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これ、思い出と呼んでいいですか?

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ちょっと心が豊かになれるエッセイ。日常のことをメインに書きます。
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記事一覧

リップクリームに思いを馳せて

リップクリームに思いを馳せて

 ここに1本のリップクリームがある。正確には『メンソレータム薬用リップスティック』。ロート製薬株式会社が販売する緑色の本体と白キャップの、日本でもっとも王道なリップクリームだ。

 内容量は4g、1円玉が4枚分。リップクリームの値段が80円くらいのはずだから、およそ20分の1にボリュームダウンしたことになる。ただ1円玉では僕の唇に潤いをもたらさないので、その分の付加価値はあるだろう。もっとも1円玉

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命の証

命の証

ふと、思っちゃっただよね、なんで生きてるんだろうって。

なにもできない、誰にもあげられない。
社会に捧げるものもなく、ただ息をしている。

もしかして自分は、間違いさがしの間違いなんじゃないかって思った。
僕のいない世界では、僕のいる世界よりも幸せで、楽しそう。

ううん、うそついた。そんなことはない。現実はもっと残酷だ。
僕がいないところで、世界は何も変わらない。
ひとりの人間なんて、水蒸気み

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継続は力なり。ただし継続する力はなし。

継続は力なり。ただし継続する力はなし。

どれほどの大作であっても、書き出しほど難しい瞬間はないでしょう。かくいう私も、何かエッセイでも書いて心を豊かにしようと思いついたのはいいのですが、書いては消し、また書いては消し、ほとんど筆を走らせることなく挫けそうになりました。

私は情けないくらい持続力のない人間でして、やり切った!という経験に乏しい。飽き性なのです。少年期に6年間やってた野球も、義務感と惰性で続けていたようなものですし、学校

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はじめての1人旅

はじめての1人旅

 知らない町、はじめての1人旅、僕は寂しくなった。

 名古屋には深夜についた。宿の予約はしてない。適当にネットカフェにでも泊まればいいって思ってた。ただ長居すると高くつくので、ギリギリまで夜の名古屋を堪能するつもりでいた。

 1月下旬、やや寒いなか、僕は名古屋城まで歩いた。正確には近くの公園まで。ところが暗中が恐ろしく、闇に飲み込まれそうな気分になった……ってカッコよく言ってみるけど、ただ怖か

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明日はきっといい日になる

明日はきっといい日になる

 高橋優の『明日はきっといい日になる』にあるこんな一節。

勇気振り絞って 席を譲ってみた
「大丈夫です」と 怪訝そうに断られたそのあと
決まり悪そうに 一人分空いたまんまのシート

 電車かバスか、席をゆずろうとしたけど断られたというシーン。このあいだ、まさにこんな場面を見かけてしまった。

 お昼前、ちらほら立ち乗車が目立つ混み具合だった。僕はドア横に寄りかかって本を読んでいた。そのちょう

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頑張る必要ってある?

頑張る必要ってある?

どんな人だって、できることなら頑張りたくないだろう。というか、そもそも頑張る必要なんてないのに嫌々頑張っているのだ。

頑張るっていうのは、「やりたくもないことを仕方なく努力する」のようなニュアンスがある。でもやりたくないなら、やらなくてはいいのでは?

どうしてみんな頑張るのだろうか?期待に応えたいからなんてナンセンスだ。なぜ他人のために生きて、しかも努力する必要がある。自分の人生なんだから、割

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狂った組織から学んだ4つの成功法則

狂った組織から学んだ4つの成功法則

《狂った組織は狂った人間から始まる》僕が所属していた団体には、狂った先輩がいた。一見すると、よく喋るうるさい先輩。だがその本性は、人を精神的に追い込み、自殺寸前にまで至らせるサイコパスだった。

厄介なのが、その対象は極一部に限られていたこと。そのため知らない人には、僕らの叫びは聞こえなかった。

半年だ。半年、僕らは耐えた。しかし友達の「気がついたら死のうとしていた」というセリフを聞き、もう我慢

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子ども嫌いの僕が、なぜ子ども好きに変わったのか?

子ども嫌いの僕が、なぜ子ども好きに変わったのか?

子どもなんて嫌いだった。うるさいし、うざいし、何をしていのかわからない。せめて言葉が通じればと思うが、やつらは同じ人間と思えないほどコミュニケーションがとれない。もともとの僕は、そんな風に考えていた。

そもそも僕は末っ子だ。周りには歳上しかいない(歳上も苦手なのだが)。親戚の集いでも僕は最年少。たまに下の子が来ても、彼らの対応は兄に任せて、自分は部屋の奥で引きこもっていた。そんな具合だから、

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"めぐみ ゆう"を知って欲しい

"めぐみ ゆう"を知って欲しい

冬は朝になっても暗い。起床してすぐ、パソコンのLEDを頼りに、覚束ない手付きでキーボードを叩く。これが僕の最近の日課だ。

別に高尚な心がけってわけでもないが、朝の活動は妙にはかどる。もしかしたら寝起きで「きつい、つらい、しんどい」と思う余裕すらないのかもしれない。とかく僕はこの時間でnoteを書いている。

僕は昨日までの3日で、計8つの記事を投稿した。これはなかなかのペースだろう。特段、気

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ゲリラ豪雨と夕立

ゲリラ豪雨と夕立

「ゲリラ豪雨」って言葉、ありますよね。気象学的に厳密ではないかもしれませんが、突然の大雨にこの言葉を用います。

 似た言葉に「夕立」があります。これは日本古来からある表現です。この「夕立」が最近、「ゲリラ豪雨」に変わられ、消えつつあるそうです。

 実際調べてみると、その傾向があるみたいで。本来両者は異なる現象なのですが、突然の大雨という点で同一のため、多くは「ゲリラ豪雨」の方を使います。

 

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学祭マジック

学祭マジック

学祭マジックというと、学祭期間を経て恋人関係になることを意味する。「学祭魔法コイビトデキール」というわけだ。しかし僕の辞書にある学祭マジックは、まさしく「学祭でマジック」という意味である。

高校のクラス担任がマジシャンだった。けっこう実力があるらしく、たまに披露してもらったりしていた。だからかその先生のクラスでは、恒例的に学祭でマジックをすることのなっていた。例に違わず、僕らもマジックをすること

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笑かすより笑い合う

笑かすより笑い合う

僕は友だちができない。性格が悪いとかどういうんじゃなくて、どうにも人と打ち解けるのが苦手なのである。

小学生のときは良かった。相手の顔色を窺うアンテナが備わってなかったから、好き放題していた。

そもそも僕は芸人になりたかった。テレビの芸人さんはお客さんを楽しませ、笑顔にしていてカッコよく見えた。僕もそうなりたくて、学校では“笑かし担当”をしていた。おそらくクラスに1人はいたと思うけど、僕がそれ

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恋は叶わないから美しい

恋は叶わないから美しい

誰にでも切ない恋の経験くらいあるだろう。

中学生の彼女は造形のように可愛い子だった。僕好みのショートヘアに透き通る白い肌、八重歯がのぞくはにかみ笑い。初めて彼女を見た瞬間、稲妻が走るような恋を知ったのだった。

彼女は学年のアイドルで、有名人。見た目の麗しさもさることながら、成績優秀、部活のレギュラーで人気者。日陰で地味な僕とは対照的な子であった。

会話はなかった。話しかける勇気も、資格

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サイコパスに狙われそうになった話

サイコパスに狙われそうになった話

鬼は怖くありません。豆を投げれば追い払えるし、近づかなければ害はない。本当に怖いのは、人の仮面を被った悪魔です。

悪魔は良い人を装い、己の正体を悟られないよう振舞います。また本人でさえも、心の中に悪魔が隠れているのを知らないこともあります。もしかしたらあなたも、悪魔なのかもしれません。

ところでこれは、私が出会った悪魔の話です。何かされたわけでもないですし、本当に悪魔であったのかさえわかり

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