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耳塞いで音楽を

音の連なり(とチープな言葉)に過ぎないモノ、ぼくは最後の最後に、そこに逃げ込む、泣き込む。

誰もぼくを value してくれないわけではない。それは分かるの。周りは昨日と何も変わっていない。変わったのはぼく。原因はないのに。少しだけ仕事が辛くなった、少しだけ自分のポンコツに嫌気がさした、その程度。よくあること。

朝から溜めた食器を洗いながら、プラスティックのコップから手が滑り、床に落ちた。はだしの足に洗剤の泡がついた。それが引き金で、ぼくはもうダメ。電気という電気を消して、布団を百枚も被って、あーーーと叫びながら酸欠になって抜け殻になりたい、豆粒になりたい。

急いでヘッドフォンをつけるのよ。履歴から疾風のごとく、いまのぼくを掬いあげる網を探すのよ。だめだと思っても聴いてみるのよ。だめなら履歴に戻るのよ。ぼくを静かに泣かせてくれる曲を見つけるのよ。ほら早く、そうやってぼくというものを忘れ果てて寝てしまうのよ。ずっと寝ててもいい、それだけのことだからね。



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