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https://bsky.app/profile/icchan0000.bsky.social 美術、読書、旅の記録など。

マガジン

  • 僕の好きな藝術家たち

    好きな藝術家について書きたいように書いてみるシリーズ。全12回。 vol.1 ジャクソン・ポロック vol.2 ニコラ・ド・スタール vol.3 ザオ・ウーキー vol.4 ジョルジョ・モランディ vol.5 塩田千春 vol.6 日高理恵子 vol.7 米田知子 vol.8 伊庭靖子 vol.9 宮永愛子 vol.10 野又穣 vol.11 ゲルハルト・リヒター vol.12 李禹煥

最近の記事

加藤周一『日本文学史序説』

文学史というよりは精神史・思想史的な本。文芸批評的なものを期待すると少しずれてしまうだろう。もっと大きな観点で、日本文化の歴史を描き出している。加藤周一の代表作という評価も当然の名著。 今回読み返してみて特に面白かったところを何点か書き留めておく。 日本文化に固有の出発点があるとして、しかし残された言葉(文学)は最古のものである万葉集や記紀にはすでに外国(主に中国大陸)の影響が深く影響している。第一章では、それらのテクスト(さらに風土記や)を丁寧に読み解いて、日本文化の固

    • 東寺 夜桜ライトアップ(金堂・講堂夜間特別拝観)

      珍しく妻に誘われて(というのも彼女は古刹や仏像には全く興味を持たない人だから。種を明かせば職場でチケットを貰ったから、ということだった。)昨秋に紅葉を観に夜間拝観へ訪れて、とても良かったので、この春の夜間拝観にも足を運んでみた。 ちょうど桜が満開で、ベストのタイミングでした。そのせいか人出もすごかったけれど。 夜間は宝物殿は閉まっているので、今度は昼間にゆっくり来てみたい。

      • 姫路グルメランド

        好天に恵まれた月末の週末、妻と姫路グルメランドへ行ってきました。 姫路城前の公園(大手前公園)で毎年春に開催されているイベントで、食にまつわる地元企業がブースを出して賑わいます。 例年は4月1週目の開催が今年は少し早くなって、お城の桜には少し早すぎたようです。来週末なら桜も見頃になってさらに良かったのにな。 それでも青空の下白いお城を眺めながら、焼き牡蠣と牡蠣のお好み焼き、おでんでランチ。楽しいひとときを過ごしました。

        • 三木美術館『神秘なる白と黒/懐かしの景色を訪ねて』

          姫路にある小さな私設美術館、三木美術館で企画展を観てきました。 『神秘なる白と黒』は、真っ白、真っ黒の焼物だけを集めた展覧会。企画の勝利と言いますか、非常にシンプルなコンセプトながら、それ故に極めてシャープに作品の姿が目に刺さります。 白い焼き物は三輪休雪や板谷波山などのものが出ていました。三輪休雪のあの白砂糖のようなモコモコした釉薬、キリリと引き締まった板谷波山の小さな香炉など白チームも素晴らしいのですが、何と言っても黒い陶器のダンディズム。渋い。格好良すぎて眩暈します

        加藤周一『日本文学史序説』

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        • 僕の好きな藝術家たち
          12本

        記事

          若竹七海『パラダイスガーデンの喪失』

          若竹七海の葉崎市シリーズ最新作。 一応コージーミステリ的な装いなんだけれども、若竹七海のことだから、甘いコーティングの中にとびきりビターな味わいが隠されているのはいつものこと。 今作も細かな伏線を貼りつつ滑らかな語り口で水準作ではあるけれど、出版社の惹句にあるような「最高傑作」とはさすがに言い過ぎ感。 最近の若竹作品は構成がやや複雑で、その辺りもリーダビリティをやや下げているように感じる。 もう少し構成を刈り込んだ短編のほうが読みやすいのではないかなあ。 とはいえ十

          若竹七海『パラダイスガーデンの喪失』

          『366日 世界の名建築 (366日の教養シリーズ)』磯達雄

          1ページに1つずつ、写真と解説で名建築を紹介する形式。 「思わず「すごい! 」と声を上げてしまう建築を集めました。」という自賛?は伊達ではなくて、写真見てるだけでも楽しめる。 ルネサンスごろの教会建築も少しあるけれど、ほとんどが近現代の建物で、建築技術の進化がもたらした奇観をたっぷり味わえます。 のんびりお茶とスイーツをお供に眺めたい一冊。誕生日や記念日の日付にどんな建築が紹介されてるかな?と開いたり、適当に開いたところを拾い読み、みたいな楽しみ方もできます。

          『366日 世界の名建築 (366日の教養シリーズ)』磯達雄

          ジャック・ケルアック『路上』

          https://amzn.to/3T3Ffnu 福田実の旧訳で。青山南の新訳で読むとまた印象は変わるのかもしれないけれど、読後の感想としては、彼らにとって旅とは、路とは何だったのだろう?という疑問。 物語の冒頭で、主人公はこう語る。 そうして彼らの旅が始まる。いかにもワクワクするオープニングだ。浜田省吾が と歌い、辻仁成が と歌った、そんな道を旅する物語の始まりだ。 『路上』は、希望に充ちた旅の物語だと、勝手にイメージを作り上げていた。 確かに前半はそういう雰囲

          ジャック・ケルアック『路上』

          オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』

          https://amzn.to/3T6YigV 新潮の福田恆存訳。出版社の梗概に“耽美と異端の一大交響曲”とあるけれど、少し僕の考える耽美とは趣が違うような。佐伯彰一が解説で指摘する以下の見方のほうがしっくりくる。 ドリアンが彷徨う背徳の世界が匂い立つように描かれてはいない一方で、自分で自分の罪を裁く倫理的なシーンがクライマックスになっているのだから。 面白いかつまらないか、といえば面白い小説ではあるのだけれど、あまり耽美だ背徳だというイメージを持って手に取ると、肩透か

          オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』

          『世界名詩集15 ベルトラン・ランボー・ロートレアモン』

          象徴詩はよくわからない。わからないのに、時々手を出して見る。やっぱりわからない。だけどまた読む。 そんなこと繰り返してばかりいる。ということはつまり、嫌いではない、ということなんだろうと思う。 抽象画を「よくわからない」という人に、「わかる、わからない、ではなくて、好きか嫌いか、ですよ」と反論?するのだけれど、それと同じように、象徴詩も、わかる、わからない、ではなく、好きか嫌いか、で受け止めればよいのだろう、と開き直っている。 よくわからない言葉の波の中で時折、はっと眼

          『世界名詩集15 ベルトラン・ランボー・ロートレアモン』

          『芭蕉紀行文集 付 嵯峨日記』中村俊定校注

          松尾芭蕉の紀行文を集めたもの、芭蕉といえば『奥の細道』で、あれはそれだけで一冊の本になるだけの分量があるのだけれど、それ以外の短い紀行文を集めたのが本書。 『奥の細道』は、細やかに旅先の情景やそこを訪れた芭蕉の心情などを記し、文章はよく彫琢されているのに対して、ここに収められたものは、古跡を巡る蘊蓄も少なく、構成もあまり練られておらず、全体にあっさりしている。 それでもところどころ歴史の無常や、人の世の儚さを落ち着いた視線で観察する芭蕉の批評眼は健在で、「笈の小文」のラス

          『芭蕉紀行文集 付 嵯峨日記』中村俊定校注

          『漱石俳句集』坪内稔典編

          漱石が子規に師事して俳句を詠んでいたことは有名だけれど、まだ作家として活動する以前、子規によって期待される俳人として取り上げられていたそうで、漱石は作家ではなく俳人としてまずは文壇デビューしたことになる。漱石にとって俳句は小説執筆の余技ではなくて、創作の原点だった。 初期作品の『猫』における諧謔や、『草枕』における趣味的世界は、俳句の世界から出発した漱石においては必然だったわけだ。 作家としての名前の大きさに比して、残念ながら俳人としてはその成果も名声もフェード・アウトし

          『漱石俳句集』坪内稔典編

          乙川優三郎『クニオ・バンプルーセン』

          一人の編集者の半生に寄せて、日本文学の美しさを高らかに謳い上げた傑作。 磨きに磨いた文章、極限まで贅を削ぎ落とした言葉で紡がれる物語は驚くほど豊穣で、読みながら何度も涙し心打たれる。 いつもの乙川優三郎ワールド全開で、充実した読後感。 しかしながら…以下は、穿ちすぎだったなと後年笑い飛ばせることを願って記すけれど、作中に充ちる死の気配の濃厚さが、気にかかる。 新潮社の『波』に寄せた一文も、どうにも引っかかってしまう。 乙川さんの健康状態が何か脅かされていたりしないこ

          乙川優三郎『クニオ・バンプルーセン』

          三木美術館『富士を見つめて・魯山人と織部』展

          FBで繋がっているネットのお友達が、茨城から広島遠征の途中に姫路に立ち寄ってくれるというので、ではお茶でもしましょうということで落ちあって、三木美術館にご案内した。 普段は一人でのんびり観ている美術館だけれど、今回は時間も限られている中でのご案内ということで、少し早足での観覧となりましたが、それでも富士を描いた絵画は目に楽しく、織部の焼き物も色も形も面白く、充実した時間となりました。奥田元宋や絹谷幸二など、多彩な作家の描く富士はどれも個性的で。 しかしやはり案内した知人に

          三木美術館『富士を見つめて・魯山人と織部』展

          乙川優三郎インタビュー(読売オンライン)

          乙川優三郎のインタビュー記事(全4回)が読売オンラインに掲載されたのでクリップ。 小説以外、エッセイや随筆などの文章を読んだことがない(おそらく一冊も刊行していない)作家なので、こうして自分自身について語るのは珍しいのでは。 高校時代は国語が苦手だった、というような話もある。読むのが遅くて問題文を読んでいるだけでテストの時間が終わってしまったそう。 文章のお手本は芝木好子というのはさもありなん。しかし、傍目には、乙川も柴木に負けない素晴らしい文章をものしているように思え

          乙川優三郎インタビュー(読売オンライン)

          『腐敗性物質』田村隆一

          荒地派の代表的存在の一人・田村隆一の自撰詩集。自撰詩集に『腐敗性物質』というタイトルを付けた詩人の意図は分からないけれど、この“腐敗性物質”という言葉の強烈なイメージ喚起力は、田村隆一の詩の魅力を見事に捉えていると思う。 解説の平出隆は、 “「腐敗性物質」という語…の指すところはどうやら、私たちの「肉体」のことではなく、むしろ「魂」のことらしい” と言うが、そしてそれは的を射ているんだけれど、僕はやはり、まず何よりも「腐敗性物質」であるしかない人間という、徹底した唯物主

          『腐敗性物質』田村隆一

          中之島美術館『モネ 連作の情景』展

          2500円という値付けに驚いたけれど、そういや東京で開催された時は週末は3000円、とかやった気が。今日は平日なので、大阪も休日は3000円なのかな。 美術展としてはかなり高目やと思うけど、それでもすごく混んでました。平日やというのに。熟年世代と、若い世代が半々くらいかな?さすがモネ、若者にも人気あるんやな。 しかし、ずっと手を繋いで鑑賞してる若いアベック(死後)はいい加減にして欲しい。羨ましすぎておじさん絵に集中できないぢゃないか。 20年くらい前、西洋美術館でモネの

          中之島美術館『モネ 連作の情景』展