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下北沢生まれブラジル育ちオレゴン育ちサンフランシスコ育ちロサンゼルス育ち世田谷暮らし。

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  • 人生が100秒だったら

    私に起きたことを100秒くらいに縮めてみよう。人生最期の瞬間、まぶたにフラッシュバックされるっていう、あんなふうに。

最近の記事

人生が100秒だったら: 40秒目

お芝居なんですよ! 「お昼休み、空いてる会議室があったら使わせていただけますか?」 「いいけど、何に使うの?」 営業部の部長秘書、○野さんに聞かれた。 この数ヶ月、会社帰りに劇団の俳優養成所に通っていること、あと2ヶ月後に卒業公演があって、自分にも役がついたこと、ついては昼休み誰もいないところで練習したいと思っていることを説明したら、快く鍵を渡してくれた。 覗きに行っちゃおうかな?と言われたので、恥ずかしかったけど、はいと答えた。 新入社員として配属されたグループセクレタ

    • お芝居なんですよ!

      「お昼休み、空いてる会議室があったら使わせていただけますか?」 「いいけど、何に使うの?」 営業部の部長秘書、○野さんに聞かれた。 この数ヶ月、会社帰りに劇団の俳優養成所に通っていること、あと2ヶ月後に卒業公演があって、自分にも役がついたこと、ついては昼休み誰もいないところで練習したいと思っていることを説明したら、快く鍵を渡してくれた。 覗きに行っちゃおうかな?と言われたので、恥ずかしかったけど、はいと答えた。 新入社員として配属されたグループセクレタリーという仕事。はじ

      • 人生が100秒だったら: 24秒目

        犬の話だけど犬の話じゃない話 一度だけ、短い間だったけど犬を飼ったことがある。子犬の時もらってきて、子犬のまま手放したから、記憶の中は今でも子犬のままだ。 名前はポンゴ。 ディズニー映画「101匹わんちゃん」の主人公の名前そのまんま。犬種もダルメシアン(もどきの雑種)。ねだってねだってねだり倒して飼ってもらった。あれほど何かが欲しかったことはなかったし、これからもないのではないか。心が震えるくらい、欲しかった子犬だった。 ポンゴがはじめて家にやってきた日の翌朝のことを覚え

        • 人生が100秒だったら: 39秒目

          自転車に乗れた日 はじめ、わからなかった。 なんで自転車が前へ進むのか。 みんなスイスイ乗りこなしているのに、いとも簡単そうに見えるのに、いざ自分がまたがってみるとうまく行かなくって、なんじゃこれ、となった。小学生の時、まわりの友達がいっせいに乗り始めて、私も乗りたい!と思った時のこと。親の大きな自転車を借りて、放課後特訓を繰り返した時のこと。 止まってる自転車には乗れない。 そりゃそうだ、転ぶよね。 どうやっても自立しない。 でもみんな乗れてるのは何故? 私だけ乗れない

        人生が100秒だったら: 40秒目

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        • 人生が100秒だったら
          40本

        記事

          人生が100秒だったら: 38秒目

          キュウリ王子のいた夏 ほんの出来心だった。 どこにも行けないゴールデンウィークに、お金のかからない気分転換のつもりだった。 野菜作りは土作りだと「はじめての家庭菜園」に書いてあった。雑草取りをした。庭を掘り返した。自分の墓を掘ってるみたいだと思った。 ベトベトした酸性の粘土質で使えない土だとわかった。くじけず、石灰を混ぜた。肥料を混ぜた。 「何してんすか?」 不安が残ったので、大量の培養土を買ってクロネコのお兄ちゃんに不審がられた。 穴を大きく掘り過ぎて、培養土が足りな

          人生が100秒だったら: 38秒目

          人生が100秒だったら: 37秒目

          いま、何番目の夏? 夏が好きだ。大好きだ。 夏生まれだからかもしれないけど、どんなに暑い目に遭わされようと夏にはめちゃくちゃ甘い。(これまで生きてこられたから、これからも大丈夫という前提で) 夏は特別な季節だ。どうしてって? 夏はこれまでのたくさんの夏のことを思い出させるから。 そんな季節、他に無い。 春も秋も冬も、そんなふうに振り返ったり懐かしがったりしない。だから私の夏は何十奏になってやってくる。これまで会った濃い夏がひとつひとつ積み重なって。 たとえば ・50cc

          人生が100秒だったら: 37秒目

          人生が100秒だったら: 36秒目

          誕生日がわからない人 お誕生日は良いものだ。 そう信じていた。 アメリカに住みついてからは特に。 「お誕生日おめでとう!」と言い、「ありがとう!」と答えるのは幾つになっても、嬉しい(ありがたい)ものだと。 偉そうな人も、偉くない人も、歳をとった人も、若い人も、バースデーケーキや花束が似合う人になる。ニコニコ顔が似合う日だ。子供っぽい? 良いではないか、可愛げがあって。誰かの誕生日だと知っただけで、普通の日がキラキラしてくるのは素敵ではないか。 だから、少なからず驚いた。

          人生が100秒だったら: 36秒目

          人生が100秒だったら: 35秒目

          ウットリの自家発電 何年か前、イヌ語翻訳機(ネコ語版もあるとか)というものが話題になったが、人間の幼児語にも翻訳して欲しいものがある。 本人に覚えはないのだが、私も幼児の頃「わけわからん語」を発していた(らしい)。 母いわく 機嫌がいい時に決まって取るポーズと発する言葉?歌?があったという。机や椅子なんかの角につかまって(ちょっとつま先立ち)と〜くを見つめながら、歌うのよね。 なんて? 「ありぼ〜こりん🎵、い〜きま〜るちゃん🎵、やくりち〜て🎵」って。 なんじゃそれ? メ

          人生が100秒だったら: 35秒目

          人生が100秒だったら: 34秒目

          目に星の入るお年頃 今の私からは想像もつかないけれど、 少女漫画にどっぷり浸かっていた時期がある。つま先から頭の中まで、その中毒性侮るべからず。あの時代、それは少女フレンド、マーガレット、りぼん、なかよしなどの週刊漫画だった。 当時住んでいたブラジルのサントスでは船に乗って海の向こうからやってくる日本の雑誌はなかなか手に入らなくって。ああ、そのなんと待ち遠しかったこと! 1カ月に1度、家族4人、サントスからサンパウロの日本人街まで車で片道2時間強、1日がかりのお出かけはい

          人生が100秒だったら: 34秒目

          人生が100秒だったら: 33秒目

          サーカスとチョコバー この世には無敵の組み合わせ、というものがある。幼稚園に上がった頃、そのことを知った。 私にとって、それはサーカスとチョコバー。 ちょうどその頃、人気を博していた木下サーカスというものに、祖父と行った時のこと。その頃まだ赤ん坊だった妹と忙しかった父母を置いて、おじいちゃんは孫の私1人を後楽園で行われていたサーカスに連れて行ってくれた。 それも何回か。 大人とお出かけ、というだけでハイになる大イベントだったが、そこには幼稚園児のテンションをさらに上げるマ

          人生が100秒だったら: 33秒目

          人生が100秒だったら: 32秒目

          世界を救おうと思った(のに) 子どもはみんなそうなのか。 私が特にそうなのか。 わからないけど、昔の話。 元気と努力がとりえの小学生の時、夏休みの自由研究に腕まくりした。ちょっと背伸びをして難しいことに取り組んでみたかったのか、*法定伝染病を選んだ。 (*コレラ、赤痢などを含む11種の伝染病のこと。これらを指定していた伝染病予防法は1998年に廃止。現在は感染症予防・医療法に改定。) 今ならネットでさくさく調べられる内容を図書館に通って資料を探し、わからない漢字は辞書を引

          人生が100秒だったら: 32秒目

          人生が100秒だったら: 31秒目

          はじめての色えんぴつ 子供の頃から今までずっと持ち続けているものがある。正確に言うと、いつどんな年代でも持っていたものがある。それは、色鉛筆セット。(鉛筆、クレヨン、サインペン、水彩、ものは違えど内容は同じ。色んな色がずらっと揃っているあの多色セットだ。) 使いこなしてるかって? いいえ、たま〜に思い出したように、ちょこちょこ何色か使っているだけです。デザインやデッサンの授業でも使う色は数本に限られてたと思う。 でも! 全色使うわけではないのに、キラキラ勢揃いした色達を揃

          人生が100秒だったら: 31秒目

          人生が100秒だったら: 30秒目

          寅さん先生 そういえば、塾に行っていた。 あんなに楽しかったこと、忘れてたなんてどうかしてる。5年生の時からだったか、小学校最後の2年間、私は塾に行っていた。というより遊びに行っていた。 放課後毎日のように集まっていた原っぱに来なくなった友達を問い詰めたら、 「じゅくに行ってるんだ」 「じゅくって何さ?」 「楽しいから、いっしょに行こうよ」って ピクニックに行くように誘われたのがきっかけだった。原っぱで遊ぶ時間が少なくなったけど、それを補ってお釣りが来るほど面白かった。

          人生が100秒だったら: 30秒目

          人生が100秒だったら: 29秒目

          二重まぶたスプーン作戦 朝、学校へ行く支度をしている時、母から渡されるものがあった。それは「スプーン」。お砂糖を入れたり、紅茶をかき混ぜたりするあの小さなスプーン。 私はそのスプーンを使って、左右のまぶたを変わりばんこに押し上げ押し付け、無理やり二重を作るのである。無理やりだから、スプーンをまぶたから離すとすぐもとに戻る。 当たり前だ。 遅刻しそうになると、食べかけのパンを口にくわえながら、ランドセルを肩に担ぎながら、片手に持ったスプーンでまぶたを抑えながら、走る。 思い

          人生が100秒だったら: 29秒目

          人生が100秒だったら: 28秒目

          ルイス・アウグスト 1枚の集合写真しか残っていない。顔だってちゃんと覚えているわけじゃない。だけど、だからこそ永久保存してある名前から、何か解凍できるかどうか、、試してみよう。 初恋の人はルイス・アウグスト。 私だけじゃない、クラスみんなが一目置いていた。黒い髪。黒い瞳(だったと思う)。黒縁メガネがカッコ良かった。白シャツに黒いズボンは地味だけどお洒落。(遠い記憶の彼方、想像の域)でも外見だけじゃない。そこ強調したい。 うまく説明できないな。 立ち居振る舞いなんてもの

          人生が100秒だったら: 28秒目

          人生が100秒だったら: 27秒目

          小学校の頃がいちばん楽しかった 馬鹿にされることを覚悟で、あえて言う。 小学校の頃がいちばん楽しかった。 なんじゃ、その後の人生はおまけかい?お前のピークは小学校かい?と言われることを承知の上で、あえて言う。いちばんと言う言葉は感情的なものだ、という分析に私はいちばん賛成したい。ホント、理性なんて要らないのだ、あの時代に。 私は10歳で、時は昭和40年代で、場所は世田谷で。近所にはあちこちにまだ原っぱがあって。(原っぱには昔畑だった名残りの肥溜めというものもあって、ウンの

          人生が100秒だったら: 27秒目