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記事一覧
【読書】第一次大戦中のカナダの雰囲気~『アンの娘リラ』(モンゴメリ作、松本侑子訳)(その①)~
私は「赤毛のアン」シリーズは、第1巻の『赤毛のアン』を前田三恵子訳で読んだのみで、その後の展開については、ほぼ知りません(ギルバートと結婚したことは知っていますが)。
なのに仕事の都合で、『アンの娘リラ』を読むことになりました。本来、その間の6冊も読むべきなのでしょうが、そんな時間はないので、間を飛ばして読むことにしました。
で、誰の訳で読むべきか考えたのですが、今更村岡花子訳でもないだろうと
【読書】現代のハンニバルたちに読ませたい~『ハンニバルの象つかい』(ハンス・バウマン作、大塚勇三訳)~
同じ大塚勇三訳の『大力のワーニャ』を図書館で見た際に近くにあったため、読んでみました。
象を率いての有名なアルプス越えを果たした、第2次ポエニ戦争を扱っているのですが、読んでいてだんだん重苦しい気分になってきます。どんどん読みすすめることができず、児童書とは思えないほど日数をかけて読む羽目になってしまいました。
これが本当かは分かりませんが、そういうこともありえそうです。
象の数が減っている
【読書】「知らなかった」では許されない~『ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義』(岡真理)~
同僚に紹介されて読んだ本です。
↑kindle版
2023年10月20日の京都大学での講演と、10月23日の早稲田大学での講演を収録したもので、当然ながら内容に重複があります。でも2度語られるからこそ、事態の深刻さが心に染みてきます。
「はじめに」にあった、現在のガザについての報道は「出来事を報道しながら、その報道によってむしろ真実を歪曲、隠蔽するという、エドワード・サイードが『カヴァリング
【読書】新旧の訳を比較してみた~『小さいおばけ』(オトフリート・プロイスラー作、フランツ・ヨーゼフ・トリップ絵、はたさわゆうこ訳)~
大塚勇三の旧訳と比較するため、はたさわゆうこの新訳を読んでみました。
内容は当然のことながら同じなので、違いだけ検討してみます。
・原書の絵がすべて収録されている
これはもちろん素晴らしいです。わずかにある初めて見る絵に、ちょっと感動。ただ、旧訳では絵の中のドイツ語はそのままだったのに、新訳では日本語になっているのは、どうでしょう。子どもには分かりやすいかもしれませんが、デザイン的にちょっと気
【読書】絶版にすべきだったのかどうか~『小さいおばけ』(オトフリート=プロイスラー作、大塚勇三訳)~
昨年、初めてブックサンタになってみた時、選んだのはプロイスラーの『小さい魔女』でした
でも実は、同じプロイスラーの『小さいおばけ』にすることも考えていました。真っ白だったおばけが、不幸な間違いから昼間に目覚めてしまい、真っ黒になってしまった挙句、大騒動を引き起こす話です。
↑古本です。
しかし私がなじんできた大塚勇三訳はもう絶版で、新訳しか売っていないと知り、見送った次第です。新訳は読んだこ
【映画】ブルーノ・ガンツを偲んで~『ベルリン・天使の詩』(ヴィム・ヴェンダース監督)~
*この記事は、2019年2月17日のブログ記事を再構成したものです。
一昨日、スイスの俳優ブルーノ・ガンツが亡くなりました。恐らく私にとって、これまで観た映画の最高傑作は「ベルリン・天使の詩」なのですが、主役の天使を演じたのがブルーノ・ガンツです。
といっても、実は私、ブルーノ・ガンツという名を知りませんでした。「『ベルリン・天使の詩』で、おっさんの天使を演じた人」という認識だったので(^_^
【読書】映画のノベライズとしては、良くできている~『時の翼にのって ファラウェイ・ソークロース!』(田村源二)~
*この記事は2019年2月のブログ記事を、再構成したものです。
私は映画「ベルリン・天使の詩」が好きです。
だから続編である「時の翼にのって ファラウェイ・ソークロース!」も、一度はぜひ観てみたいと思っています。
しかしアマゾンプライムでは観ることができないし、DVDを買おうとすると、何と現在7,000円以上もします(2024年2月21日現在)。
よって、せめてノベライズ版を読もうと思った
【読書】人より違う栄養をとってるはず~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.470 2024.1.1)~
「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第73弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。
今号のスペシャル企画は「トーベ・ヤンソン」です。
中学生の頃、ムーミンの原作を読み、アニメの可愛らしいイメージとは違う、ちょっと怖い世界に驚きました。特に彗星が落ちてくる話は、衝撃的。でもあの世界こそが、本当のムーミントロールの世界なんですよね。
他
【大学入試】令和6年度大学入学共通テスト(世界史B)雑感
先週の土曜日に行われた令和6年度の大学入学共通テストの世界史Bの問題を、ようやく解きました。今年から「東京新聞」に世界史Bの問題・解答が載らなくなったため、わざわざネットで問題を見る必要があったためです。やはり手元にあってすぐ解けるのと、ネットの問題を印刷する必要があるのとでは、モチベーションが違います。
備忘録代わりの雑感なので、あまりお役には立たないかもしれませんが、とりあえず書いてみます。
【読書】最高のものを享受するために~『ローマ帝国 ココがすごい!永遠の都ローマ AERA Art Collection』(朝日新聞出版編)~
「永遠の都ローマ展」と「テルマエ展」という2つの展覧会のガイドブックを兼ねているとも言える、お得な1冊です。
↑kindle版
*kindle版があるとも知らず、私はローマ展のグッズ売り場でさっさと買ってしまいましたが、負け惜しみではなく、さすがにこれは単行本の方が見やすいのではないかと思います。まぁkindle版を実際に見たわけではないので、断言は出来ませんが。
以下、印象に残った部分を、備
【映画】長安の姿が圧巻~『空海―KU-KAI―美しき王妃の謎 インターナショナル版(字幕版)』(チェン・カイコー監督)~
ずいぶん前からハードディスクに眠っていた映画を、ようやく観ました。
*私はインターナショナル版(字幕版)で観ましたが、吹き替え版もあります。
あの膨大な量の原作を、2時間ちょっとの映画にまとめた脚本家の努力には、敬意を表します。その代わり、原作の副主人公(実は、事実上の主人公だと思う)である橘逸勢が消えてしまいました。そして、事件に巻き込まれて時間を空費しているように見えて、密教の奥義はしっか
【読書】異端審問のイメージが変わった~『スペインのユダヤ人 世界史リブレット59』(関哲行)~
題名通り、「スペインのユダヤ人」の歴史をまとめた本です。
とはいえ、「スペインのユダヤ人」だけではなく、ユダヤ人自体についても、そしてユダヤ人とは直接関係がない部分でも、非常に学びの多い本でした。私は気になった箇所や、メモを取りたい場所には短冊を挟んでおくのですが、全100ページのこの本に、恐らく20枚くらい挟んだと思います。それくらい、発見満載の本でした。
授業に直接使えるネタは、授業用のノ
【展覧会】東京国立博物館特別展「東福寺」に行ってきた
昨日は雨の中、東博で開催中の特別展「東福寺」に行ってきました。
ちょうど上野公園の桜が満開なので、晴れていたら、お花見と合わせて展覧会に来る人も多かったことでしょう。しかし「雨だから出足が鈍いに違いない」という読みが当たり、予想よりはるかに空いている中、ゆっくり拝見することができました。
以下、印象的だったものを挙げておきます。
〇「僧形坐像」(50)
開山の円爾のものではないかという説もあ