マガジンのカバー画像

よりぬきしりんさん

89
弊社独自の基準にて自薦 (評定3.5以上)
運営しているクリエイター

2022年12月の記事一覧

川

たいそう前のことだ。

思い立って、ぼくがその河川敷に腰を掛けたとき、ぼくはビールの罐を片手に、このままあなたとこの川に消えてしまいたい、と激しく願っていた。

夜は更けて、昏かったはずが、川はその時まばゆく光っていた。

不意で、思いも寄らない情動であった。
その川も、あなたも、ひょっとしたらぼく自身も、今やぼくから遠くに去ってしまい、その shot は今もしばしばぼくの夢に現れ、そのたびにぼく

もっとみる
ステラを想う

ステラを想う

ベッドの向かいには、偶然『ステラおばさんのクッキー』の紙袋がある。
日がな眠いし日がな頭痛いし、今日も今日とて特に書きたい題材もないので、ここはいっちょ、彼女をやらしい目で眺めながら、つらつらと下らない思索でも思うてみよう。

*

ステラおばさんは、クッキーを焼きすぎてあのような見た目なのだろうか。それとも、あの容姿が彼女をして、狂ったようにクッキーを焼かせたのだろうか。
クッキーが話題になるお

もっとみる
『それ』を何と呼ぶか

『それ』を何と呼ぶか

*注:一部の人にはトラウマを抉る記事かもしれません。ダメだと思ったら、お読みにならないで下さい。

今日は特に体調悪いから、本気で書きますね。

*

中学一年生から高校一年生の半ばにかけて、三年あまり、私は寮生活のなかで、断続的な虐めを受けた。
虐めから逃れるほんのつかの間、それは、次の虐めの対象にならないための、文字通りのサバイバルであった。

あれはいったい、何だったのであろうか。呆然とする

もっとみる
試合は最後まで、そして――Entangled Towatd the End, And Afterwards

試合は最後まで、そして――Entangled Towatd the End, And Afterwards

【注: 長文です。4000字以上です。何か妙に面白いとは思いますが、長文でごめんなさい。】

AbemaTV のおかげで、サッカーとはかくも面白い競技だったのか、と、私しりんは目下ハマっております。
蹴り合う対手がいてこそのサッカーですが、極力対手に蹴らせたくないのもまたサッカーなのですね。

それに比例して、私しりんは、書くという競技がこんなに奥深く、趣味に溢れたものだと、今更ながら感動していま

もっとみる
詩/ How To Sing

詩/ How To Sing

喉かききつて飛ぶぼくの血が
空を振るわすソプラノでせう
息絶えだえに鳴る喉笛が
大地を揺するテノールかしら
はたらき果てた鼓動のつひは
ぼくを弔ふバリトンでした

そのやうに歌ひませんか
そのやうに歌ひませうよ
ねえ

優しい彼女

優しい彼女

セブン=イレブンの深夜シフトのそのひとに、元から興味がなかったと言えば嘘だ。

週に2日か3日、22時から入っているひと。やや控えめな茶髪のボブ。痩せて小柄な彼女は、いつもにこやかだ。
多忙な棚卸しの最中でも、きっと振り向いて微笑んでくれる。セルフレジに変わった後も、レシートを手渡ししてくれる。
ちょっとだけ動きはスローだが、深夜なのでこちらも急いではなく、そのちょっとしたぎこちなさに、私はかえっ

もっとみる
ひとつの切りくち

ひとつの切りくち

バスタブがある。
栓を抜いて、水を止める。
溜まっていた水は音を立てて落ちる。水位が下がり、やがて空っぽになる。

人との繋がりは、このような形で失われてゆく。

*

問題は、事実ではない。事実と自意識の乖離、その差である。

かつて繋がっていた人が、周りから減ってゆく。これは事実だ。

できるなら、「なるほど、人が減ったのだな」と泰然自若それを受け入れ、人格の要素のなかに取り込みたいわけだ。

もっとみる
わかれみち

わかれみち

リアリティあふれる夢を見た。

まるでこっち側が現実、みたいな言い方だけど。あっち側が現実なんじゃないかと、この時間(朝の10時過ぎだ)になっても訝しく、いちいちわざとらしくキーボードの手触りを確認しながら書いている。

起き抜けにコーヒー2杯とアリナミンVを飲んで、それでも目が覚めきれない。
こっち側に覚めているが、しばらくすればあっち側に覚めるんだろう。コーヒーもアリナミンも、こんどはあっち側

もっとみる
耳塞いで音楽を

耳塞いで音楽を

音の連なり(とチープな言葉)に過ぎないモノ、ぼくは最後の最後に、そこに逃げ込む、泣き込む。

誰もぼくを value してくれないわけではない。それは分かるの。周りは昨日と何も変わっていない。変わったのはぼく。原因はないのに。少しだけ仕事が辛くなった、少しだけ自分のポンコツに嫌気がさした、その程度。よくあること。

朝から溜めた食器を洗いながら、プラスティックのコップから手が滑り、床に落ちた。はだ

もっとみる
さあ、プレスを掻い潜って

さあ、プレスを掻い潜って

先日、ある若い癌患者の不平を扱うニュースを読んだ。彼がサバイブしたとたん、彼の動画チャンネルの視聴者数が急減したそうだ。
これを読んで、短時間にわたしの両チームを巡った複数の印象を、つらつら書き起こしてみたい。
なお、これは彼の事情や言動に関する文章ではない、それは単なる思考の引き金だ。
どれも、わたしの内心のあったかくていい気な俗情(以下 チームA)に対して、チームBが《プレスをかける》物言いに

もっとみる
Is That a Nightmare?

Is That a Nightmare?

地域や性別や引きの善し悪しにもよるだろうが、ぼくら(コギャル世代)の時代、なべて暴力的であった。
いや、『的』など生ぬるいぜ。暴力そのものであった。

多くの親は怒鳴り、頭を叩き、かなりの圧で駄目出しをしていた。教師は教師で、ひどい贔屓が当然で、それにそぐわなければ怒鳴られ、ビンタされ、ケツを蹴られ、人格否定の暴言を受けていた(ガキながら、これが日教組すなわち共産党の本性だと日々唾棄する思いだった

もっとみる
フラペチーノ、マシマシ、ホット、ストレート、ゼロカロリーで

フラペチーノ、マシマシ、ホット、ストレート、ゼロカロリーで

欲望とは本来アモルファス(不定形)で底なしなので、ひらがなカタカナの読み書きと足し算をマスターしてもなお、人はプリキュアと建築士とパン屋さんとピアニストになり余裕があれば病院の先生になって父を治したいという情熱を、矛盾なく抱くことができる。Brilliant!

欲望を『ひとつの目標っ!』や『めざせ志望校っ!』という年季の入った型にはめるていのやり方は、人の成長や成熟の過程とは本来無関係だ。
むし

もっとみる
存在証明

存在証明

冬の風われに魔物が棲む日あり

風情も余韻もありません。読んでそのままです。この魔物が時に私を食い殺すきっかけは明白で、それは
絶対孤独(のようなもの)
です。
なんと呼べばいいか、
あなたはあの悪夢のおぞましさに、何と名前をつけますか?

高校のときからなにかとお世話になっている
Green Day

この詩を解したときの、一種抉られた心境は忘れられない。
この頃の私は、もろもろありながら、

もっとみる
めがさめて

めがさめて

めがさめて
ゆきのあかりで
めはさめて
まどをあければ
しろいまち
のどのかわきに
みづをのみ
はらもすいたが
けんしんの
あさなりたれば
ものくはず
けんしんなれば
ものくへず
きさんじせんと
そとにいで
くるまにつんだ
ゆきをかき
かたにつもつた
ゆきはらひ
しろいつしきの
まちをながめ
いまおとづれる
ふゆをおもひ
まうすぎさりし
ふゆもおもひ
「ばりうむ」をおもひ
にがわらひ
おもふあ

もっとみる