日本に素晴らしいところがたくさんあるところと、日本には致命的ともいえる欠陥があるところは相互補完ができないこと どれだけ日本に他国から見ればうらやむようなものがあったとしても、それで日本の弱点が帳消しになることはない 弱さを認めることは想像以上に難易度が高いことと思う
自然や社会が人間、個人に与える害に対する防衛装置をできるだけ完璧なものにしようと努めること。近代文明について、おそらくこれ以上適切な定義はもめられまい 近代の文明とは人間に降りかかる害を極力減らそうというシステムということだろうか? 文明はあくまで人のために存在しているもの?
日本人は西欧が試して成功した保証付きのものばかりを輸入してきた それ故か、未知に挑もうという冒険心を失ってしまったのではないかと聞いた 近代日本人の脆弱性とは正しいかどうかわからないことに挑もうとしない一方で自らは正しくて何でも知っていると思いあがっていることだと福田は述べていた
緊張に耐えられない個人の弱さ、これが日本人の弱さだと聞く 精神の自立を好況時のみ求め、不況のときは贅沢だの、理想論だのと言い、幼稚で未熟な姿勢を公正なものとして受け入れろと開き直ったところに日本人の未熟さがあるとも聞く 個人が責任放棄が個人の責任過多をも生んでいる
自分の考えは人間のことを考える所謂「人間観」を根源に置いていると思う 福田恆存に惹かれているも彼が人間観から出発しているからかもしれない 国家や政治を考えるのも、経済や貨幣について述べるのも、福祉を学び、保守の方々の話を聞いているのも人間観に関わっていると思ったからだ
一人二役、二つの要素があってようやく一つの安定が生まれる 政治と文芸というものも二つ揃わないと、安定した筋の通った話ができなかったと聞いた 片方だけをどれだけ磨いても、一人前になれないことが現実には結構多い 自分を見るだけでなく、自分以外も見る。両方を見てようやくわかることもある
日本は民主主義の国。民主主義が破綻をしている場合でも同じことは言えるのか? 民主主義は理想の社会とは思えない。最善よりも最悪を防ぐためのものだと福田は述べていた 最悪を防ぐためのものが最悪を引き起こしているなら、本末転倒の可能性もある 前提の見直しはやはり大事ではと思う
日本人には偽善や欺瞞、事なかれ主義に至りやすい悪癖があると思われる その悪癖を対処する手段を作れずに歴史を作ってしまい、それは変えられないものだと諦めきっているように感じる 天性の楽天家であり、明確な立場も主張も持たずに都合よく振る舞い、美徳という言葉でごまかしていないか?
人格を得て、保つためには「うしろめたさ」が必要なのか 良心とは自分の存在、言論に後ろめたさを感じえる能力のことであり、その能力の統一ある働き、詰り、後ろめたさに堪え、尚それと闘い、自分とのなれ合いを退ける努力を通じて人格を得る 人格についての福田の意見に悩む意義を感じる
転機がおきる時は能動的起こすものなのか・受動的に起きることなのか 精神的転機とは新しい事態の想起ではなく、自分の精神の内部のいくつかの可能性と思われたものが、外部ないし内部的な限定を受けて死ぬことである 福田の言葉からは自らの中のものが壊れたときのことを指していると思われる
[疑う」ということ「他者」ということ 生きていることへの手触りや振る舞いが失われていること 「葛藤」が無くなってしまったことの弊害。近代主義が毒となる 生き生きとした感触を失い。凝り固まった思想の中で腐敗が進行している 人間論を失った人生は不幸というより空虚だと思った
一つ勘違いしていたことがある 福田恆存は自らの語る少数派と多数派を超えた確たる精神強者を皆が目指し、民衆に精神的強者になることを求めなければならないと述べている 精神的強者になるのは極めて難しいが福田はそれを大勢に求めていたのだ 周りがどうであれ、自らの筋を通す姿勢を求めたのだ
戦争と平和は表裏一体な一面があると聞く。平和な状態の中には潜在的な戦争があり、戦争の状態の中には潜在的な平和がある 冷戦の後には冷たい平和があったと聞いた 平和を求める裏には戦争の気配がある。平和を訴えれば戦争を止められるというのはあり得ない空想なのかもしれない
何かに所属しようとしたけれど、一歩を踏み出せなかった理由の一つに所属先に完全に取り込まれることに対する拒否の姿勢があったのだと思う 自らに着けられそうになるあらゆるレッテルを拒否する生き方。福田の本の最後に書いてあった生き方をしてみたいと思っているのかもしれない
共同体を破壊してしまったのは自己絶対化という風潮が広まってしまったことにあると聞く 理想を追いかけるのをやめて今この瞬間を楽しむためだけに生きる。自ら成長しないと開き直った状態が戦後から急速に高まったらしい 共同体を安売りした結果、今の生きづらさであふれた日本になったといえる