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『インフェルノ』旅は良いものだ。たとえ「青年時代の特権」はとっくの昔に失効していたとしても。
社会人になる直前の最後のモラトリアムとなる春、生まれて初めて飛行機に乗った。一人だった。
行先はバンコク。そこから北上しながら、約三週間のタイ王国彷徨。
貧弱すぎる英語力にも関わらず、滞在中に語学力不足で困った記憶はほとんどない。身振り手振り、土地名の連呼、それに魔法のタイ語「マイペンライ」があればどうにかなった。
荷物はさして大きくもないリュックサック一つだけ。
二十二歳の放浪青年に対し
『蒸発―ある愛の終わり』お前だよ。「オマエ」って書いとけっ。
福岡。
常々、いつか住んでみたいと思う街。毎秋、東京から訪れていた時期もあった。
そんな福岡を舞台にした作品を所望し、『蒸発―ある愛の終わり』(夏樹静子、光文社文庫) を読んだ。
※「福岡市赤煉瓦文化館」(東京駅、日本銀行本店等の設計で有名な辰野金吾らの設計により、日本生命保険九州支店として1909年竣工)内の「福岡市文学館」立ち寄った際、福岡を舞台にした作品の一つとして紹介されていた。
ローカ
『エデン』やはりミステリーに支えらえて
スポーツ・フィクション執筆は難易度高 スポーツ・ノンフィクションは私の最も好きな本のジャンルの一つである。
翻ってスポーツ・フィクションとなるとどうか?
そもそもスポーツそのものが十全なエンターテイメントである。そして虚構(フィクション)に頼らずとも、その背景(通常なら、選手の試合前・中・後の心理描写)を描いたスポーツ・ノンフィクションには十二分、否、至極心踊らされる。
したがって、これらに
『55歳からのハローライフ』「漠とした不安」の救済と「明るい未来」の提示
55歳をやや遠くに見つめて私が55歳に至るにはそれなりに年月を要するのだが、数多の人生の諸先輩が通り過ぎて行った55歳とはどういうものか。
その時に見える景色や抱く思い、そして未来の捉え方は、私の今のそれらと異なることは間違いない。
これはASKA氏の傑作ソロアルバム『SCRAMBLE』(2012年10月17日発売)の収録曲『L & R』のサビの歌詞である(Chage & Askaファンにとって
『草枕』超難解エッセイ
なんやかんやと日々悶々としている東京の画工(画家)がいる。画工はそんな日々から脱出するきっかけを得ようと片田舎の温泉街を訪れる。その滞在記が本作『草枕』(夏目漱石、岩波文庫)である。
職業こそ違えど、画工は完全に漱石自身がモデルである。
本作のほとんどは画工の芸術論や人生論の「脳内一人語り」に費やされ、登場人物間の会話は一割程度である。
そして、この一割でストーリーが構成される。
本作全体におけ