日本の大学の授業料は高い? 安い? 英語圏やヨーロッパと比較して、日本の大学はいい場所なのか?
東大の授業料値上げに関する反発
東京大学で、授業料を2割上げようという動きがある。
物価高と円安の影響で、生活はいろいろと厳しくなっている。ウクライナ侵攻の影響もあり、パレスチナでの紛争の影響もあり、コロナからまだ完全に抜け切れていない影響もある。いろいろな部分で、世界情勢が日本の日常生活にも影響を及ぼしているような時代になった。世界情勢はもはやテレビの向こうの話だけではない。
東大の授業料を上げることで、研究や教育の質を高めて、より良い教育ができるようにしようというのが建前だが、実際は大学の運営はかなり厳しい。
日本政府が教育に使うお金は、世界各国を比較しても少ないといわれている。
東大生のハンスト
その結果、学生がハンガーストライキをして、対話を求めるという事態にまで発展した。
英語圏と比べて授業料が安い、という意見
日本の大学の授業料はそれほど高くない、という意見がある。
年間150万円程度の授業料は、欧米の非英語圏から見るとかなり高いが、英語圏と比較すると安い、という意見がある。
英語圏の場合、外国籍の学生、あるいは州外から通う学生に法外な授業料を課していて、自分の州に住んでいる学生には比較的安いお金で通うことができるという構造になっている。
英語圏の学費: 留学生の学費を上げるメリット
教育上、留学生の比率は多すぎても少なすぎてもいけないという説がある。
留学生が多すぎると、その国の言語(ここでは英語)を話せない留学生に対応するため大学のリソースが使われる、現地の学生が入りにくくなる、あるいは単にいろいろなニーズに対応する必要が出てくる(たとえばムスリムやベジタリアン用の食事、礼拝する場所の確保といったこと)ためにまたリソースが食われるといった意見がある。
そのため、ある程度の学びの質を担保するためには、留学生が来すぎると困るので、学費を上げることで、より裕福でかつ余裕があって教育水準の高い留学生だけを受け入れて、リソースが食われるのを減らそうという意見がある。
留学生の学費を高くするのは、単なる差別では?
ただ、これには反対意見もある。私は反対の立場だ。
なぜなら、留学生だというだけで、ただでさえビザ申請などの煩雑な手続きがあるのに、学費が高くなったらそれは単純にいい気はしない。
上に書いたような理由があるとしても、「留学生ですね。じゃあ5倍の授業料(5倍は適当な数字)を払ってもらいますね」と言われて素直に「はいわかりました」と言える学生はどれだけいるのだろう。
現地の学生はたとえば100万円で授業を受けられるのに、私達留学生は500
万円払わないといけない、というのはどんな言い訳があろうと差別的だと思う。
なお、これを支持するにはもうひとつの理由がある。
学費を下げると、学生の質が悪くなる?
留学生は、高額な授業料を払っているので、真剣な学生が多くなる。
ただでさえ海を越えてちゃんと学ぼうという意識があるから留学するのに、学費が上がったら尚更授業をさぼるなどの、学費の無駄と思えるような行為をしなくなる。
ただ、現地のひとは定額の授業料しか払わないので、自然と質が悪くなって、単なるモラトリアムのために、あるいは単に遊ぶために大学に入るということが多くなる。
だから、私は留学生にも現地のひとにも同じ条件で教育を受けてほしいという願いがある。
ただ、英語を話せるひとは、たとえば日本語などよりは多いので、自然と留学生の比率が偏りがちだというのは正直に言うとある。難しいところだ。
ヨーロッパの非英語圏に留学するという選択肢
外国人であっても、学費が安くて、現地のひとにとっても学費が安い国というのはいくつかある。
その多くは、ヨーロッパの非英語圏だ。
たとえば、フランスの大学に通うためにフランスに留学する、となると、最低限のフランス語が必要になり、それが留学生の質を上げるためのフィルターとなっている。
「学歴が欲しいから」「就活で有利になりたいから」「ネームバリューのある大学に行きたいから」といった理由ではなく、「フランスでないと私のやりたいことは学べないんだ、だから頑張る!」という学生の比率は自然と増えていく。
ヨーロッパの非英語圏の学費が安い理由
ヨーロッパの非英語圏、つまりフランスやイタリアやスペインなどの学費が安い理由は、教育に対して国が予算をたくさん出しているからだ。
良い教育を受ける→国が豊かになる→こどもにも良い教育を受けようと願う親が増える→税金をちゃんと払う→お金が確保できる→国がその税金を教育費に回せる→良い教育を…
といった良いループができている。
ヨーロッパの非英語圏は税金が高い
イタリアの場合、軽減税率等を除くと、消費税(IVA)は22パーセントだ。
イタリアで起業するのは難しく、実際イタリア人あるいは外国人の友人は何人も失敗しているが、それは会社を運営するための税金も高いからだ。
その代わり、医療は無料あるいは低額だったり、教育が無償あるいは低額だったりと、生活は割と最低限のものが保証されている。
日本も税金を上げるか?
税金を上げて、そのぶんを研究費あるいは教育費に回せば、日本の教育はもっと良くなる。
ただ、税金を上げるということは負担を増やすことであり、貧しいひとが増えるというリスクもある。
教育が金持ちの娯楽とされている日本において、なかなか難しいところだ。
イタリア人留学生が日本の大学を気に入った理由
私のお友達で、日本に留学したイタリア人がいる。
彼女は、「日本の学費が高い」という議論について、ひとつ言いたいことがあるといつも言っている。
先ほど述べたように、イタリアは税金が高い。
だから、バイトのひとを雇うのもかなり難しくて、下手したら会社が赤字になる。
また、イタリアには最低賃金がないので、時給3ユーロ程度で働かせるブラック労働もできてしまう。
日本のコンビニに助けられた
日本の場合は、最低賃金でだいたい時給1000円はどんな仕事をしていても貰えるということで、彼女は日本語ができたこともあり、日本のコンビニでバイトをはじめた。
すると、イタリアでは全然貯まらなかった貯金が、瞬く間に増えていって、自分で使えるお金の幅も増えた。
更に、彼女の家計は日本の基準で言うと貧しいものだったので、奨学金を借りることもできた。
そのため、彼女はバイトと奨学金と彼女自身の努力のおかげで、日本の大学を卒業できた。
日本の大学の授業料は決して安くはないが、バイトができる以上、余裕があるという意見
先程書いたのは、要は「日本の大学ってすごく安いわけちゃうけどバイトできるからまあまあ余裕よ」といったものだ。
ただ、これには2つ問題がある。
1つめの問題
ひとつは、給付型奨学金といって、実質ローンでない奨学金が日本ではまだまだ少ないということ。
18歳の若者に借金を背負わせて、たとえば30歳になるまで返済させるとなると、大学院に行ったり海外留学をしたりといった選択肢が生まれにくくなる。
なお、奨学金の合否は大学入学後にしかわからないので、「奨学金がとれなかったから大学を辞めます」といった学生もいるようだ。
2つめの問題: 学費をバイトで賄うことが前提なのは良いことではない
もちろん、生活が貧しいのは悲しいことだし、そういった学生に自己責任論なり感情論なりを押し付けるつもりはない。
学生本人はなにも悪くない。
ただ、学生の学業を続けられるかどうかといったことを、学生本人の自助、つまりバイトを前提として組まれているいろいろなシステムというのは、結局大学の目的である「学ぶこと」から距離を置いているのではないだろうか。
バイトのせいで、学業や楽しいことに時間を使えないで、拘束されてしまう
バイトがあるから、授業をたくさん履修できない。
バイトがあるから、予習復習に時間をとれない。
あるいは、こんなことだってありえる。
バイトがあるから、部活には参加できない。
バイトがあるから、友達と遊べない。
そういったように、学びの可能性を縮めて、時間を拘束させるという側面がバイトにはある。
1000円貰うということは、そのぶん寝たり遊んだり勉強したりするために使えたはずの1時間を失うということだ。
その前提でいろいろなシステムが組まれているのは、学生にとって大きな負担になることだろう。
まとめ
1 給付型奨学金を増やすべき
2 貧しい学生への支援をもっと増やすべき
3 国は教育にもっとお金をかけるべき
これがこの記事での論点であり、私の意見だ。
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