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ワーシーマガジン

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#エッセイ

制服タルタル

制服タルタル

とある定食屋。

「なあおやっさん、今に始まったことじゃあねけどよお、どいつもこいつも『あれがなきゃだめだ、これがなきゃだめだ』って騒いでよお、ちったあ足るを知るって頭はねえのかってんだ。なあ?」

「そうですねえ。SNSやら何やらで他人の様子を垣間見ては、勝手に人と自分を比べて落ち込むんだとか。あの人はあんなにキラキラしてるのに自分は…とかって。それよりも、目の前にある幸せに気づきたいもんですね

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令和スタンダード

令和スタンダード

ワシの部下である石橋が、近々こどもが生まれるのだと言って喜んでいた。
ワシは、「妊娠中の奥様も大変だろうし、何かあれば有給休暇を気軽に申請してくれたまえよ」と伝えた。
石橋は、何度も感謝の言葉を言ってくれた。
ワシは、上司として当たり前のことだと考えているので、
「当たり前のことだ!感謝するようなことではない!それにもう令和だぞ!?いつまで古い考え方でいるのだ!」
と石橋の頭を何度も何度も叩いてわ

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化粧品キャンディ

ワシは化粧品メーカー勤務にしがみついていた。
この会社ではムダ毛処理用品なんかも作っていて、ワシはその商品開発チームに携わっていた。

しかし、ワシはチームを外されそうになっていた。
おそらくワシは体毛が濃すぎるので、チームにふさわしくないというのが原因だろう。
あと、ちょっと何回か寝坊してしまったのも少々影響したようだ。
寝坊したときに、
「お詫びに胸毛むしりやります!何本取れると思う?当たった

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敗北空洞

最近は、「無礼王国(ブレイキングダム)」というものが注目を集めているようだ。

ブレイキングダムとは、折り合いのつかない二人組がいた場合、第三者が「そこの二人、試合決定で御座候」と声をあげると、揉めている二人組はリングに上がって対決せねばならず、より無礼な言動で相手を深く傷つけることができた方の勝ちとする法律だ。

ワシの周りでもその影響が顕々著々に現れていた。
ちなみに「顕々著々」という四字熟語

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ジンジャ・フォーマーズ

職場の飲み会で、ワシは漫画の話を切り出した。
「あのね、ジンジャ・フォーマーズっていうゴキブリさんの漫画があってね…」
すると、先輩の笠原がいきなり話を遮ってきた。
「おい、何でゴキブリがゴキブリの漫画読むんだよ!わっははは」
「コラ!何言ってんだ笠原!」
「…えっ、すんません」
上司が笠原を叱ってくれた。
頼もしい上司さんだなぁと思っていると、上司は続けた。
「笠原、むしろゴキブリさんがゴキブリ

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消毒用ジレンマ

人間というのは、疲れてしまう時がある。
そういう時は、細かいところに神経が行かなくなっている。
コップの水をこぼしたり、足をぶつけたり、コンビニで商品を持ったままお会計せずに店を出てしまったりする。

ワシは疲れて、頭がぼーっとしていた。
とりあえず、何か体力回復できる物を買おうと思ってコンビニに寄った。
入口の側に消毒用アルコールがあったので、ぷしゅ、と消毒した。
消毒したはずが、ぼーっとしてい

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今晩の缶ビール

ある夕方、ワシはスーパーマーケッツでお買い物をしていた。

明日は日曜日だから今晩は少し飲もうと思って、ビールやおつまみをカゴに入れた。

小さな幸せというやつだ。

カゴは他にも日用品などでいっぱいになった。

レジにて袋はいるのかと尋ねられたとき、マイバッグを忘れたことに気づいた。

「一枚ください」

「はい、一枚398千円になります」

ちょっと高いなと思ったけど、手で持ちきれる量ではなか

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鬼のたんじろう

大学生の頃、ワシには「鬼のたんじろう」と呼ばれる知り合いがいた。

でも、多分ワシが馬鹿だからだとは思うが、どうして「鬼」だなんて言われているのかわからなかった。

「あの、たんじろう君はどうして鬼だなんて言われているのかな?」

と、友人に尋ねると、

「は?オメーそんなこともわかんねえの?馬鹿だなオメエ。」

やっぱりワシが馬鹿だからわからなかっただけみたいだ。

一方のたんじろうは、聡明で勤

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全身ワイヤレス

ワイヤレスイヤホンを線路に落っことしてしまう人が多いらしい。

ネットニュースでそれを見たワシは、そんな愚か者にはなりたくないと思った。

そんな愚か者になるくらいなら、死んだ方がマシとさえ思った。

ある日、駅のホームであたふたしている人を見た。

どうしたのかと思って見ていると、その人は駅員さんに話しかけた。

どうやらイヤホンを落としてしまったらしい。

線路にイヤホンを落としてしまった場合

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zoom環太平洋

「オイコラ!まだゼムクリップを箱にビッチリと並べる作業終わってねえのか!?」

「はい!すんません!」

ワシは今日もオヒスの一角で叱られていた。

「何べん言ったら終わるんだよ!?」

「はい!すんません!」

「質問の答えになってねぇーだろ!一箱追加だコラ!」

ゼムクリップ整頓の指導係がゼムクリップの箱をドンッと置くと、

ージャラララリん。

途中まで並べていたゼムクリップはまたバラバラに

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同期スカート

ワシは大学1年生、同期たちのカラオケに誘われた。

まだそれぞれがあんまり親密ではない中で、グッと仲を深めるチャンスだわ。

二つ返事でOKしたのだが、ワシ、あまり流行の歌を知らない。

それどころか、一曲まともに歌い切れる歌が一つしかない。

なので、同期には、「全然歌知らないけどいい?笑」とラインをした。

同期は「ノープロブレム!笑」と言ってくれた。

みんなと仲良くなれるのが楽しみだ。

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キクラゲムービング

この都会の街にはゴキブリが多すぎる…。

路地を歩けば道端にゴキブリが見つかる。

たくさんの人がいて、たくさんのゴミがあるからだろう。

ある晩は、上司に晩ご飯に連れて行ってもらった。

路地に入ったところにある中華料理店だった。

感染症対策で解放された入り口付近の席に案内された。

生ビールと適当な料理を頼んで食事をしていると、ふと視界の端にちょこまかと動くゴキブリを見つけた。

入店しよう

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出刃包丁コミカル

魚が旨い店がある。

大将の自宅を兼ねた小さな店だ。

ワシは昼飯時の常連で、いつも日替わりを頼む。

三年間も通っているが、臨時休業なんて一度もない、働き者の大将が営んでいる。

「お、大将、珍しい!今日の日替わりは当たりだねえ!」

そんな風に大将に吹っかけると、

「うるせえやい、いつも大当たりだよ!」

とか返ってきて、そんな掛け合いをいつもやっている。

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嘘泣きガベル

言葉は日々更新されていくものだということを、ワシは知っている。

最近では、悲しい時に「ぴえん」と言うことになっているらしい。

ワシはしっかりと言っていきたいと思いました。

ある日、友人に会うと深刻そうな顔つきをしていた。

ワシは心配して声をかけた。

「どうしたんだい?死に損ないみたいな顔して…」

「…。実は、婚約者がちょっとね…重い病気にかかってしまったんだよ」

「それはぴえんだね…

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