににじむインクをただ見ている
黒板の文字はどんどん増えていって
見失ったからノートをとる意味はもうない

おもちゃ箱から飛び出した世界は
思ったほど面白くなくて
散らかったままが好きだった
片づけるのは苦手だった

ゆらゆら枯れ葉が舞い落ちる
見せつけるように舞い踊る
飛べないのは、僕だけみたいだ

マーカーペンが手元から 離れて床の上をはねた
ふとした勢いで目は前を見る
僕がたどって線を引きた

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放し飼い

ここにいるのを運命ではなく 宿命とするのであれば
逃げようなんて思わない なんでだって、楽だから
君と話をしているその一瞬 頭の隅にある思想
例えばそこのカミソリを 僕は君の喉元へ
例えばそこの包丁を 君は僕の下腹部へ
自由というのは そういうことだと思う

球体アクリルの中覗けば ちび屑ぎっしり
それは箱庭の中 僕らは十分もがいている
自由の大きさにもがいている 飼いならせずに困っている

自由

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ストーリーテラー

午後の天気 晴れ時々くもり、乾燥に注意 瞬きの間の月曜日
そぞろな火曜日 娯楽の少ないこの町で 退屈なのかもわからない毎日

この季節の空は大体鉛色だから 押しつぶされないようにこんな話を
そうやって話す前から笑わないで 今世紀最大のアイデアを

今日は君にこの話をしよう とっておきの滑稽な
笑われ笑った昨日のことを アレンジをして届けよう

崩れた縁石 タイミングの押しボタン式信号機 早退でもす

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海の部屋

ガラス越しドアの窓から覗く ブラインドが閉まった君の部屋
ちょっとつま先をたてて覗く 静まり返った部屋が、水で満たされた海のようで

開けたら闇に飲まれそうで ここで黙ってみていた
入るとおぼれてしまいそうで ここで黙ってみていた

君が泳いでいる こっちにおいでと 僕に誘いかける

真夏の湿度が外の僕を包む
この部屋だけは海の底のように冷たく孤独で
アクアリウムのように君がおどる
もう会えない君

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留守番ですわ

春夏秋冬 何回回ったかな 色とりどり
どこに行ったか 何をしてるか君は 帰ってこない
とりあえず私は 君が「ただいま」言うまで 「おかえり」の用意

部屋は模様替えして 前より陽がさし込むよ
でも君のお気に入りの時計は 相変わらずのポンコツだけど捨ててはいないから

ほんとに戻ってくるかわからない
あの日何も言わずいなくなった君のこと
こうやってずっと信じていればよかったのに

風が鼻をつつく 今

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