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エッセイ

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実体験や、思ったこと感じたことを徒然と。
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#エッセイ

【朗読版】病室の朗読会

【朗読版】病室の朗読会

☆人数 :1人用
☆声に出すと3分〜4分
約750文字

⚠こちらを朗読される際は、文章の変更はせずにお読みくださいますようお願いします⚠

最低限の明かりだけが灯(とも)る
深夜の病室。

命を確認するための
機械音。

フロアに時折響く
ナースコール。

精一杯の
呼吸音。

もう、言葉を交わすことができないお父さんへ。

今まで恥ずかしくて言えなかったけれど、

わたし、文章を書いていました

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風に溶けてしまいたい【エッセイ】

風に溶けてしまいたい【エッセイ】

約1080文字
声に出すと約4分

知らないことは大好物。
生まれながらに好奇心の塊の私は、なんでも経験したがりだ。

そのせいで、しなくてもいい苦い思いをしたこともあったが、自分に対して「苦労は買ってでもしろ」精神なので、後悔はしていない。

無計画に住む場所が変わっても、急に違う業種の職に就いても、”なんとなく”どうにかなってしまう。
それは何の能力が高いわけでもなく、
用意された箱でやり繰り

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ビートルズで見送って【エッセイ】

ビートルズで見送って【エッセイ】

1640文字
声に出すと約6分

「この曲、わかる?」
和音を探りながら、父は言った。

ピアノを弾くところなんて、それまで見たこともなかった。
私のピアノの練習はおろか、発表会にも来たことのない人だった。
まさかピアノに関心があるとは思いもよらず、小学生の私は戸惑った。

「これが、イントロ。」
たどたどしくも力強い和音が部屋に響く。
ビートルズの「Let it be」という曲だった。

父は

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あなたはいないのに桜は咲くのです【エッセイ】

あなたはいないのに桜は咲くのです【エッセイ】

※人が亡くなった話がお辛い方は見ないことを推奨します※

(約730文字)

「ひと月前は」と思い返しながらの、ひと月だった。

「もう2月も終わりになりますね」
「あっという間に年度末です」

流れてくる月末の挨拶が

とても怖かった。

その日 その日

生きていてくれることを祈って

生きていてくれることが

毎日 奇跡だった。

もう1日

もう1日

終わりを感じながら

もう1日

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【エッセイ風】神様になったんだって

私には
特別な空間だった

毎年来ることもできない遠いその土地には
大好きな人たちがいた

「観光」という概念がなかった幼い時分には

なにやら珍しいものが見られたり

どうやら贅沢らしい物が食べられたりして

大人たちが言う「効能」だとかは
さっぱり分からない温泉で

広々したお風呂を子ども同士
遊びながら堪能した

旅館やパーキングにある
お土産屋さんが大好きだった

ギラギラしていない店内

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【エッセイ風】眠れぬ夜に物語がくれたもの

【エッセイ風】眠れぬ夜に物語がくれたもの

821文字
☆所要時間:5分以内
☆人数 :1人用

「満身創痍」

布団に倒れ込んだ私にピッタリな四字熟語。

重くのしかかるのは、重力だけではないようで。

帰宅した今も、連日の忙しさと緊張が全身にこびり付いて、私の身体は布団の柔らかさに埋もれられずにいた。

言葉にしたくはないが

「疲れた」

と無意識に発していた。

何を食べるかを考えるのも億劫で、このまま寝てしまおうと寝床へ倒れ込んだ

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