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目に星の入るお年頃

今の私からは想像もつかないけれど、
少女漫画にどっぷり浸かっていた時期がある。つま先から頭の中まで、その中毒性侮るべからず。あの時代、それは少女フレンド、マーガレット、りぼん、なかよしなどの週刊漫画だった。

当時住んでいたブラジルのサントスでは船に乗って海の向こうからやってくる日本の雑誌はなかなか手に入らなくって。ああ、そのなんと待ち遠しかったこと!

1カ月に1度、家族4人、サントスからサンパウロの日本人街まで車で片道2時間強、1日がかりのお出かけはいつも「お寿司と漫画」がセットになっていた。(海辺の街サントスから山の上のサンパウロまでその頃の交通事情ではもっとかかったかも。いつも妹と2人、ガタガタと揺れる後部座席で眠りこけていた記憶がある。)

大人にはお寿司、子供には漫画。
日本人の握った本場のお寿司が食べられるのである。待ち遠しい連載漫画の次が読めるのである。心もお腹もいっぱいになる、家族全員待ち遠しい月いちイベントだった。

思えば。
私たち姉妹は漫画が読みたくって日本語を一生懸命勉強したのかもしれない。1カ月に1度のサンパウロ行きのためならば、宿題もお手伝いもお片付けも苦になるものは無かった。
サントスの我が家にたどり着くのも待ちきれず、買ってもらった4冊束の少女漫画本がくくられたヒモを切るのももどかしく、貪るようにして読んだ「白いトロイカ」や「リボンの騎士」などなど。

見たことも行ったこともない世界に私は身体ごと浸った。くるくる巻き毛にひらひらロングドレス。画面いっぱいにキラキラ散りばめられた花、リボン、羽根、宝石、、そして何より顔の3分の1を占めるあの大きな目!

目には星まで入っているではないかっ!

私はそうやって
まだ汚れないバージン脳を現実離れしたヒロイン達に同化させながら自分を「バーチャル世界の主人公」に仕立て上げて行った。

貴族、バレリーナ、スポーツ選手、みなしご、、身分は何であれ「悲劇の(薄幸の)ヒロイン」は「数奇な運命」に弄ばれながらも最後は必ずハッピーエンド。
ストーリーはどうあれ、
1) 健気な努力
2) 無垢な魂
そして何より
3) 圧倒的な美貌(これマスト)
この3つがハッピーエンドへと導かれるヒロインの必勝条件だなんて、あの頃、気づいているわけもなく

くくくく、、、
振り返ってみて、ここでガクッと膝が折れる私、どしたっ!?

少女は自分にウットリしたいのである。そのウットリに油を注ぐ罪深い少女漫画のせいにできれば、、と思うのだが。
わかっています。

白い馬に乗ってやってくるはずだった王子様、
あの頃のお約束、待ち切れなかったのは私です。

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