マガジンのカバー画像

作品

52
運営しているクリエイター

記事一覧

全ての世界で銃の所持が認められれば人類は平和に暮らせるようになるのではないかと思ったがダメだこれ

 銃の所持が合法となり国内での自殺者数が格段に増加したのは政府の陰謀だの隣国の侵略などと囁かれていたが何の事はなく単に「ガンカッコいいよね!」という意見が国会を席巻し与野党満場一致で銃保有の合法化が可決しただけであった。

 しかしいずれにしろ銃による自殺者が日に絶える事なく続出したのは事実であり、この事象はショックガン問題などという悪ふざけ極まりない名称で呼ばれ社会現象となる。

 世知辛い時代

もっとみる
昼食を食べようと外に出てみたらどこも見事に満席であえなくコンビニで済ますという虚無を味わった人は多い事だろう。

昼食を食べようと外に出てみたらどこも見事に満席であえなくコンビニで済ますという虚無を味わった人は多い事だろう。

 三丁目昼食戦争は激戦の様相を呈していた。

 事は一年前。バッファロー亭とカウカウ軒の骨肉の争いに端を発する。
 両店はいずれも中華飯店であったが、バッファロー亭は炒飯、天津飯、中華丼などの米系商品が、カウカウ軒は餃子、焼売、小籠包などの天津商品が売りであり、それぞれ住み分けができていた。

 ところがある日、バッファロー亭が急に天津系商品を推すようになる。何があったと食してみれば仰天。カウカウ

もっとみる
極論を事をいえば人間衣食住が満たされればそれで十分という気もしなくはないが俺には無理だ

極論を事をいえば人間衣食住が満たされればそれで十分という気もしなくはないが俺には無理だ

 息子を殴ったのは後にも先にもこの時だけだった。

「百姓なんてみっともない事やっていられないよ」

 その言葉を聞いた瞬間に思わず手が出た。叩いた掌が燃えるように熱かった事を覚えている。小さい頃は一つの怪我もしないよう大切に育てた我が子を自ら傷つけるという行為に私は震えたが、それでも、そうしなくてはならなかったと今でも思う。

「食べるもん育てんのが何でみっともないんじゃ!」

 息子が少しでも

もっとみる
主観でしか述べられていない為気が付きにくいが主人公もそれほど仕事ができるわけではないしタスクを処理できていない以上彼らと同じ穴の狢なのである

主観でしか述べられていない為気が付きにくいが主人公もそれほど仕事ができるわけではないしタスクを処理できていない以上彼らと同じ穴の狢なのである

 朝起きて思案を巡らすのは仕事についてである。
 少しばかり神経質なきらいがあるが別段生真面目な質というわけでもないのにどうして労働などについて頭を悩まさなければならないのかというと職場の人間が甚だ度し難いからである。奴らの想像を絶する破天荒業務に俺はいつも閉口しなければならず、それが今日も始まるとかと思うと、目が覚めた途端に嫌でも想像し苦悩してしまう。あぁ嫌だ嫌だと唾棄を催しながらボロのスーツに

もっとみる
黙って泣かれると此方としても対処の仕様がなくさりとて黙っているのもまた居心地が悪く詰まるところ八方塞がりなわけである

黙って泣かれると此方としても対処の仕様がなくさりとて黙っているのもまた居心地が悪く詰まるところ八方塞がりなわけである

 こんな日がいつかくるとは思っていましたけれど、それが今日だなんてどうして予想ができましょうか。

 明美は一言、「ごめんなさい」と言ってからシクシクと泣き始めました。彼女と過ごすようになってからよく目にするようになった光景ですが、これほど印象深く胸に刻まれたのは初めてかもしれません。いや、むしろ、今日初めて、彼女を真剣に見たのだと思います。いずれにせよ、私は明美をずっと悲しませていた事に変わりな

もっとみる
世界は自由だし誰にも俺を止める権利はないし酸いも甘いも楽しんだもの勝ちだし人生ってまったく素晴らしいものだなって思う今日この頃

世界は自由だし誰にも俺を止める権利はないし酸いも甘いも楽しんだもの勝ちだし人生ってまったく素晴らしいものだなって思う今日この頃

 特殊能力を手に入れた俺は無敵なため好き放題生きる事を決めたのだった。

 家を出てライドオンバイシクル。モードフルモンティ。裸・裸・裸ンドと口ずさみ公道を疾走。風を纏う完全体に観衆の歓声が響くと、素晴らしい高揚が訪れ最終兵器がグッモーニン。春の日の一コマに差し込まれるイレギュラーは俺からのサプライズである。是非とも喜んでいただきたい。

 商店街に到着。ますます高まるボルテージ。黄色い声が伝播拡

もっとみる

人間働かなくては生きていけないがそもそもそこまでして生きる価値がこの世界にあるのかという抜本的疑問に今日もまた打ちのめされるのである。

 日本の平均残業時間は四十七時間だそうだ。
 別ソースだと二十四時間だったり十時間だったりするから正直あてにならん数字だが、ともかく五十時間近い時間外労働をしている人間が数多くいるというのは間違いない。現に俺の上司は朝から朝まで働いている。昭和の世界だ。南無。

 そうまでして働く必要はないのではと思う一方、働かなければ金は入らないし、誰もが望む仕事に就けるわけでもないとシビアな現実に直面している

もっとみる
Twitterで見かける暴言が如き極端な主張のぶつかり合いは不毛に思えるが声を上げられない社会もそれはそれで不健全ではなかろうか。

Twitterで見かける暴言が如き極端な主張のぶつかり合いは不毛に思えるが声を上げられない社会もそれはそれで不健全ではなかろうか。

 物事の善し悪しというのは大変難しく、俺の頭では判別つかないのであった。

 Twitterを見れば目につく政府に対する是々非々。右左問わず交錯する主張。一方が正義の大義名分を掲げれば一方はそれを悪だと決め付け論争が巻き起こる。事態は収束の気配を見せる事なく、満たされず、渇きながら争い続ける餓鬼の修羅場を眺めている気分となり哀れに思う。

 政ばかりではない。有名人が不貞を働いたとか失言を吐いたと

もっとみる
熊を殺せるくらい強い女って最高で最強だと思うんだけど汝等はどう思う?

熊を殺せるくらい強い女って最高で最強だと思うんだけど汝等はどう思う?

 一目惚れだった。

「なぁ。なんで私を選んだんだ? パネル見たろ」

 そう遠慮がちに聞くのは風俗店で指名した魔奴華である。

「決まってるだろ。お前が好みだからだ」

 俺がそう言うと、魔奴華は乾いた笑いを響かせて卑屈な言葉を吐いた。

「馬鹿言うなよ。私なんざ生き試しにしか使えないような女だよ。筋肉ばかり鍛えていたせいで金の稼ぎ方も知らない。売女になったはいいものの、客も寄り付きやしないんだ

もっとみる

職業に貴賎はないというが明確に差別偏見が溢れる昨今においてはまったく無意味な言葉になりつつある

 声優になりたいと出ていった娘がAV女優になっていた。

 今はセクシー女優と呼ぶらしいが呼び方などどうでもいい。問題は可愛い可愛い愛娘が不特定多数の男優に辱められるばかりかその様子を見て日夜自家発電に励む者達がいる事だ。それを思うと堪えられん。おのれ野郎ども! 皆殺しにしてくれる!

 なでと言っても仕方がない。ひとまず娘に今の仕事を辞めるよう電話で説得しなければならないだろう。それが親としての

もっとみる

一人の食事というのは気楽な反面時に虚無感と辛苦を生むがそれでも堪えねばならぬのが人生である。

 牛皿とワンカップが今日の晩酌である。
 一味を山ほどかけた牛皿をワンカップで流し込む喜びといったらない。独り身ならではの悦楽。脳が馬鹿になるようなこの作法、所帯持ちに真似できまい。

 しかし所帯か。本当はあった方がいいだろうが、相手がいなければできぬのが結婚。俺には無縁の話だ。

 一人が嫌いなわけではない。しかし、貧乏くさい電球に照らされる安い一人分の食事と酒を見ると、寂しさが込み上げてくる

もっとみる
女もなく粗末な食事と安い酒で雑な夜を過ごす他ないという悲しみ

女もなく粗末な食事と安い酒で雑な夜を過ごす他ないという悲しみ

 酷く疲れたが誰もいない部屋で他者の労りなどあるはずもなく金がないから残業であっても自炊しなければならない。

 やる気がない。身体が重い。これはまずい。
 もういいや開けちゃおうと買ってきた安ウィスキーをタンブラーに注ぐ。喉から胃にかけて熱が入り活が湧き上がる。あぁ身体に悪い。しかし飲まねばやってられん。

 フライパンをコンロに置き具材を投入。レシピはない。適当に炒めた肉と野菜はもはや餌。フラ

もっとみる
料理自体は嫌いじゃないんだけど人に出すときは盛り付けとか皿とか気にしなきゃいけないから本当にめんどくさい

料理自体は嫌いじゃないんだけど人に出すときは盛り付けとか皿とか気にしなきゃいけないから本当にめんどくさい

 料理にレパートリーがないと言われた。

 仰る通りだが仕事終わりに買い出し行って作るとなると大変なのである。そりゃ鍋にレバニラ炒めに冷しゃぶなんかが多用されるよ。楽なんだもん。

 とはいえオーダーがあったからには聞かねばならぬだろう。適当にレシピを検索。簡単にできそうなもの……

 圧力鍋で超早調理ほら吹き大根!

 圧力鍋がないしそもそもあいつは大根が切らないなので却下。

 おかずいらず!

もっとみる
ともかく戦争はよくないが滅びの直前を夢想しなくもない。しかし都合よく自分だけがその場にいるなどあり得るはずなくもし事が起これば不特定多数の人間と同じように等しく凄惨に殺されているだろう。

ともかく戦争はよくないが滅びの直前を夢想しなくもない。しかし都合よく自分だけがその場にいるなどあり得るはずなくもし事が起これば不特定多数の人間と同じように等しく凄惨に殺されているだろう。

 転がっている死体には顔がなかった。
 首が飛ばされているわけじゃない。目玉を抉られ、耳を削がれ、鼻を潰され、唇を切られたのだ。口には石が詰められ、歯は全て折られている。全て、生きているうちにやられたのだろう。

 その傍らには女と赤子の死体があった。女の腹は掻っ捌かれて自身の頭が入れられていて、子供は杭に突き刺さっている。

 昔、この国の人間は他国の人間を同じような目に遭わせたらしい。なんとか

もっとみる