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エッセイ

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実体験や、思ったこと感じたことを徒然と。
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#創作大賞2024

【朗読版】病室の朗読会

【朗読版】病室の朗読会

☆人数 :1人用
☆声に出すと3分〜4分
約750文字

⚠こちらを朗読される際は、文章の変更はせずにお読みくださいますようお願いします⚠

最低限の明かりだけが灯(とも)る
深夜の病室。

命を確認するための
機械音。

フロアに時折響く
ナースコール。

精一杯の
呼吸音。

もう、言葉を交わすことができないお父さんへ。

今まで恥ずかしくて言えなかったけれど、

わたし、文章を書いていました

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風に溶けてしまいたい【エッセイ】

風に溶けてしまいたい【エッセイ】

約1080文字
声に出すと約4分

知らないことは大好物。
生まれながらに好奇心の塊の私は、なんでも経験したがりだ。

そのせいで、しなくてもいい苦い思いをしたこともあったが、自分に対して「苦労は買ってでもしろ」精神なので、後悔はしていない。

無計画に住む場所が変わっても、急に違う業種の職に就いても、”なんとなく”どうにかなってしまう。
それは何の能力が高いわけでもなく、
用意された箱でやり繰り

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ビートルズで見送って【エッセイ】

ビートルズで見送って【エッセイ】

1640文字
声に出すと約6分

「この曲、わかる?」
和音を探りながら、父は言った。

ピアノを弾くところなんて、それまで見たこともなかった。
私のピアノの練習はおろか、発表会にも来たことのない人だった。
まさかピアノに関心があるとは思いもよらず、小学生の私は戸惑った。

「これが、イントロ。」
たどたどしくも力強い和音が部屋に響く。
ビートルズの「Let it be」という曲だった。

父は

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あなたはいないのに桜は咲くのです【エッセイ】

あなたはいないのに桜は咲くのです【エッセイ】

※人が亡くなった話がお辛い方は見ないことを推奨します※

(約730文字)

「ひと月前は」と思い返しながらの、ひと月だった。

「もう2月も終わりになりますね」
「あっという間に年度末です」

流れてくる月末の挨拶が

とても怖かった。

その日 その日

生きていてくれることを祈って

生きていてくれることが

毎日 奇跡だった。

もう1日

もう1日

終わりを感じながら

もう1日

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病室の朗読会

※家族の闘病や人が亡くなる話がお辛い方は見ないことを推奨します※

深夜の病室で、朗読会をしました。
お客さんは、作品内で思いを馳せている相手の「父」ひとり。

その時にはもう、目覚めて言葉を交わすことはできない状態でしたが、
だからこそ 読むことができました。

父の前で朗読などしたことのなかった私。
まして、文章を書いて人様に台本を読んでいただいているなど欠片も知らせていません。

けれど、ま

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 絵本と、絵本好きな人たちが私を支えてくれた8年間 【エッセイ】

絵本と、絵本好きな人たちが私を支えてくれた8年間 【エッセイ】

1810文字
声に出すと約7分

幼い頃の家の風景を思い出してみると、
「絵本」がいつもテーブルの上にあったように思う。

超が付くほど本好きの母が、幼い私にたくさんの絵本を読んでくれた。
そのお陰なのか、私にとって本というものはとても身近な存在だった。
年齢とともに児童書、ライトノベル、小説と読むものは変わっても、本はいつも生活のどこかに必ずあった。

子どもを授かったと分かった時、何より先に

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