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【エッセイ風】眠れぬ夜に物語がくれたもの


821文字
☆所要時間:5分以内
☆人数 :1人用


「満身創痍」

布団に倒れ込んだ私にピッタリな四字熟語。

重くのしかかるのは、重力だけではないようで。

帰宅した今も、連日の忙しさと緊張が全身にこびり付いて、私の身体は布団の柔らかさに埋もれられずにいた。

言葉にしたくはないが

「疲れた」

と無意識に発していた。


何を食べるかを考えるのも億劫で、このまま寝てしまおうと寝床へ倒れ込んだのに。

妙に、目だけが冴えている。


目を閉じてみても、
仕事や日中の映像がチラついて
やたらと眩しい。

頭には、ノイズのように1日の様々な音が響き続ける。

音だけでも防げぬものかと、
イヤホンで耳を塞ぎ
”やさしい音楽”を流し込む。

しかし、脳内の音と音楽は噛み合わず、
かえって不協和音となってしまった。

これは、厄介な夜になりそうだ。


私は、全身に残る雑音・雑念との戦いが
長丁場になるであろうことを悟った。


こんな日は、無理に寝ようとしても眠れない。

そう腹を括って、読書することにした。


目から入ってくる文字たちは、
私の頭を駆け巡り
音と映像を届け
その世界にトリップさせてくれる。


思わぬ展開に、鼓動が速くなる。

身体が、強ばる。

安堵して、ホッとため息をつく。

優しさに、心が温かくなる。

ふと、涙が滲む。

心が、動かされる。


いつの間にか、頭の中はスッキリとしていた。

いくつ作品を読んだだろう。

物語や詩は、私の全身を浄化してくれていたのだろう。

「アレもしなきゃ、コレもやらなきゃ」

付きまとう「mast(マスト)概念」も、
いつしか美しい言葉たちがさらってくれたようだ。


私は穏やかな時間に集中し、
私ではない物語に入り込み
私ではない感情に浸り
どこかで薄ら私と照らし合わせ
そして、私に帰ってくる。


気付けば時は未明となって
次期に夜明けがやってくる時刻。

明日も予定は立て込んでいた。

でも、「忙しなく」は、したくない。

私が触れた物語のように

一時(いっとき)にもきっと、意味があるのだ。

大切な1ページだったと振り返れるような
今日にしよう。


そう、心に誓いを立てて
私は目を閉じた。


End


〜マコのひとりごと〜

疲れていても、
妙に頭や目が冴えて眠れない時がある。

そんな時にすがるのが、音楽や読書。

この芸術や文学が身近にあることを

とてつもなく感謝する瞬間が

眠れぬ夜にはある。




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