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エッセイ他

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長めの詩と、物語と、ポエムの延長線上にあるエッセイと。
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#性別違和

ただの日記(20240524)

ただの日記(20240524)

 少年たちの締まったしなやかな肢体を見て湧き上がるのは憧れだ。僕にも少年時代が欲しかった。少女時代ではなく。

 胸に無駄な肉の塊ができて、骨盤がバキボキと音を立てて育った。

 骨が薄くて皮下脂肪が柔らかい身体が一概に嫌いなわけではない。人間の身体は男性より女性のほうが美しくできていると個人的には思っている。客観的に見て女性の身体は嫌いではない、だが自分が女性の身体でいることはまた別の話だ。綺麗

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体の性を自分で決める

体の性を自分で決める

 胸が膨らんでいても、子宮に続く穴があっても、毎月のように血を流しても。この体は「男の体」なのだ。

 常識で考えるなら女の体なのだろうけれど。体の性を決めるのは、意外とそんなに簡単じゃない。

 性器の形とか。

 顔の造りとか。

 背の高さとか。

 毛の生え方とか。

 筋肉や脂肪の付き方とか。

 そういうもので僕らは何となく人の性別を判定している。

 基準はあくまで平均に基づくもので

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落とし所をどこにつけるか

落とし所をどこにつけるか

 最近ジェンダーアイデンティティが揺らぐことがあっていろいろ考えていたが、この性別違和に対して具体的に何か手を打つことは、少なくとも当面はしないと思う。

 その理由を以下に整理してみる。

 まず現状では人との関わりが少ない。性別移行の理由として、一般的にはパートナー関連の問題が結構な重みを持っている場合が多いと思う。パートナーを見つけるにしても、性的な関係を持つにしても、望む性別の形に近い体を

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性別を医学的に決められるのは怖い

性別を医学的に決められるのは怖い

 性自認は遺伝子で決まるという説を目にして怖くなった。

 トランスジェンダーがトランスジェンダーであることが医学的に証明できるようになると喜ぶ人もいるかもしれない。でも僕はそういう発想自体が怖いのだ。

 遺伝子を調べたら僕の自負する性別がわかると考えるなら、僕の性別を他人が決められることになる。僕が何を感じ何を考えているかなんて何も知らない専門家が、あなたは女ですとか男ですとか勝手に判別するの

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フェミニズムとの離別

フェミニズムとの離別

 女らしくと強いられたくない
 女子力高いと褒められたくない
 歩く女性器と思われたくない
 女だからと低く見るな
 違う生き物として見るな

 隠されていた枕詞は
 「僕だって男なのに」

 胸の中に嫉妬の巣を見つけてしまった僕は
 「女を馬鹿にするな」ともう叫べない
 僕はその主体ではない
 女の怒りは女の手に

 僕は僕だけの孤独な怒りで
 向こう岸を眺め遣る

 男と女の間の断絶
 その谷

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「男嫌いのトランス男性」だったのかもしれない疑惑

「男嫌いのトランス男性」だったのかもしれない疑惑

 ここ数年は自分の性自認を男女どちらでもない「Xジェンダー」と位置付けてきたが、実は内面は男性に近いのに「男であること」から逃げていたのかもしれないと思い始めた。

 きっかけはX(Twitter)のスペースだった。

 タイトルの通りノンバイナリーのお二人がおしゃべりをするスペースなのだが、今回は「子供の頃、ジェンダー的に影響を受けたキャラクター」について話されていた。魅力的だったキャラ、共感し

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産みたくない僕の話を聞いて

産みたくない僕の話を聞いて

「子供、欲しいの?」

 グレーのスウェット姿の彼はベッドに寝転んだまま「いてもいいかなと思って」と答える。視線はスマホの液晶の上を細かく上下し続けている。

「どうしてそう思うの?」

「んー、なんとなく?」

 彼は寝返りを打って、にへらと口元を緩める。

「こちらは産みたくないし、今の状況で育てていくのも無理だと思っています。子供が欲しいなら説得してよ。どうして子供が欲しいの?」

 彼はス

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ジェンダー論に関心を持つ個人的理由

ジェンダー論に関心を持つ個人的理由

 自分は女の出来損ないだと長いこと信じていた。

 自分が女であることを認められないのは子供時代の一時的なことで、大人になるまでの過程のどこかで諦めて受け入れて女になっていくのだろうと思っていた。きっとみんなそんなもので、成長していくうちに自然と女になっていくのだろうと。

 けれど思春期を過ぎても「女」になりきることができなかった。みんなが乗り越えていく「女になる」という壁を、自分だけ越えられな

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娘じゃなくてすみません

娘じゃなくてすみません

あんたが女の子で良かった
お腹にいるとき女の子ってわかって喜んだ
女の子は可愛くて大人しくてママと仲良し
がさつな男の子の母ちゃんになんかなりたくないわ
あなたが嬉しそうに言うものだから
僕は女の子になりました

未熟な自我の迷走中
男の子に憧れる子なんてありふれてるし
大きくなれば自然と治まり
女であることを受け入れて
僕を私と呼べるようになると
信じてやり過ごしていました

だけどそうはならな

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物語詩「彼女の身体」

物語詩「彼女の身体」

公園の砂場が海だった頃から
僕は何となく知っていた
この身体は僕のものじゃない

ずっとそこにいたような顔で
確信が居座っていた
僕への笑顔の宛先は身体の真の持ち主で
僕は真性の詐欺師だって
そいつのにやけた粘着質の言葉が
耳にもわもわと網を張った

誰も、誰も気付かない
僕が間違ってここにいること
その子はここにはいないってこと

その子の名前
その子の好きな色
その子の着たい服
その子の憧れの

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