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メンタルトレーニング 初心者から実践すべき「ゾーン」に入るための5つの鉄則

スポーツに限らず、何かを始めたばかりの人は、「技術も身についていないのにメンタルトレーニングなんて」と考えがちだ。

大間違いである。

アマチュアほど、それも初心者ほど、早くメンタルトレーニングを導入すべきなのだ。

早ければ早いほど良い

あるゴルフのメンタルトレーニング本にこんな趣旨の文章があった。

「たくさん叩くアマチュアの方がメントレの成果を生かすチャンスは多い」

これは半分ジョークで半分以上、真実だ。
足すと余りが出るくらい真実だ。

初心者とは「これからたくさん練習する人」だ。
「メンタルトレーニングなし」と「あり」では練習の効率と成果に大きな差が出る。
基礎技術と同時進行でメンタル強化に取り組んだ方が近道なのだ。

いや、むしろこう考えるべきだ。

「メンタルのコントロールは『基礎技術の1つ』である。

今回は高井さんのnote史上、最も実用的な投稿だ。
私の趣味のビリヤードに寄せて書くが、元ネタは主にゴルフである。
いろんなスポーツや実生活の場面に応用が利くと思う。

以下、「補足」とある細字の囲みは飛ばしても構わない。

補足
私はスリークッションの持ち点が25点で、ポケットは9ボールでたまに「マス割り」が出る程度(マス割りはノーミスで9番まで入れてしまうこと)
一般人と行くとビビられるが、やりこんでいる人には「ボチボチ撞けますな」と言われるぐらい。

個々のノウハウはオリジナルではないが、何冊も本を読み、実践のなかで構築したエッセンスだ。
最後に「ネタ元」の参考文献も挙げておく。

鉄則1 「線引き」で2つのゾーンを作る

ビリヤードは「止まっている球を、誰にも邪魔されずにショットする」という点でゴルフに近い。
バスケのフリースロー、バレーのサーブ、ラグビーのプレースキックも同様で、ほぼすべてを「自分」がコントロールできる。
自分次第、つまり技術とメンタルが成否を決める。
実力を発揮できるかは、メンタルの強さにかかっている。

この種の分野で「プリショット・ルーティン」が死活的に重要だという認識は今更指摘するまでもないだろう。
ルーティンにより、「いつも通り」のスイッチを入れ、プレッシャーを遠ざけ、集中力を高める。

どんなルーティンにするかは、人それぞれだから詳述しない。
ここでは効果的にルーティンを構築する「土台」の話をする。
それは「線引き」で「静と動の切り替え」を定着させることだ。

ゴルフを例に説明しよう。
「打ちっぱなし」で練習するときに「ひも」を持っていく。
ロープでも棒でも良い。「仕切り」の目印になるものだ。
「ひも」は打席の手前に置く。
「ひも」の手前が「イメージゾーン」、「ひも」をまたいで入る打席側が「ショットゾーン」だ。

「どんなショットをするか」という選択とイメージ固めは手前の「イメージゾーン」でしか行わない。
「ひも」を超えて「ショットゾーン」に入ったら思考を停止する。

ゴルフ ショットゾーン

この分離によって、ショットは「自動操縦モード」で行えるようになる。
自動操縦とは、練習で身に付けたショットをほぼ無意識で実行するのを指す。

そのためには「イメージゾーン」で体が覚えているフォームを勘定に入れてショットのイメージを固めるのが肝要だ。

「ショットゾーン」で違和感があったり、「イメージの再現は無理だ」と気づいたら、「ひも」をまたいで「イメージゾーン」にいったん戻る。
構えてみて「ちょっとこうした方が良いかも」と改善されたイメージが沸いた場合も、いったん戻る。

練習からこの「いったん戻る」を徹底する。
完全に2つのゾーンが定着したら物理的な「ひも」は置かなくても良い。というより、コースには持ち込めないから、「見えないひも」が定着するまで、この鉄則を守る。

ショット自体のレベルアップは、反復練習するしかない。
ただし、その練習も極力、この手順を守る。
イメージの修正がなければ続けてショットしても良いが、「ちょっと違うな」と思ったら、いったんイメージゾーンに戻る。

これが定着できると、「迷いながらショットしてしまう」という典型的なミスは激減する。
ミスの原因がイメージにあったか、ショットにあったか、特定しやすいので、上達も早い。

鉄則2 ゾーンごとにルーティンを守る

次に「イメージゾーン」と「ショットゾーン」それぞれのプリショット・ルーティンを固める。

今度は私のビリヤードのルーティンで説明しよう。

ビリヤードは1対1のゲームで、相手の番の間は椅子に座って待っている。
プリショット・ルーティンは「椅子から立ち上がる寸前」から始まる。
相手がミスして自分の番が回ってくると、すぐに席を立つ人が多い。
私は2秒ほどかけて、椅子からテーブルを見る。
第三者的な視点でボールの配置やゲーム状況などを把握するためだ。
これは非常に効果が大きい。
立ってしまうとプレイヤー目線になってしまい、テーブルを客観視しにくくなる。

椅子から立ったらそこは「イメージゾーン」だ。ルーティンは以下の通り。

①球の配置を精査。基本、テーブルを1周する
②適切なショットを選択
③ショットを動画としてイメージ
④必要な要素、特にストロークをイメージ
⑤立ったまま素振りしてイメージを最終確認
⑥「行ける」と感じたら、構えに入る

滑り止めのチョークをテーブルに置き、身をかがめて構えに入った段階で、モードは「ショットゾーン」に切り替わる。

ビリ ショット

(カバー画像含めてイラストは娘に描いてもらった。ビリヤードの上の絵、キューを持ってないのはご愛敬)

「ショットゾーン」のルーティンはシンプルだ。

①スタンスとキューの方向をイメージと照合
②何度か素振りしてストロークを最終確認
③タイミングが合ったらショット

①でズレを感じたり、②の段階で迷いや雑念が入ったら「立つ」。つまり、いったん構えを解いてしまう。
そして「イメージゾーン」のルーティンの必要なステップまで戻る。

この「ルーティンの分離」でミスショットは大きく減る。
ミスした場合はイメージの誤りか、ショットのミスか分かる。

ルーティンがキープできているかは、心身の好不調やメンタルコントロールがうまく機能しているかを測るバロメーターにもなる。
ルーティンが崩れるようなら、「根っこ」から再構築した方が立ち直りは早い。その手法は次に書く。

鉄則3 「ネガティブな言動」を封印する

どんな競技でも、ゲーム中にネガティブな感情がわいてくる場面がある。
きっかけは「外」にも「内」にもある。
ビリヤードなら「外」の典型はテーブルのコンディションや相手のノロノロプレイなど。ゴルフなら天候、チームスポーツなら審判のジャッジなど。
「内」は、自分のプレー、ミスに対する怒りや不満が代表例だろう。

ネガティブな感情が起きること自体は、抑えるのが難しい。
ミスショットが続けば凹むし、コンディションが悪いテーブルにうんざりすることもある。仕方ない。人間だもの。

でも、それを口や表情、仕草に出してはいけない。
最悪は言葉にすること。自己暗示にかかってしまうからだ。

たまに、ゲーム中に相手に「きょうは調子悪そうだねぇ」といった言葉をかけるプレイヤーがいる。じいさんに多い(笑)
言われたら、相手の3倍ぐらいの声を張り上げ、笑顔で「そんなことは、ない!」と否定する。
相手の暗示を跳ね返し、「あんた、マナー違反だぞ」と警告するためだ。
相手が上級者だろうが、年長者だろうが関係ない。

要注意は言葉だけではない。
私はゲーム中は原則、首を縦にしか振らない。
ミスショットでも、原因を把握して、「わかったぞ」という調子でうなずく。首を傾げたり、首を横に振ったりはしない。
ネガティブな仕草は、自分のなかでネガティブな感情としてたまっていく。
ネガティブな心の動きが蓄積すると、いっそう調子が落ちる。
仕舞には、「きょうはダメだ」「オレは悪くない。相手が悪い。テーブルが悪い」と言い訳をはじめて、自滅する。
そんな状態になって抜けられないなら、早く帰って寝た方が良い。

鉄則4 「オフ」で心身を緩める

この項ではルーティンに入る前、相手がプレーしている間の「待ち方」について書く。ゴルフならショットとショットの合間に当たるだろう。
これを仮に「オフ」の状態としよう。自分の番が「オン」だ。

「オフ」の最大のポイントはリラックスすること、集中しすぎないことだ。

人間の集中力はそんなに長時間保たない。
「オン」のために集中力を温存しなければならない。
とはいえ、完全にゲームから離れてしまってはダメだ。
例えばスマホをいじって過ごすとか、全くビリヤードと関係のない雑談をして待つのは得策ではない。それでは「切れて」しまう。

私は「オフ」の間は「観客になる」よう心掛けている。
相手のショットをよく見て、球の挙動やテーブルの状態を見極める。
プレイヤーとして自覚しないで客観的に見ていれば、気疲れしないし、相手がプロでもビビることはない。
テーブルのコンディションも「岡目八目」でよく見える。

「観客」として見ていれば、相手のナイスショットやラッキーショットにも焦ったり、苛立ったりしない。
心から「ナイスショット」と言えて、ネガティブな感情に囚われる懸念もない。
ちなみに相手のミスを願うような心理状態は、スポーツマンシップにもとるだけでなく、メンタルコントロールとしても「下の下」だ。
必ず自分に跳ね返ってきて、自分のミスを誘発する不安の芽になる。

「観戦」の間は、腹式呼吸をして、腰、肩を弛緩させる。
これはメンタルの安定にもプラスなうえ、体のコンディションを整える効果も大きい。
ビリヤードは構えが不自然な姿勢なので腰に負担がかかる。待っている間に「中立」に体を戻すと疲れず、腰痛予防にもなる。

この「オフ」でリラックスするのがメンタルを「根っこ」から立て直す手順になる。
もちろん、単に「リラックスしよう」という精神論だけでは効果は小さい。
そこで重要なのは、次の「正しい目標」に立ち返ることだ。

鉄則5 「正しい目標」を定める

どんな競技でも、ゲームの目的は通常、「勝つこと」だ。
だが、勝利を目標に置くのは誤りだ。
なぜなら、それは自分でコントロールできるモノではないからだ。

練習や普段のゲーム中から、目標は常に「コントロール可能なもの」に置くべきだ。
そして、本番の試合でも、そこから心を動かさない方が良い。
それで飯を食っているプロならともかく、アマチュアならそれほど難しくはないはずだ。
別に、負けたって、とって食われるわけじゃない。
それに、アマチュアレベルなら、「勝ちたい」と気張るより普段通りの実力を出した方が勝算は大きい。

コントロールできる目標に集中しているうちに、最後、勝利が転がり込んでくる。

これが理想形だ。
いずれにせよ、どう転んでも地力以上のプレーはできないのだ。
実力を出せるような精神状態を作る、そのように普段からメンタルコントロールの習慣をつける。
そのために重要なのが「正しい目標」の立て方だ。

ここでもポイントは「コントロール可能かどうか」だ。
私の場合、ビリヤードをプレーする時、3つの目標を意識している。
優先度が高い順に、

①イメージした通りのショットを実現する
②連続2桁得点を狙う
③持ち点25点を獲得して「あがる」

となる。
それぞれに意味があるだけでなく、この優先順位が私のメンタルコントロールの極意だ。

①は練習でもゲームでも共通する。
思い描いたとおりにショットできれば、気持ち良い。
大事なのは「当てる=得点する」を目標にしないこと。

補足。スリークッションというゲームでは、「自分の球を一定条件を満たして他の2つの球に当てる」ことで1点が入る。一定条件とは「自分の球を3回以上、クッション(バウンド)させる」。
普段のゲームは25イニングで持ち点(ハンディキャップ)をクリアするのを競う。引き分けが多い。試合では規定の得点を先にあげた方が勝ちだ。

得点をあげないとゲームには勝てないが、「当てる」を目標にするとプレーの質は下がる。
「当てたい」は、邪念となりやすく、ショットが乱れるのだ。

テーブルのコンディションによっては、イメージ通りのショットができてもスレスレで外れる事もしばしばある。
そこで
「ショットは悪くない。コンディションに合わせてイメージを修正しよう」
と思えるか、
「こんなテーブル、やってられるか」
と腐るかの差は大きい。

②の「連続2桁得点」、つまりノーミスで10回以上当てると言う目標は、アマチュアとしては相当に高い目標だ。
普段のゲームなら、5〜6点でナイスプレー、7〜8点出そうものなら拍手が起きる。

補足
私のショット成功確率は調子がよくて50%、普段は35%程度。40%だとして、10連続得点の確率は0.01%、1万回に1回。
私の最高連続得点(ハイラン)は12点で、これは15年のキャリアで2回のみ。10点でさえ年に1回出るかどうか。

高すぎる目標は、意欲をくじく懸念がある。
だが、この②の優先順位が絶妙なので、それ以上にプラスの効果が大きい。
①の「一球入魂」が最優先課題であって②はある意味、オマケでしかないからだ。
そして②を優先することで、③の「あがり」のオマケ感が高まるのがミソだ。

スリークッションをやる人は、「あがりたい」と思ってプレーしている。
持ち点(ハンディキャップ)は「かなり絶好調じゃないとあがれない」レベルに設定されている。
だから、たまにあがると、かなり嬉しい。
ゴルフなら「アンダーパーで回りたい」「ベストスコアを出したい」といった心理でプレーするのに近いだろう。

ここに、罠がある。
「あがり」は常時目標とするには難しすぎるのだ。
この優先度を高くすると弊害が色々と出てくる。
最大のデメリットは、前半が不調だと後半に気が抜けてしまうゲームが増えることだ。
「上がれないし、今回はもういいや」となってしまう
ゴルフでも、いったんスコアを崩してしまうと、気持ちが腐ってプレーが雑になる人は多いのではないか。

プレー時間が限られるアマチュアにとって、これは非常にもったいない。
最後までモチベーションを保ってゲームを全うできるかどうかは、長い目で見ると上達スピードに大きな差を生む。

私の目標を再掲する。

①イメージした通りのショットを実現する
②連続2桁得点を狙う
③持ち点25点を獲得して「あがる」

①は眼前の「一球」に専念すること。
②はゲームを通して集中を保つこと。
③は勝利の最後の関門を超えること。
それぞれ目的に沿った適切な設定になっている。

究極の目標「ゾーンに入る」

私がメンタルトレーニングに力を入れて最後の「目標設定」にたどり着いたのは、スリークッションのキャリアが10年を超えてからだった。

それまでは「できないこと」を順に消すだけでレベルアップの手ごたえがあった。技術的な「穴」を埋める作業を優先していた。
今でも「穴」は多いが、それを埋めるには、かなりの時間を練習に投入する必要がある。何事もレベルが上がるほど坂は険しくなる。

それほどの時間が取れないなかで選んだのが、「手持ちの武器の完成度を上げる」道であり、その手段がメンタルのコントロールだった。

私は普段、基本的にいつもニヤニヤしている。
だが、ビリヤードの時は別だ。
超真面目というか、ちょっとした瞑想みたいな雰囲気を漂わせていると思う。
プレー中、笑ったり、雑談をしたりはする。
だが、最高の最高の絶好調の時は、悟りを開いたような顔つきをしているはずだ。他のプレイヤーにもそういう瞬間があるので、間違いないと思う。
いわゆる「ゾーンに入る」と言う状態だ。

意識する目標には置いていないが、これが私の究極の目標、目的だ。
テーブルと球と自分が一体になって、全てが思うままにコントロールできる感覚に包まれる。
これが、最高に気持ちが良い。

運が良ければ一晩に数分、それに近い感覚が味わえる。
何ヶ月かに一度は、1ゲームを通じて数十分、そんな時間が訪れる。
あの感覚に比べたら、ゲームの勝敗やスコア、ここのショットの当たる、当たらないなんて、大した問題ではない。

名前は失念したが、希代のゴルフコラムニストの夏坂健氏があるプロのこんな言葉を紹介していた。

全てが思うようになる。そんな1日を経験したいのです。それに近い感覚を味わった事はあります。もう少しで「そこ」に行けそうなのです。
もし「そこ」にたどり着けたら、ゴルフをやめてもいい。

この文章が、皆さんがそれぞれの「そこ」にたどり着くための助けになれば幸いです。

Enjoy!!

以下、参考文献です。ゴルフばっかりですが、どれも面白くて有益です。
ちなみに、私は一切、ゴルフはやりません(笑)

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