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高井宏章
2021年10月14日 12:31
田中泰延さんの『会って、話すこと。』を読んだ。面白かった。前著『読みたいことを、書けばいい。』の読後、私は長い文章を書いた。長くなったのは、面白かったから、なのだが、世評と自分の受け止め方にズレがあったから、でもあった。『会って、話すこと。』については、書評やネット上の感想に違和感はない。「元電通マンが金欲しさで書いた本」と正当に受け止められている。どこかの本に「誰かがもう書いてい
2022年8月9日 10:59
去る8月6日、田中泰延さんの経営する出版社「ひろのぶと」の株主ミーティングが開催された。登壇予定だったが、諸般の事情で出席がかなわなかった。私自身、とても楽しみにしていたので、とても残念だった。未練がましくプレゼンまがいの祝辞を送った。田中さん、代読ありがとうございました。短時間で書いたので少々粗いが、少しだけ手を入れて残しておく。では、ごゆるりと。おカネの教室 in ひろのぶと皆
2022年2月27日 20:33
最後に地球儀をじっくり見たのがいつだったか、覚えているだろうか。私はといえば、リビングに転がる「ほぼ日のアースボール」のビーチボール版で遊ぶことはあっても、「じっくり見る」ということあまりなかった。先日、少し空気が抜け気味だった地球儀に息を吹き込み、久しぶりに時間をかけて眺めまわした。きっかけはロシアによるウクライナ侵攻と、田中孝幸さんのデビュー作『13歳からの地政学』を読んだことだった
2021年2月20日 08:49
「一番のお気に入りの手塚作品はどれか」マンガ好きならこんな話題で盛り上がったことがあるだろう。『ブラック・ジャック』『火の鳥』『ブッダ』『どろろ』『奇子』『三つ目がとおる』『シュマリ』『ばるぼら』『アドルフに告ぐ』――。今、本棚に並んでいる作品をざっと挙げただけでも、どれを選ぶか迷う。短編集や『人間ども集まれ!』といった異色作も捨てがたい。少し上の世代なら、『鉄腕アトム』や『ジャングル
2021年2月5日 11:55
2018年夏に当コラムを始めたとき、「いつか必ず書こう」と決めた作品がいくつかあった。その筆頭格が、藤子不二雄Ⓐの『まんが道』だ。漫画家のバイブル私の手元にあるのは2012~13年にかけて刊行された全10巻の「決定版」だ。小畑健、ハロルド作石、江口寿史、あらゐけいいち、島本和彦、秋本治、荒木飛呂彦……。帯や文末の寄稿文に並ぶ漫画家の名前を見るだけで、この作品の偉大さが分かる。どの言葉
2021年1月10日 18:23
ナメクジほど、「考える」という動詞と縁遠いイメージの生物はなかなかいないだろう。これしかない、というタイトルで、しかも看板に偽りなしの好著だ。『考えるナメクジ』さくら舎 松尾亮太/著苦い薬品とセットで与えると美味しいジュースを避けるようになる。同じように薬品で条件付けすると、大好きな暗い隠れ家も「苦い思い出の場所」と記憶して、隠れるのを逡巡する。そんな意外な学習能力・論理的思考力に
2020年10月24日 10:03
書名だけみると、ベストセラー『読みたいことを、書けばいい。』の著者、田中泰延さんがこぼす愚痴のようだ。田中さんはあちこちで「書くのは苦しい」と発言している。本書はそうした泣き言ではなく、「そんなあなたが書けちゃうんです!」という帯の文句を含めてメッセージが完結する、「これから書く人」に向けたガイドブックだ。『書くのがしんどい』PHP研究所 竹村俊助/著文章術を説く本は何冊か目を通してい
2020年9月27日 12:11
私事で恐縮だが、著者の布施川天馬さんと私は、年は二回り以上離れているものの、境遇が少し似ている。家庭が貧しく、塾や予備校に通うお金もなく、かといって自宅で学習する習慣もなく、働きながら大学受験に臨み、地理的・金銭的な制約で「地元の国立大学」に入った。私は現役で名古屋大学、布施川さんは一浪で東大と「着地」は違っているが、似たようなコースだ。『東大式節約勉強法』扶桑社 布施川天馬/著タ
2020年9月25日 07:00
翻訳モノには、独特のマゾヒズム的な楽しみ方がある。もう「新刊」は出ている。でも、読めない。ギリギリ行ける英語でも大作は躊躇する。原書を読んだ人たちから「傑作」といった評が耳に入ってくる。ジリジリしながら、訳を待つ生殺しに耐える日々。『三体』3部作にそんな思いを抱く方は多かろう。『三体II 黒暗森林』早川書房劉慈欣/著 大森望、立原透耶、上原かおり、泊功/翻訳私もこれほど「
2020年8月8日 22:02
スポーツに限らず、何かを始めたばかりの人は、「技術も身についていないのにメンタルトレーニングなんて」と考えがちだ。大間違いである。アマチュアほど、それも初心者ほど、早くメンタルトレーニングを導入すべきなのだ。早ければ早いほど良いあるゴルフのメンタルトレーニング本にこんな趣旨の文章があった。「たくさん叩くアマチュアの方がメントレの成果を生かすチャンスは多い」これは半分ジョークで半
2020年7月29日 11:52
PISAをご存知だろうか。OECD(経済協力開発機構)が3年ごとに行う国際的な学力調査で、Programme for International Student Assessmentの頭文字をつないだものだ。「日本の子ども、学力順位が後退」といった形でニュースになるので、名前は聞いたことがなくても、結果だけご覧になったことはあるかもしれない。本書は英国人教師が、PISAの成績上位から5つの
2020年7月23日 08:00
秀作ぞろいの中公新書の歴史シリーズのなかでも、指折りの傑作だ。今年で94歳、在位68年を迎えた「史上最長・最強のイギリス君主」の世界史的な位置づけ、そして何よりエリザベス女王自身と英王室メンバーの伝記として、きわめて秀逸な読み物になっている。『エリザベス女王』中央公論新社 君塚直隆/著あらかじめお断りしておくと、ロンドンに駐在した影響もあって、私はエリザベス女王のファンだ。ご長命をお祈
2020年3月3日 09:47
各国で絶賛され、日本でも2012年の本屋大賞・翻訳小説部門トップに輝いた『犯罪』の筆者の最新作は、期待を裏切らない珠玉の短編集だ。『犯罪』と『罪悪』の2作を何度も再読してきたシーラッハファンの私にとっては、文字通り、待望の1冊。6月に入手して以来、お気に入りの収録作はすでに3~4回読み返している。『刑罰』東京創元社フェルディナント・フォン・シーラッハドイツで刑事事件専門の弁護士として活
2020年2月21日 10:15
2月14日に光文社のサイト「本がすき。」にこの本のレビューを書いた。『最新医学で一番正しいアトピーの治し方』ダイヤモンド社 大塚篤司/著このレビューの前に、以下の連続ツイートも割と広く拡散された。記録のためにも書き残しておきたいテーマなので、以下、レビューとツイートを再構成してまとめておく。母が巻いてくれたサランラップ私は子どものころ、「アトピっ子」だった。症状が酷かったのは小