Yonaha Jun

與那覇潤です。2023年11月に『危機のいま古典をよむ』と『ボードゲームで社会が変わる…

Yonaha Jun

與那覇潤です。2023年11月に『危機のいま古典をよむ』と『ボードゲームで社会が変わる』(共著)を出すのに合わせて、始めることにしました。基本は、掲載・出演情報を「おまけ」を添えて上げていくつもりです。

マガジン

  • pork rillettes

    dis記事集(主に学問・言論関連)です。マガジン名の由来は、1本目の内容をご覧ください。なお、すべての批判対象をひとしなみに、その人物と同様に見なしているわけではありません。

  • espresso

    なんていうか、自分がどんな人かがいちばんよく「抽出されている」記事だけを足していきます。なるべくPRものや、他のマガジンとの重複は避けます。エッセンスを手短に読みたい方はこちらを。

  • 寄稿・出演情報

    與那覇潤が寄稿した論考や、出演するイベントの告知記事です。なるべく「〇〇に出ます」以外にも、おまけをつけるよう努力しています。ご予約の参考や、ビブリオグラフィー代わりにどうぞ。

  • ボードゲーム

    趣味のボドゲに関連する記事をまとめます。仕事だった歴史学については、第一にもう応援したくないし、第二に自分は何を書いても自ずと歴史の話になることに気づいたので、たぶんまとめません(笑)。

  • 資料室

    主に執筆・発表等のために集めた資料を「打ち込んで保存する」ための記事たちです(汗)。なので引用長めですが、かえって価値があるかもしれません。

最近の記事

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社会科学も「オープンレター」の後を追うのだろうか

「オープンレター」が再来する気配がある。 このnoteの記事は、おおむね論壇サイトの「アゴラ」にも載せてもらっており、後者で読む人の方がおそらく多い。ところが、国際政治学者の東野篤子氏をめぐる先日の記事について、アゴラへの転載版が「Facebookでシェアできない」事態が生じているそうだ。 アゴラとしても、Facebookに異議申し立てはしているようだが、なにせ相手がメガプラットフォームでは、丁寧な対応は望みがたい(なのでこの件で、アゴラの運営を責める行為は遠慮されたい)

    • 「蓮舫主義者」の精神形態: 丸山眞男のいない戦後民主主義

      終わらせませんというか、終わった後までこうも喧騒が引かない選挙というのも、珍しい。 半月前、7月7日の東京都知事選で3位落選となった蓮舫氏が、あらゆる批判的な論評にTwitterで言い返し続け、それを支持者が「その通りだもっとやれ!」と囃して、収拾がつかなくなっている。彼女による攻撃(本人の観点では反撃)の対象は、TVの司会者・コメンテーター・SNSのマスコミ記者・市井の一般アカウントと、きりがない。 蓮舫氏は立候補にあたり離党したので、現在は無所属だが、最大の支援団体の

      • アメリカの「新政権」はウクライナを見棄てるか

        ドナルド・トランプが共和党の副大統領候補に、J.D.ヴァンス上院議員を指名した件について、7月16日のアゴラに詳しい記事が出ている。 ラストベルトの白人労働者を代表するヴァンスは、当初はトランプをヒトラーに喩えるなど危険視していたが、後に熱烈な支持者に転じ、自分が副大統領なら「2020年の選挙結果(バイデンが勝利)も覆せた」と仄めかすほどらしい。本気でトランプに心酔したのか、単に権力になびいただけかは、今のところわからない。 注目すべきは、アゴラが紹介する今年4月12日付

        • なぜ、有識者は「言い逃げ」してはいけないのか

          前にも書いたことがあるけど、うつから回復する際に共感を持って読んで以来、椎名麟三という作家が好きである。いま読む人はそう多くないが、敗戦直後の焼け跡の日本で、実存主義の旗手とされた人だ。 文学史的には、近い作風の野間宏や埴谷雄高とともに「第一次戦後派」と呼ばれる。ちなみに遅れて続いた「第二次」が、安部公房や三島由紀夫で、こちらはいまも広く読まれる作家が多い。 それで、次の本で椎名について書いていたら、まさにいま大切な文章を見つけたので、シェアしておきたい。「ニヒルの克服」

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          東京都知事選挙に思う: 令和は「劣化平成」になるのか

          2022年の夏に池田信夫さんと出した共著は、ぼくとしては『令和を「劣化平成」にしないために』というタイトルがいいかなと思っていた。色々あってそうはならず、ただし帯の裏側に入れる惹句にその案は活かされている。 七夕の東京都知事選の結果を見て、しかしやっぱり、令和は「劣化平成」になっていくのかなと思った。そうした省察は、きっとあまりなされないだろうから、ぼくが書いておく。 多くの人が、石丸伸二・前安芸高田市長が事前の予想を上回る旋風を起こして2位につけ、逆に「立憲共産党」との

          東京都知事選挙に思う: 令和は「劣化平成」になるのか

          7/20(土)に、順天堂大学でボードゲームについて講演します!

          以前にもご案内しましたが、順天堂大学の「MEdit Lab」というプロジェクトにお招きいただいて、表題のとおり今月20日のシンポジウムに登壇します。イベントのタイトルはずばり、「医学をみんなでゲームする2」。 医学と社会の接点をどう作っていくかを、専門家と非専門家が協力しあって模索するプロジェクトらしく、ウェブサイトでは拙著2冊について、温かい書評を寄せてくださいました。イベントへのお招きとあわせて、御礼申し上げます。 それで、改めて自分とゲームのつながりを振り返ってみた

          7/20(土)に、順天堂大学でボードゲームについて講演します!

          SNSでバトルする「専門家」を、なぜ信用してはいけないのか

          ご報告が遅れましたが、6月26~28日に3回に分けて、経営学者の舟津昌平さんとの対談が「東洋経済オンライン」に掲載になりました!(リンク先は1回目) こちらのnoteをご覧になった、舟津さんと編集者さんが企画して下さったもので、ありがたい限りです。 例によってPRの記事をと思ったのですが、困ったことにいま、国境で軍事的な緊張が高まっているんですよね(比喩)。なので今回は、そちらの事情にも照らし合わせつつ、読みどころをチラ見せしていきましょう。 3回もあると「全部読むのは

          SNSでバトルする「専門家」を、なぜ信用してはいけないのか

          資料室: 世界はこれからインドになる(のか?)

          面白いもので、6月は作家の堀田善衛の旧著である『インドで考えたこと』にすっかりハマってしまった(ヘッダーも同書より)。NewsPicks の動画で採り上げた箇所については別の記事でも書いたけど、せっかくなので備忘のために追記。 詩人でもある尾久守侑さんとの対談で話題にしたとおり、1956~57年に新興国インドを訪れた堀田は、自分の専門だった「小説」では把握できない文明として、同地に言及している。まずは、首都デリーに入った翌日に―― 民族も言語も数え切れないほど多様で、太古

          資料室: 世界はこれからインドになる(のか?)

          ロシアは西洋化せず、西洋がロシア化する(のか)

          6月初頭に行われた欧州議会選挙の結果が、近年かまびすしかった「エコロジーの時代」の終焉だとして話題を呼んでいる。日経ビジネスによると、2019年の前回選挙で「52→71」へと躍進した環境左派(GEFA)は、今回逆に53議席へと転落した。 2019年といえば、グレタ・トゥーンベリの国連気候行動サミットでのスピーチが世界的にバズるなど、今日につながる脱炭素化ブームに火がついた年だ。当時はあたかも人類史上の転換点のように報じられた流行は、わずか5年で幕を下ろしてしまったらしい。

          ロシアは西洋化せず、西洋がロシア化する(のか)

          学者はネットの誹謗中傷を、どこまで「刑事告訴」すべきか

          この問題にはあまり関わりたくなかったが、元大学教員としてさすがに看過しかねるので手短に。 ウクライナ戦争の「専門家」として活躍する東野篤子氏(筑波大学教授)を、茨城県警本部の警部が誹謗中傷していた事件が話題になっている。Twitter(X)で容姿を侮辱する下品なもので、この警部の行いを擁護する人は誰もいない。 一方で、SNSでの中傷が民事訴訟に発展する例は多いが、今回、東野氏が加害者を刑事告訴したのは異例である。そして報道からは、その経緯がよくわからない。 多くのメディ

          学者はネットの誹謗中傷を、どこまで「刑事告訴」すべきか

          資料室: 近代「日欧比較思想史」年表

          以前もご案内した「ことのは」での小林秀雄イベントの内容が、新潮社のForesight でもダイジェスト記事(有料)になりました! せっかくなので、当日の配布資料に載せていた(近世=Early Modern を含めた)近代の「日本と西洋の思想家の生没年」対比年表を、こちらにアップします。なにせJ‐popでも、西洋中心の歴史の相対化が盛り上がる昨今ですからね(笑)。 要は、「誰と誰が『同時代人』だったのか?」の一覧です。今はネットで調べてささっと作れるものですが、こんな風に並

          資料室: 近代「日欧比較思想史」年表

          もし、ベートーベンが類人猿から音楽を教わっていたら

          先週末の呉座勇一さんとの配信では、話の枕のつもりだった「コロンブス」炎上が、目下の歴史学の問題点を考える上でも大事なトピックになった。 ぼくは普段、ネタが旬でなくなった後もたどれるようにリンクを貼るのだけど、この話題はどのサイトを選べばいいのかわかんないくらい炎上しすぎて、疲れてしまう。いちばん「批評性」を感じたNoteの記事を挙げておくので、それで勘弁してください。 興味深いのは、当初はいまの基準でNGなミュージックビデオを作ってしまったバンドの側が炎上したのに、後から

          もし、ベートーベンが類人猿から音楽を教わっていたら

          動画とか対談とかいろいろ(または、私はなぜ批評家を名乗らないのか)

          幸いなことに今月は掲載や出演の機会に恵まれたので、3つほどまとめてご紹介です。 ① ヘッダー写真のとおり『表現者クライテリオン』7月号に、前号に掲載された綿野恵太さんとの対談の続きが掲載されています。連載「在野の「知」を歩く」の第2回目です。 前回、こちらのnote で「在官」の学者がChatGPTに置き換えられる様子を描いたら好評で嬉しかったので、今回も暗喩的揶揄てんこ盛りでお送りしています! ぜひ、手に取ってみてください。 ② 年明けに私もお世話になったホルダンモリ

          動画とか対談とかいろいろ(または、私はなぜ批評家を名乗らないのか)

          ひとはなぜ成熟をしないのか

          お知らせが遅くなりましたが、いま売っている『潮』7月号に、岩間陽子さん・開沼博さん・東畑開人さんとの読書座談会の活字版が載っています(佐々木俊尚さんもメンバーで、今回は欠席)。 以前、2023年11月号に掲載されたオルテガ『大衆の反逆』をめぐる座談会と同じく、現在を読み解くことに益する往年の名著を読んでゆく内容で、今回のテキストはアインシュタインとフロイトの往復書簡『ひとはなぜ戦争をするのか』。国際連盟の依頼に応えて、1932年に交わされました。 初出時の時代背景と現在と

          ひとはなぜ成熟をしないのか

          呉座勇一さんとYouTubeで配信します(6/15)

          今週末の6/15(土)20:00~、新刊『教養としての文明論』をめぐって、共著者の呉座勇一さんのYouTubeに出演します。リンクはこちらから。 番組タイトルは、ずばり「歴史学はオワコンか? 文明論は復権する!」。前半の1時間強は無料で誰でも視聴可、後半はチャンネル購読者のみの有料配信となるそうです。 同チャンネルの契約者は、普通に考えて歴史学ファンが多そうなので、以下のとおり、告知文でもご配慮くださり恐縮です(汗)。 アカデミズムへの「愛想尽かし」といえば、近日も国立

          呉座勇一さんとYouTubeで配信します(6/15)

          司馬遼太郎が描いた「共産主義のリベラルな闘士」

          今月刊の『文藝春秋』7月号に、「「保守」と「リベラル」のための教科書」リベラル編の3冊目を寄稿しました。試し読みはこちらから。 今回ご紹介するのは、司馬遼太郎の随想『ひとびとの跫音』(1981年刊)。 昨年にも、ウクライナの戦況悪化と絡めて採り上げたことがあるとおり、司馬作品にしてはあまり有名でない同作、実は『坂の上の雲2』なんですよね。むろん「あの栄光をもう一度」ではなく、逆に明治の英雄たちが去ってしまった後、残されたひとびとがどう生きてゆくかを描いています。 無料部

          司馬遼太郎が描いた「共産主義のリベラルな闘士」