【エッセイ風】神様になったんだって

私には
特別な空間だった

毎年来ることもできない遠いその土地には
大好きな人たちがいた

「観光」という概念がなかった幼い時分には

なにやら珍しいものが見られたり

どうやら贅沢らしい物が食べられたりして

大人たちが言う「効能」だとかは
さっぱり分からない温泉で

広々したお風呂を子ども同士
遊びながら堪能した


旅館やパーキングにある
お土産屋さんが大好きだった

ギラギラしていない店内
いつからそこに置いてあるのか
誰が目利きして選んだのか
果たして普段使いできるのか

そんな物を見て回るのも好きだった

そして
必ず買ってもらっていたのが
風景写真のハガキだった

その土地ごとの名所、絶景風景

年が2桁になっていたかも分からない頃から
なぜか必ず
行く土地 行く土地で
おばあちゃんに買ってもらっていた

万華鏡とビードロも
幼い子どもには大切に扱うのが難しかったが
壊してしまっても
何度も買ってくれた


「おばあちゃん」

感情豊かで
優しくて
幾つになっても向上心の塊で

孫と泳ぎたいからと、
スイミングスクールに通い

孫と遊べるからと、
数々のゲームをやり込み

孫が喜ぶからと、
私たちの好物のレシピを覚えて作ってくれた

大好きな気持ちも、ごめんねの気持ちも

抱き締めて伝わることを教えてくれた


「おじいちゃん」

いつも笑顔で
お酒と相撲が大好きで

70を越えてからパソコンを覚えて
私には分からない難しい式をたくさん使って
力士の勝率を入力してた

逆境を、いつだって笑い話に変えてしまえるユーモアとパワーを持っていて

数え切れないほどの死線を越えてきた
伝説いっぱいのおじいちゃん

絶対、そこに居てくれるという安心感

ずっと、笑顔で会えるという安心感


私は、私のおじいちゃんとおばあちゃんは、大丈夫だって、思っていた。

でも、やっぱり、生きているということは

年をとるということは、

いつかは、お別れがやって来てしまうんだ。


そんなの、どこか遠い国の話みたいに思ってしまうけど

頭の片隅では分かっているから、

そのことに気付くたび恐怖しながら

大丈夫、大丈夫と言い聞かせていた。



距離は、残酷だ。

一緒に暮らしていなかった私は

近くに住んでいなかった私は

段々と日常の一つ一つの動作が大変になっていく過程も

その姿を見て悲しさや寂しさを覚える時間も

心を削りながら、どこかで折り合いを付けていくことも、できないまま

急激に

ぽっかりと

大切な人と記憶を
思い出に変えなくてはならないのだから。


今まで、日常をなんでもないふりをして全うしようとしていたから

もう

大好きな人たちが

いないということを

本当には受け入れられていなくて

だから泣けなくて。


泣いてしまっては

まだ

心を立て直す勇気が持てなくて。



でも

ちゃんと

ありがとう

お疲れ様でした

さようなら

って、やっとやっと

心の土台の所で

本当に言えたから。


これからしばらくは

涙に暮れることも

見逃してください。


私は

おじいちゃんの良い所
おばあちゃんの良い所

受け継いでいけるかな


似ている所を見つける度に

私は嬉しくて

誇らしい気持ちになる。


ありがとう

ありがとう

これからも

どうか見守っていてください。


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〜マコのひとりごと(プライベート版)〜
人が亡くなった話を読みたくない方は回れ右を推奨します。


祖父母の納骨が、無事に終わりました。
祖母は、コロナ禍最初の緊急事態宣言の頃に亡くなり、約3年、自宅で祖父を待ち、今日、二人揃ってお墓に入りました。

祖父母は神式なため、私たちを見守ってくれる神様になったのだそうです。

葬儀もお祭りと呼ばれます。
神様になったお祝いで、神主さんたちは太鼓と笛の軽快な曲を演奏します。

葬儀の最後には、集合写真を撮ります。

みんな、ぐしゃぐしゃな顔で写ります。


私には、皮膚疾患があります。

デコルテ部分によくそれは現れ、なかなかに見映えが悪く、なかなかにキツイ言葉を浴びたこともありました。

もちろん、その見た目が好きではありません。

でも、その皮膚疾患は、おばあちゃんと同じものでした。

さらに言えば、父とも同じものでした。


私は、2人のことが好きです。

わりと、恥ずかしいくらいに、だいぶ好きです。

だから、好きな2人とお揃いなら、まあいいか、と思えるのです。

もっとも、治しようもない病気ではないということもあるのでしょうが。


本当は、今日、どなたかの美しい文章を読みたい!と、色々なライターさまの作品を黙読しました。

でも、自分の想いを、自分の言葉で残すことも、大切なのではとふと思い、大変徒然とではありますが、ここに記しておこうと思います。

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