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アクシデンタルな祖母
祖母が胃ろうになった。昨年の、秋口のことだった。
「私もお見舞いに行きたいけど、行かない方がいい?」
父に聞けば父は憔悴した顔を擦って一拍思考し、「うん、来ないほうがいい」と答えた。
「あのひと、顔変わっちゃったから。業が全部顔に出てる」
父の疲れた声を聞いて──私は「コイツ自分の母親が業の深い人間だってちゃんとわかってたんだな」と感動したのだった。
祖母の紹介をしよう。
中部地方の片田
ひとりで戦って生きているあなたへ、或いはとあるボクサーの話
「ナガノさんてK大卒でボクシング部だったんだって。アマチュアでチャンピオン獲ってるらしいよ」
母がキッチンの脚立に座って唐突にそう言ったのは、確か私が中学の頃だった。一年生の頃だったように思う。
私と妹はそれを聞いて「かっこいいーーっ」とはしゃいで、それ以来ナガノさんは私たちの間で『ボクサー』と呼称されることになる。
ボクサーは当時、父の経営する税理士事務所で勤めていた。
父のいちばん古い部下
頑張ることの何が悪い
『日本エッセイスト・クラブ賞』をご存知だろうか。
日本でも歴史が古く、数々の著名人が受賞をしているエッセイ・ノンフィクションジャンルの文学新人賞だ。
私は今年三月にAmazonから刊行した拙著『デンドロビウム・ファレノプシス』で、この賞に応募していた。
私が前の夫と交際を始め、結婚して、離婚するまでのDVの記録がこの本だ。
今までにも文学賞の公募に出したことはある。
ただ、私の今回の応募作はあま