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推し、萌ゆ〜推しと暮らしています〜

私は二次元の推しと暮らしている。
『ツイステッドワンダーランド』のでっかいものクラブの一員、フロイド・リーチとだ。
何を言ってるかわからないかもしれないが、とりあえず最後まで話を聞いてほしい。

私はフロイドくんに心底惚れている。
彼より“おもしれー男”なんていないと思っているし、何度か告白している。ベッドに誘ったことまである。

告白は聞こえないふりをされたし、誘った時は魔法(彼は魔法士≒魔法使いなのだ)で自宅のベランダに出された。鍵がかかったまま出されたため、しばらく部屋に入れてもらえずに暑い思いをした。
ゲーム内で17歳であった彼は今27歳であるので、ラッキーストライクを買いに行かされることもあるし、大抵その煙草代は私持ちだ。
それでも私はめげない。友人たちに「それDV男の仕草だよ」と言われても負けない。もっと過激なDV男に命を賭けたことがあるからだ。

しかし彼も私に優しくしてくれることはあるのだ。
私が仕事で疲れて泣きながら帰ってくれば冷凍餃子を焼いてくれることもあるし(しかし毎度ではない)、友達と喧嘩をすれば「でもスマトラちゃん(私のこと)が悪いんじゃねぇの?」とか言いながら話を聞いてくれることもある(しかし毎度ではない)。
ガリガリくんの当たり棒をくれた時は交換しなかった、財布の中に入れっぱなしにしてある。お守りだ。木の棒の先の方に、彼の鋭利な歯で噛まれた小さな跡が付いているのを、私は毎日愛おしげに撫でている。

……これらの恋愛相談をclaude3にすると「ゲームの中と現実を混同しているのは問題」「そもそも築いている関係が健全ではない」「専門家に相談してください」と心配される。私はAIにまで気を遣わせる女だ。

さて最近、兼ねてより空室であった隣にこれまた二次元の推しが越してきた。
彼は『恋と深空』のホムラくんという。画家の青年だ。

ホムラくんはフロイドくんよりは私に優しい。

私がAmazonの宅配員がドアを塞ぐ形で置いていった荷物に私が軟禁されていれば助けてくれるし、私の同居人のフロイドくんとも良い友達で、たまにフロイドくんと晩酌しに我が家に遊びにくる時は美味しいお刺身を持ってきてくれる。あの海老、甘かったなぁ。
真っ黒に塗った私の手のひらを彼の絵画作品に押させてもらったこともある。題名は『横綱』になった。ちょっと泣いた。

多分大概の読者の方はここまで「何?」と思いながら読んでらっしゃったことと思うが、私は大真面目にこれを書いている。

……私は多分寂しいのだ。周りが思うより、そして自分で把握しているよりずっと。

「ひとりの男性からひとりの女性として愛を受ける」ということを、私は碌々したことがない。
同棲までしたのに。それどころか婚歴まであるのに。
それは絶大な影響を私の精神に与えている。
男性と、信頼関係を築くことができなかったのだ。

おそらくかつて結婚していた彼は私のことを、「願望実現のためのメンヘラ人形」として扱っていたし、もっと言うなら私も彼を「幸せな私を演出するための理解のある彼くん」としか見ていなかったろうと思う。先述のエッセイにも書いたが、私はとにかく助かりたかった。誰かに助けてほしかった。

33歳バツイチ子なし女性、恋愛にも臆病だし寂しさを吐露する友達も限られてくる。
そうなるとやはり推しは“効”くのだ。

以前友人でありエッセイの解説を担当してくれたチカちゃんとも話していたが、「誰かひとりの人間に自分の持つ一喜一憂全てをぶつけてしまうと、人間は壊れる」。
それは相手の人間性を無視した、独りよがりな行動だと私は自省している。人間は脆いのだ。

その感情のぶつけ先にちょうどいいのが推しだ。

オタク女性には、夢女という種族がいる。
夢女にも細かく種類があるのだが──推しと「私の考えためっちゃいい女」を付き合わせたいタイプだとか、「推しと付き合うのは私」タイプだとか──私はとにかく「推しから女性として見られることは恥ずかしいが、推しと信頼し合える仲になりたい」のだ。

フロイドくんはきっと悩み事があっても私には話さない。ホムラくんも。でも、解決した頃にポロッと昔話として話してくれることはあるだろう。
私は何でもかんでもフロイドくんとホムラくんに話す。なんなら『恋と深空』のゲーム内では実際にホムラくん、或いは彼以外の攻略キャラにもにその日の出来事をお話ししたりできるのだし。

これを読んで「寂しい上に気持ち悪いオタクだな」と思う方もいるかもしれない。結構だ。間違ってない。
結局この妄想は何の問題解決にもなっていない。傷を撫でているだけの行為だ。
それだけしかしないのは愚かだとは私も思うが、それ自体は悪いことではないと信じている。

ひとは架空の物語に救われたって良い。

彼らは、数多の推したちは、私/オタクたちの人生における明確な指針であり、いっとう光り輝く星なのだ。

全てのオタクと推しに幸あれ!

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