海の部屋
ガラス越しドアの窓から覗く ブラインドが閉まった君の部屋
ちょっとつま先をたてて覗く 静まり返った部屋が、水で満たされた海のようで
開けたら闇に飲まれそうで ここで黙ってみていた
入るとおぼれてしまいそうで ここで黙ってみていた
君が泳いでいる こっちにおいでと 僕に誘いかける
真夏の湿度が外の僕を包む
この部屋だけは海の底のように冷たく孤独で
アクアリウムのように君がおどる
もう会えない君を見つめていられる場所
ゆらゆらと染める海藻の青 もう開くことのない窓に映える
太陽の光が静かに変わる青 どこからか漏れた光は、振り返って笑う君のようで
手を当てたら氷のような 目が覚めるような冷たさだった
額を当てたらあの日の君のような 夢から覚めるような冷たさだった
君が泳いでいる また思い出してるのと 僕をからかう
まとわりつく熱に汗を搾り取られながら
永遠に部屋の外で君を眺めていればいいと思っていた
水槽の中を廻る君はなぜか悲しそうで
このままだとどちらかが先に消えてしまう 君の声がきこえた
扉を開けてよ 私はこのまま水に溶けて
日に照らされたら蒸気になって
空気に交じって あなたの身体を巡らせるから
息を止めてドアを開けた 腫れた瞼を懐かしいにおいが撫でる
暗がりで甘やかしていた目を開けた ブラインドを開ければ君がいた部屋
吹き抜ける風は君のようで
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