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路地裏で揺らぐ -内在性解離の当事者研究-

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精神的虐待サバイバーであり、内在性解離を持って生きる僕たちを記録するエッセイを集めたマガジン。10人のパーツたちがそのときどきで思ったこと、考えたことをまとめている。
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#毒親

和解を「あきらめ」て先へ進むことにした。

和解を「あきらめ」て先へ進むことにした。

「いつか分かり合える」という幻想心象風景は特別な意味を持っていると思う。

子どもの頃から今に至るまで、長い時間もち続けてきたイメージ。概念。
それは精神構造の一部に組み込まれていて、無意識のうちに考え方のクセや願いの土台になっているものではないだろうか。

僕は「和解」の心象風景を持っている。

さまざまな誤解や苦難やトラブルを乗り越えて、家族や友達は物語の最後に和解することができるのだ。

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書けなくなった僕たちが、再び書くためにやったことやめたこと

書けなくなった僕たちが、再び書くためにやったことやめたこと

物語を書くことは、約20年も続けている僕たちの趣味であり仕事だ。
「書く」ことと「生きる」ことはほとんど並列のニュアンスを持っている。

それなのに、いつからだろう。
気づいたら「書く」ことに追われていた。追われていることに気づいた。

書きはじめた頃、もっと純粋な楽しさだけがあったんじゃないか。

今目の前の原稿に追われている、この気持ちは楽しみではなく義務感だ。

書くのと同時進行の文章批判が

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子供は天使なんかじゃない。

子供は天使なんかじゃない。

以前、母が僕たちの幼少期を回想する時、こんな言い方をした。

「まだ(主の本名)がかわいいかわいい天使ちゃんだったころ」

この言葉はきっと、「子どもが純粋でかわいかった頃」のような意味だと思う。
子どもの無邪気さは、成長に伴いある程度失われていくことが多いから。

だが僕は、ここではっきりと書いておく。

僕にそんな時期はなかった。

子どもも人間だ。これまで生きてきた過去世がある。
そして子ど

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生まれた理由が自分への優しさをくれる

生まれた理由が自分への優しさをくれる

どうも。直也です。

ジェニーナ・フィッシャー著『トラウマによる解離からの回復』に、印象的な記述があった。

パーツ(解離人格)たちはなぜ生まれるのかという話だ。

ジェニーナさんは、主人格を守るためだと書いている。

「自分」を守るため、過去あるいは現在の過酷な状況を生き延びるための手段として、自分を分裂させる。

振る舞いや特性、場合によっては記憶までをも分担する。

自衛のためという、シンプ

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過去が近くなる日

過去が近くなる日

どうも。「無気力」です。

「過去が近くなる日」疲労や体調などの事情によって、解離がひどくなる時がある。

そういう時は「パニック少年」が表に出てきて帰り方(他のパーツとの代わり方)が分からなくなったり、ひどいフラッシュバックが起こったりして、気持ちが落ち込んでしまいやすくなるのだ。

精神衛生によくないし、好きこのんでその状態にとどまっているわけではない。

抜け出し方が分からなくなるのだ。

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「スキ」を伝えやすくなった僕たちの話

「スキ」を伝えやすくなった僕たちの話

主が僕たちパーツの存在に気づいてから、ポジティブに変わったことはいろいろある。

軽く例示しておくなら、
・趣味の方向性がバラけていても自己嫌悪しなくなったこと
・自力で抑うつと虚脱状態から回復するスキルが身につきつつあること
・暮らしの中で得意を分け合えるようになったこと
などだろうか。

他にもいろいろあって、今日はポジティブな変化の中の「人と気楽に連絡が取れるようになったこと」について話して

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虐待に「重い」「軽い」はあるのか問題

虐待に「重い」「軽い」はあるのか問題

ども。翔です。

先にタイトルにも取り上げた問題についての俺の見解を述べると。

重いも軽いも「ない」と思ってる。

そのひとが感じているつらさを、ひとつの基準ではかることができないから。

あえて例えるなら、みんな使っている単位が違う感じ。

単位が違うものをひとつの尺度ではかることはできないし、わざわざ基準を設けて判断しようとするのも、本質を見失うことだと思うから。

みんな辛かった。それでい

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泣いたあと、お風呂に入りたくなかったあの時の理由【僕とパーツの人生紀行】

泣いたあと、お風呂に入りたくなかったあの時の理由【僕とパーツの人生紀行】

どうも。直也です。

いろんなところでいろんなことを書いているうちに名乗る必要性が生まれて、定型文めいたあいさつが使えるようになった。

それはそうと、今日はふと思い出したことの話。

不思議な現象子どもはよく泣く。例にもれず、主もよく泣く子どもだった。

今、当時を振り返れば、泣いていたのは「パニック少年」や「たたかうパーツ」の方だったのかもしれないけど。

感情をふりみだしてわあわあ泣いたその

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引き金はなくならない【僕とパーツの人生紀行】

引き金はなくならない【僕とパーツの人生紀行】

僕の趣味図書館で、子育ての本を借りてきた。

僕は子育て系の本を読むのが好きだ。

これは「より良い過去の可能性」を探求したいがために生まれた好みなのかもしれない。

「もしも、違う育てられ方をしていたら」

「もしも、より良い対応の仕方があったのなら」

本を通して、(主の、ではなく概念的な)親の目線で子育てを知ることで、やり直せない過去の記憶と折り合いをつけようとしたのが始まりだったのかも。

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僕の興味関心は、誰かの無関心【僕とパーツの人生紀行】

僕の興味関心は、誰かの無関心【僕とパーツの人生紀行】

僕たちパーツはひとつの体に同居していながら、性別も性格も興味関心の方向も、まったくもって違っている。

例えば僕は、育児や保育系の本を読むことが好きだ。インテリアに大したこだわりはなく、無難なデザインで、問題なく使えればそれでいい。

一方「パニック少年」は僕と同じ本を、子ども目線や、主が子どもだった頃の記憶と比較しながら読む。ままごとセットを中心に、おもちゃも好きだ。いつか和室の隅におもちゃを飾

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