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「ラーメン二郎」に学ぶ日本再興戦略。

ラーメン二郎をこよなく愛す いなつち☆稲田智 です。

今回は熱狂的信者に支えられている「ラーメン二郎」という食べ物から、日本再興戦略を考察したいと思います。

1. ラーメン二郎とは。

1968年創業の東京三田に本店を構えるラーメン店です。全国に40店舗ほどあります。

ラーメン二郎には他のラーメン店にはない特長があります。

 ①量が多い。

ラーメン二郎はとにかく量が多いのが特長です。これでも小盛りマシなし↓

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「小」と言っても普通のラーメン屋の大盛以上はあります。「大」は怖くて食べられません。私はいつも「小ブタ」にしてます。「ブタ」はチャーシューのことです。

 ②メニューが少ない。

メニューは割り切ってます。

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ラーメンのみ。小か大かと、ブタのシングル、ダブル、のマトリックスになっているだけです。

 ③中毒性のある味。

もはや何系のスープかわかりませんが、私はこのスープに心酔しています。豚から取った出汁、化学調味料、ラーメン二郎専用醤油から成るようです。永久に飲み続けていたいと思わせる中毒性があります。もはやスープを体に直結して欲しいです。

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 ④独特のルール。

ラーメン二郎には暗黙のルールがあります。

「コール」
以下のトッピングが無料です。

・野菜
・ニンニク
・カラメ(味をしょっぱくする)
・アブラ(背脂)

ラーメンの提供直前に店員さんから「どーぞ」と無愛想に聞かれます。これは「トッピング何にしますか?」の意味です。

すかさず「野菜マシ、ニンニク、カラメ」などと真剣に呼応しなければなりません。これを「コール」と言います。

マシは「多め」の意味です。マシマシっていうと、かなり多く増されますので注意が必要です。

「天地返し」
麺がスープを吸ってのびてしまうので、最初に野菜と麺の上下関係を入れ替えることを指します。私は、野菜に味を染み込ませるために天地返しをします。↓

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「飲み物持ち込み自由」
飲み物の持ち込み自由です。黒烏龍茶を持ち込んでいる人が多い気がします。もはや健康になりたいのか不健康になりたいのか謎です。

「ドンブリを上げテーブルを拭いて帰る」
食べ終わったら、ドンブリをカウンターに上げ、布巾でテーブルを拭いて帰ります。

店舗によって異なりますが、このような暗黙のルールがあるため、初心者にはハードルが高く感じられます。

 ⑤店員が突き放し型。

店員が恐ろしく無愛想です。食券を渡した時にトッピングを言ってしまうのは無邪気すぎて怒られます。コールは提供直前です。また行列で入り口を塞いだりしてしまうとまぁまぁの怒られ方をします。

顧客ニーズに迎合しようなどといった気配は微塵もなく、「お客様は神様じゃない、我こそが神だ。」と言わんばかりの態度です。

この態度のため残すなどありえず、皆涙目になりながらも食べ切ろうとしてしまうのです。

 ⑥インスパイア系の存在。

ラーメン二郎を真似る店のことを「二郎インスパイア系」と呼びます。インスパイア系が増えることによって、本家ラーメン二郎の宣伝を間接的にしてしまっています。

このように、ラーメン二郎には他にはない6つの特長があるのです。

①量が多い。
②メニューが少ない。
③中毒性のある味。
④独特のルール。
⑤店員が突き放し型。
⑥インスパイア系の存在。


2. ラーメン二郎を因数分解してみる。

このラーメン二郎、どのような戦略でビジネスを成り立たせているのか?を分析してみます。

飲食業における売上高は、以下のように因数分解できます。

「売上」=「単価」×「客数」×「購入回数」

ラーメン二郎の場合、
「単価」は安く、
「客数」は新規顧客少なく、
購入回数」の多いリピーターばかりで成り立たせているビジネスに見えます。

リピーター生成に効いている要素が何か?を探るため、もう一度ラーメン二郎の6つの特長を見ていきましょう。

①量が多い。
②メニューが少ない。
③中毒性のある味。

は「差別化」の要素です。

差別化においては、①③もさることながら、「②メニューが少ない。」が重要です。「ラーメン二郎を食べたい」と思ったときに、ラーメン二郎以外の要素は一切不要なのです。メニューを極限まで絞り込むことにより、その店のノイズが減り、輪郭を際立たせることができます。

次に、
④独特のルール。
⑤店員が突き放し型。
⑥インスパイア系の存在。

は一体何でしょうか?

これは「宗教化」なのではないかと思います。

独社会学者マックス・ウェーバーによると、宗教の3大要素は、「教え」「救い」「崇拝」だそうです。

この観点で見てみると、

「④独特のルール。」は、信者のみがわかる共通言語と暗黙ルールなどの「教え」があること。

「⑤店員が突き放し型。」は、食べ残しができず、自己の精進努力によって「救い」(人間が苦悩から解放され、癒されること。)を求めてしまうこと。

「⑥インスパイア系の存在。」は周りがラーメン二郎を拝むという「崇拝」する構図があること。

この3つの要素により、意識的・無意識的に「宗教化」しているのだと思います。

宗教化」すると、そのコミュニティへの帰属意識が高まります。リピーターだけが知っている「共通言語」や「ルール」により、コミュニティに属する特別感や一体感が生まれ、よりコアなファンに昇華していくのです。

このようにラーメン二郎は、「差別化」と「宗教化」により熱狂的信者という名のリピーターを生み出し続けていると解釈できます。

3. ラーメン二郎に学ぶ日本再興戦略。

ラーメン二郎を日本再興に活かせないか考えてみます。

ここでは、2018年度中間決算で最終損益が8億円の赤字に陥った「吉野家」を取り上げます。

売上高は前年同期比2.7%増ですが、最終損益が赤字に転落してます。これはコスト増によって営業利益が激減してしまったためです。

原価率が原材料価格の高騰で上昇。米国からショートプレートという安い牛肉を仕入れていましたが、中国もこれを使うようになり高騰しました。

また、人手不足により安い時給ではアルバイトが集まらないという人件費の問題も大きいです。

原価率上昇に対しては、鯖定食など牛肉以外へのメニュー展開で回避、人件費については、40%の店舗でセルフサービス化してオペレーション効率をアップさせるそうです。

原価、人件費の問題ですが、売上が全ての源泉になりますので売上KPIで考えてみます。

「売上」=「単価」×「客数」×「購入回数」

の因数のうち、「単価」を上げるのが原価率高騰を考えると近道です。しかし、競合状況からコストを価格に転嫁できません。

客数」も新規で増えないことから、まずは「購入回数」を増やし、数のボリュームで仕入原価を下げる必要があります。

ここでラーメン二郎での学びが使えます。
差別化」と「宗教化」です。

 「差別化

①量を多くする。
「並」「アタマの大盛」「大盛」「特盛」の4サイズを「小」と「大」のみにします。「小」は従来の大盛、「大」は特盛以上の量にし、他社とインパクトで「差別化」します。単価は量相応に上げても良いです。

「アタマの大盛」は通常メニューではなく、吉野家信者のみが共通言語で注文できるようにします。

②メニューを少なくする。
業績が上がらなくなると吉野家の様にメニューを増やしたがりますが、それは著しくブランド価値を毀損します。

その店が「何者か」がわからなくなってしまうからです。吉野家には「牛丼」を食べに行っているのであって、カレーや鰻重は食べません。

吉野家は思い切って「牛丼」のみにしたら良いと思います。ブランドの輪郭がはっきりするし、いろんなメニューを出している松屋やすき家との「差別化」にも繋がるからです。

アルバイトの人達のオペレーションも楽になり、人件費も減らせるでしょう。

③中毒性のある味。
この味に信者が多いため、特に変える必要はありません。

 「宗教化

④独特のルールを強化する。
吉野家は他社と比べて独自ルールがあり、すでにいい線を行ってます。「つゆだく」「ねぎだく」などの独自コールを増やし「宗教化」するとよいと思います。「アタマの大盛」もこちらに寄せるべきです。

個人的には紅ショウガを沢山自分で乗せるのが面倒なので「紅だく」注文できると嬉しいです。

⑤店員が突き放し型。
人手不足の折、過剰なサービスは不要です。「うちは牛丼しかやりませんが、何か?」みたいな態度でいいです。全てキャッシュレスにし「コール」だけ儀式としてお客が言うようにすれば良いと思います。

⑥インスパイア系の存在。
これは①〜⑤により差別化、宗教化が進んだ先の展開となります。吉野家インスパイア系が出てきたら面白いですね。


以上のような施策で差別化、宗教化し、熱狂的信者が増えることで「購入回数」を増やせます。数のボリュームで仕入原価を下げられれば、粗利が稼げます。

また、メニューのシンプル化、キャッシュレス化によって、価値のないオペレーションを減らし、コールなど宗教化に必要な部分にのみ人が介在する。これによって吉野家の価値を上げながら人件費を減らすことができます。

吉野家ブランドが向上すれば、今後単価を上げたとしても来てくれるはずです。よってまずは差別化と宗教化によって熱狂的信者を増やすのが近道だと思います。

吉野家の例は、デフレを前提とした今の日本全体が、大きな転換点に来ていることを示唆しています。これをどう乗り越え日本を再興するかは、敬愛する我がラーメン二郎が教えてくれているのです。

日本がラーメン二郎に学び、大きな復活を遂げることを期待します。

おわり。


※記載の内容はあくまで個人的意見です。

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