杉山文野(すぎやま ふみの)

1981年東京都生まれ トランスジェンダー /NPO法人東京レインボープライド共同代表…

杉山文野(すぎやま ふみの)

1981年東京都生まれ トランスジェンダー /NPO法人東京レインボープライド共同代表理事 /公益社団法人日本フェンシング協会理事 /公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)理事 /渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員 / http://fuminos.com

マガジン

  • 連載小説『ヒゲとナプキン』

    • 39本

    心と体の性別が一致しない主人公イツキと、そのパートナーであるサトカを巡る物語。

記事一覧

自分の加害者性について考える

これまで、自身が日本社会におけるマイノリティのひとりとして、自分の属性から生じる被害者的側面を多く語ってきた。しかし、性のあり方以外の様々な課題に向き合う中で、…

トランスジェンダーに対するヘイトは男女格差が生み出している

3月16日、LGBT法案をめぐるトランスジェンダー・ヘイトに関する記者会見を行いました。そこでお話しした私のコメント全文を以下に掲載します。 ***** 皆さんこ…

東京レインボープライド2022 いよいよ開催!

***** ●東京レインボープライド2022開催概要 時間:4月22日(金) 13:00-18:00 4月23日(土) 11:00ー18:00 4月24日(日) 11:00ー18:00 開催場所:代々木公園イ…

年末のご挨拶 Season’s greeting

(English follows Japanese) 皆さま、今年も一年お世話になり本当にありがとうございました! 今年もあっという間の一年、心身ともに無事駆け抜けることができたことに…

What is "Fairness" in Sports? ~ Transgender Participation in Sports ~

Suppose you participate in a 100-meter race. "Ready. Set. Go!” You run as fast as possible but goaled in second place. First place was a runner wearing prost…

スポーツにおける「公平性」とは何か?  ~トランスジェンダーの競技参加から考える~

例えばあなたが100m走に参加したとします。 何がなんでも勝ちたい勝負。「よーいドン!」で、必死に走った結果は 2 位。1 位でゴールテープを切ったのは義足の選手でした…

Re: Letter from a Japanese Fencer Request of your support to LGBTQ Equality Act in the lead-up to Tokyo2020

October 6, 2020 Dear President Bach, I am so honored to have you receive this letter. I am Fumino Sugiyama, 39 year-old transgender man and a former member o…

第二子誕生のご報告

【第二子誕生のご報告】 12月1日(火)午前11時9分に第2子が2956gで誕生いたしました! 母子共に健康で、今のところ男の子です。笑 今回はコロナ禍であったことに加え、…

【TRP2020オンライン『#おうちでプライド』を終えて】

TRP2020オンライン『#おうちでプライド』は5月6日をもって無事に終了いたしました。中止を発表してからは苦しい日々が続きましたが、多くの皆さまにご協力いただき無事終え…

【心臓止まるかと思った話】

うちのパピコちゃん(彼女が妊娠中つわりがひどくてアイスのパピコしか食べられなかったときにつけたあだ名ww)がここ数日ウィルス性の胃腸炎で下痢と嘔吐の繰り返し、、、…

web連載小説『ヒゲとナプキン』を終えて

その訃報を知ったのは、僕が本を出してから3年たった頃だった。連日の仕事に疲れ果てて夜中に帰宅し、いつも通りメールボックスを開くとSのお母さんからメールが届いていた…

カミングアウト 〜小説「ヒゲとナプキン」に至るまで【その8】〜

(全文無料公開) カミングアウトは点ではなく線である。 当事者からすれば初めてのカミングアウトは恐怖でしかない。 相手に気持ち悪いと思われるのではないか、今まで…

100

なぜ切るのか、切らないのか 後編 〜小説「ヒゲとナプキン」に至るまで【その7】〜

全文無料公開 そんな僕が何故、子宮と卵巣の摘出はしないのか? その話をする前に日本の現状を前提条件として共有しておきたい。日本では2004年から施行された性同一性障…

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なぜ切るのか、切らないのか 前編 〜小説「ヒゲとナプキン」に至るまで【その6】〜

全文無料公開 おっぱいとサヨナラしたのは今から10年前、27歳のとき。タイにある病院で麻酔から目覚め平らになった胸を見たときには「元に戻ったー!!!!」と感激したの…

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初めての新宿二丁目と手術のこと 〜小説「ヒゲとナプキン」に至るまで【その5】〜

  (全文無料公開) 初めてFTMの人に会ったのは18歳のとき、新宿二丁目のお店だった。当時人気だった『トゥナイト2』という深夜番組でやっていたオナベバー特集に衝撃を…

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トランスジェンダー のトイレ問題について考える 〜小説「ヒゲとナプキン」に至るまで【その4】〜

 (全文無料公開) 世界を巡るバックパッカーでの旅から10年経った今、見える景色はかなり変わってきた。それはLGBTに対する認知度が底上げされたという社会の変化もある…

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自分の加害者性について考える

これまで、自身が日本社会におけるマイノリティのひとりとして、自分の属性から生じる被害者的側面を多く語ってきた。しかし、性のあり方以外の様々な課題に向き合う中で、自分の加害者としての側面を語らないのはフェアではないと思い直し、今回は改めて自分の加害者性について向き合うことにした。


「実は私も在日なんだよね」
大学生の時、バイト仲間にそう言われたことがある。僕が先にトランスジェンダーであること

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トランスジェンダーに対するヘイトは男女格差が生み出している

トランスジェンダーに対するヘイトは男女格差が生み出している

3月16日、LGBT法案をめぐるトランスジェンダー・ヘイトに関する記者会見を行いました。そこでお話しした私のコメント全文を以下に掲載します。

*****

皆さんこんにちは。杉山文野です。
今日はトランスジェンダー男性のいち当事者として、昨今のトランスジェンダー・ヘイトに関するお話しをさせていただきます。

まず私の個人的な体験からお話しさせてください。
物心ついた時から性自認は男性の私ですが、

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東京レインボープライド2022 いよいよ開催!

東京レインボープライド2022 いよいよ開催!

*****

●東京レインボープライド2022開催概要

時間:4月22日(金) 13:00-18:00
4月23日(土) 11:00ー18:00
4月24日(日) 11:00ー18:00

開催場所:代々木公園イベント広場&野外ステージ

参加費:入場無料
※会場が混雑した場合にのみ入場規制を行いますが、基本は会場にいらしていただければどなたでもご参加いただけます。

URL: https://

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年末のご挨拶 Season’s greeting

年末のご挨拶 Season’s greeting

(English follows Japanese)

皆さま、今年も一年お世話になり本当にありがとうございました!
今年もあっという間の一年、心身ともに無事駆け抜けることができたことにまずは感謝申し上げたいと思います。

2021の振り返りを少しだけ。
まず今年は2冊の本を出すことができました。
・「3人で親になってみた ママとパパ、ときどきゴンちゃん」
(毎日新聞出版)
・「子どもを育てられる

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What is "Fairness" in Sports?  
~ Transgender Participation in Sports ~

What is "Fairness" in Sports? ~ Transgender Participation in Sports ~

Suppose you participate in a 100-meter race.
"Ready. Set. Go!” You run as fast as possible but goaled in second place.
First place was a runner wearing prosthetic leg. 
Do you feel this is unfair?

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スポーツにおける「公平性」とは何か?  ~トランスジェンダーの競技参加から考える~

スポーツにおける「公平性」とは何か?  ~トランスジェンダーの競技参加から考える~

例えばあなたが100m走に参加したとします。
何がなんでも勝ちたい勝負。「よーいドン!」で、必死に走った結果は 2 位。1 位でゴールテープを切ったのは義足の選手でした。
このときあなたは「不公平だ」と感じますか?

その昔、義足の選手が健常者よりも遅かった時代には称賛の対象でしたが、健常者より早くなった途端に不公平だと指摘されるようになりました。しかし、装具をつけることがズルいと言うのであれ

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Re: Letter from a Japanese Fencer Request of your support to LGBTQ Equality Act in the lead-up to Tokyo2020

October 6, 2020

Dear President Bach,

I am so honored to have you receive this letter.

I am Fumino Sugiyama, 39 year-old transgender man and a former member of Japan women’s national fencing team. I

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第二子誕生のご報告

第二子誕生のご報告

【第二子誕生のご報告】

12月1日(火)午前11時9分に第2子が2956gで誕生いたしました!
母子共に健康で、今のところ男の子です。笑

今回はコロナ禍であったことに加え、切迫早産での入院などもあり皆様には大変ご心配をおかけいたしました。あたたかいお言葉やサポートをいただいたおかげで、無事に出産することができました。

上の子は早いもので2歳となりました。絶賛赤ちゃん返り中でなかなか大変ではあ

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【TRP2020オンライン『#おうちでプライド』を終えて】

【TRP2020オンライン『#おうちでプライド』を終えて】

TRP2020オンライン『#おうちでプライド』は5月6日をもって無事に終了いたしました。中止を発表してからは苦しい日々が続きましたが、多くの皆さまにご協力いただき無事終えることができました。心より感謝申し上げます。

今回は個人としても団体としても、本当に貴重な経験となりました。
このような機会はなかなかないと思いますので、イベント中止の決断に至るまでの心境やプロセス、オンラインイベントへ切り替え

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【心臓止まるかと思った話】

【心臓止まるかと思った話】

うちのパピコちゃん(彼女が妊娠中つわりがひどくてアイスのパピコしか食べられなかったときにつけたあだ名ww)がここ数日ウィルス性の胃腸炎で下痢と嘔吐の繰り返し、、、と思ったら今朝方白目むいて痙攣おこして病院に救急搬送。。。結論もう大丈夫なんですが、マジ心臓止まるかと思いました😭

頭パニックで手は震え110番なのか119番なのかもわからなくなりそうでしたが、自分に「落ち着け、落ち着け」と言い聞か

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web連載小説『ヒゲとナプキン』を終えて

web連載小説『ヒゲとナプキン』を終えて

その訃報を知ったのは、僕が本を出してから3年たった頃だった。連日の仕事に疲れ果てて夜中に帰宅し、いつも通りメールボックスを開くとSのお母さんからメールが届いていた。
福岡で出会ったSは、元自衛官。僕の本を読んで勇気をもらったと、一度でいいから会って話をしたいと連絡をもらい、福岡まで会いにいったことがある。
Sに限らず、僕は本の出版後にメッセージをくれた当事者に会うため、2ヶ月間かけて日本全国を旅し

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カミングアウト  〜小説「ヒゲとナプキン」に至るまで【その8】〜

カミングアウト 〜小説「ヒゲとナプキン」に至るまで【その8】〜

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カミングアウトは点ではなく線である。

当事者からすれば初めてのカミングアウトは恐怖でしかない。
相手に気持ち悪いと思われるのではないか、今までのような関係性が保てないのではないか、、、様々な不安に押しつぶされそうになりながら、相手にいつどうやって伝えるか、何度も何度も頭の中でシミレーションを行い、その日を迎える。

かたや、カミングアウトを受ける側は寝耳に水、といったケースも

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なぜ切るのか、切らないのか 後編
〜小説「ヒゲとナプキン」に至るまで【その7】〜

なぜ切るのか、切らないのか 後編 〜小説「ヒゲとナプキン」に至るまで【その7】〜

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そんな僕が何故、子宮と卵巣の摘出はしないのか?
その話をする前に日本の現状を前提条件として共有しておきたい。日本では2004年から施行された性同一性障害特例法によって、ある一定の条件を満たすと戸籍上の性の変更が可能となり、現在までに約8000名が戸籍の性別変更をしている。その条件は以下となっている。

一  二十歳以上であること。
二  現に婚姻をしていないこと。
三  現に未成年

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なぜ切るのか、切らないのか 前編
〜小説「ヒゲとナプキン」に至るまで【その6】〜

なぜ切るのか、切らないのか 前編 〜小説「ヒゲとナプキン」に至るまで【その6】〜

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おっぱいとサヨナラしたのは今から10年前、27歳のとき。タイにある病院で麻酔から目覚め平らになった胸を見たときには「元に戻ったー!!!!」と感激したのを覚えている。傷の痛みなど全く気にならないほど、心の傷が癒えた瞬間だった。

「何でフミノはそうまでして男になりたいの?」とよく聞かれていたが、別に変わりたかったわけではなく、「元に戻る」という感覚で手術を考えていた。とは言え、もちろ

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初めての新宿二丁目と手術のこと  〜小説「ヒゲとナプキン」に至るまで【その5】〜

初めての新宿二丁目と手術のこと 〜小説「ヒゲとナプキン」に至るまで【その5】〜

 

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初めてFTMの人に会ったのは18歳のとき、新宿二丁目のお店だった。当時人気だった『トゥナイト2』という深夜番組でやっていたオナベバー特集に衝撃を受けた僕は、いてもたってもいられずお店を訪れたのだった。

雑居ビルの4階にあった小さなお店、ピンク色の重たい鉄扉を開けたときのドキドキ感は今でも忘れられない。扉を開けると、そこにはテレビに映っていた「おなべ」の方がカウンターに立

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トランスジェンダー のトイレ問題について考える 〜小説「ヒゲとナプキン」に至るまで【その4】〜

トランスジェンダー のトイレ問題について考える 〜小説「ヒゲとナプキン」に至るまで【その4】〜

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世界を巡るバックパッカーでの旅から10年経った今、見える景色はかなり変わってきた。それはLGBTに対する認知度が底上げされたという社会の変化もあるだろうし、手術やホルモン投与、また様々な経験で心身ともに変化した僕自身にもあるだろう。

しかし、そんな今でも聞かれることがある。

「杉山さんってどっちのトイレ使っているんですか?」と。

この髭面で女性用のトイレに入っていけると

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