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#282 マイナス金利が奪う金融機関の「品格」と、投げかけられた「問い」

昨日21日の日経新聞朝刊7面と9面の金融機関に関する2つの記事を読んで思ったことを、メモ。

1、どんな記事?

7面は『金融業は「品格」取り戻せ』
9面は『海外融資、高リスクに傾斜ー邦銀巡り日銀レポート』
という記事の 2つです。

概要は以下の通りです。

7面『金融業は「品格」取り戻せ』
☑️ 先月に明らかとなった米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントのデフォルトに絡んで複数の金融機関が数十億ドルの損失を出したことに関連した記事
☑️ アルケゴスを運用するビル・ホワン氏は2012年に米証券取引委員会からインサイダー取引疑惑で提訴され、4,400万ドルを支払って和解していた人物にも関わらず、収益性の高い取引だったために、複数の金融機関が同社と取引していた
☑️ 金融機関は取引相手の破綻リスクを評価し、管理することが本業であるはずで、品格は能力そのものと考えると、今回のような相手と取引することは、特異事例ではなく企業文化か制度に問題があるようにみえてくる
9面『海外融資、高リスクに傾斜ー邦銀巡り日銀レポート』
☑️ 日銀が20日に公表した金融システムリポートに関するもので、国内金融機関の海外投融資に関するリスクを分析に関連した記事
☑️ 同リポートでは、世界的な低金利環境下で高い利回りを求め、一部の銀行では事業向け融資の一部が低格付けの案件に傾注していたり、投資信託や外国債券に積極的に資金を振り向けていたりすることを挙げ、外部環境の急変に損失が膨らむリスクを指摘している
☑️ 低金利環境の長期化で貸出による利鞘が縮小し、海外への投融資を収益の柱に据える銀行は多いが、これら増えるリスクに対する管理の徹底が必要になる


2、成功体験がリスク軽視の暴走につながるケースもある。

一方は、すでに発生してしまった損失の件、もう一方は、潜在的なリスクが膨らみつつある件でした。

共通点として以下2点が挙げられます。
☑️ 低金利環境の長期化で収益が厳しい金融機関であること
☑️ 儲かれば多少のことには目をつぶる、という姿勢が見えること

金融機関に限らず、過去大きな事故を起こしてしまった企業の多くは、最初はちょっとしたリスクをとってそれがうまくいくうちに感覚が麻痺してどんどんリスクが大きくなり、それをリスクとも思わなくなる。そして…というパターンが多くみられました。

思いつく事例を2つご紹介すると、

☑️ そごう
地方都市にデパートを作ることで周辺の地価を引き上げ、それを担保に次の店舗出店に資金を回すことで多店舗展開を進めましたが、スキームは店舗ごとに独立法人化しており、相互に出資し合うというものでした。やがて誰も全体像を把握できなくなった頃、地価の下落が発生。しかし、全体像が見えない中では有効な対策も立てられず破綻しました。
☑️ エンロン
画期的なガス価格を安定化させるスキームを構築、それを電気など他の市場にも応用し短期間に急成長しましたが、別法人などを活用するスキームで同社のバランスシート上ではリスクの所在は何も見えないものでした。やがてこのスキームの前提であった株高の持続が崩れたとき、破綻しか道は残されていませんでした。

このように、最初の成功体験が繰り返すうちリスクが軽視され、ある時前提が崩れると一気に破綻へ、という可能性は過去にいくつもあるのです。


3、まとめ(所感)

いかがでしたでしょうか?

もちろん、金融機関に関してはその公共性から各国では強い規制と監督官庁の監視の下に置かれていますのでいきなり破綻、ということはないでしょう。

一方で、特に日本の地方銀行は、金融庁から従来型の利鞘だけに頼るビジネスモデルからの脱却を強く促されています。
しかし、銀行が新規事業をしようとしても、持てる子会社の業種や出資割合は規制によって厳しく制限されています。
結果、横並びでリスクは高いが利鞘の厚い融資を増やすか、リスクの高い投資を増やすか、ぐらいしか道はありません。
最近では、取引先の商品を流通させる目的で地域商社設立の動きが一部でありますが、収益化までの道のりは遠いのではないでしょうか。

こうしたプレッシャーの中、心配なのは、記事が指摘するように、儲かるからと「品格」を失する取引に手を染めてしまったり、リスクの大きな投資から大きな損失を出してしまうことです。

金融機関だけでなく今は厳しい状況です。
こういう時ほど、「品格」が問われるでしょう。
それは、企業も個人も同じです。

最後に、記事で投げかけられていた「問い」をご紹介して終わりたいと思います。

なぜ自分たちが事業を手がけているのか
何を大切にしているのか


最後までお読みいただきありがとうございました。

記事のご紹介でしたがどこかお役に立つところがあれば嬉しいです。

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