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【TRP2020オンライン『#おうちでプライド』を終えて】

TRP2020オンライン『#おうちでプライド』は5月6日をもって無事に終了いたしました。中止を発表してからは苦しい日々が続きましたが、多くの皆さまにご協力いただき無事終えることができました。心より感謝申し上げます。

今回は個人としても団体としても、本当に貴重な経験となりました。
このような機会はなかなかないと思いますので、イベント中止の決断に至るまでの心境やプロセス、オンラインイベントへ切り替えて実施した経緯やその背景などを備忘録も兼ねここに記しておきたいと思います。団体としてというより僕個人の視点からみたここ数ヶ月、久々に長文です。


2月後半、コロナウィルス感染拡大が他人事から少しずつ自分ごと化しつつあるころでした。
〈あれ? これちょっとまずいんじゃない?〉
〈いや、とはいえ全然大丈夫っしょ。〉
個人的にはまだそんな感覚のころでしたが、TRPの公式HPではこのようなお知らせを出しました。

2月26日https://tokyorainbowpride.com/news/notice/17174/

これはイベント開催可否に関して関係各所よりTRPへの問い合わせが増え、個別対応が難しくなってきたからでした。運営メンバーで話し合い、TRPとしてはイベント開催ちょうど1ヶ月前となる3月25日に開催可否に関する発表を行うという結論にいたり、そのお知らせを公式ホームページで行いました。正直この頃はまだ、なんだかんだ言ってもイベントが中止になることはないだろうと高を括っていました。
そこから中止を決断するまで、なかなかに苦しい3週間となりました。

〈やる、やらない〉
〈やる、やらない、、、〉
〈やっぱりやろう!〉
〈いや、やっぱり無理だよ、、、、、〉

日に日に変わる情勢とにらめっこしながら、開催可否に関してあーでもない、こーでもないと運営メンバーと話しては、自分の中でも行ったり来たり。
2月26日にお知らせを出した後も、とにかく開催に向けて全力で準備を続けました。しかし、、、情勢は日に日に悪くなる一方。

「やっぱり中止にしたほうがいいんじゃないの?」
「いや、こんなときだからこそやろうよ!」

メンバーみんなと、そして自分自身とも、この会話をどれだけ繰り返したかわかりません。
全く先が見えない中で、どのような決断をすればいいのか?
NPOという性質もあり、TRPではいくら代表といえどトップダウンで物事を決めたことは一度もありませんでした。また「少数派の意見を大事に!」と言いながら、多数決で物事を決めるわけにもいきません。

TRPとしてはこれまでどんなに時間がかかっても何か議題があれば運営メンバーみんなが納得するまでとことん話し合って決めてきました。このプロセスを踏むとスピード感は出ないので、周囲からはもどかしく思われることも多々ありましたが、それでもこのように一歩ずつ、ひとつずつ、しっかり丁寧に向き合って答えを出してきたからこその今でもあります。

しかし、今回ばかりはどれだけ話しても答えがでない、、、
タイムリミットは刻々と迫ってくる、、、

心臓をぎゅっと握りつぶされているような、そんな苦しい日々が続きました。
とはいえ逃げるわけにはいきません。とにかく今の自分にできることは何かを考え、できうる限りの情報収集をしました。
この間に心がけたのは、なるべく幅広い意見を聞くことと、誰かの意見や感情に流されないよう、エビデンスや事実を元にドライに考えること。ロジカルとエモーショナルのバランスを意識しながら情報収集をしていました。

ありがたいことにここ数年は特に、G1やUSJLPなど国内外問わず様々なリーダーシッププログラムに参加させていただいていたこともあり、様々な分野のリーダーの方と交流させていただいています。なので、そういった方々の中でも特に僕が信頼しているリーダーの方々がこのタイミングでどのような判断を下しどう行動しているか、どんな情報を発信しているかなどを可能な限り見聞きしていました。

そのような過程で少しずつ見えてきたのは、有事においては「決めない」ということが何よりものリスクになるということでした。有事と平時では全く違います。正解を選ぶのではなく、決めた答えを正解にする、これは僕がこれまでも大事にしてきた考えかたです。加えて有事では「早く」決めることが大事だと理解し「決める」ということだけをまずは決めました。

では決めるときに何を一番大事にするか? 感染症という初めて経験する過度なストレスで見失いかけていましたが、とっちらかった頭を冷静に整理すれば明確です。自分たちの主張を無理やり通すことよりも、みんなのハッピーを優先するということでした。

強行開催することでTRPだけが批判を受けるのであれば致し方ありませんが、場合によっては「LGBTQのせいでコロナ感染が拡大した」と、属性で批判を受けてしまう恐れもあり、それでは取り返しもつきません。

TRP2020のテーマは「Your happiness is my happiness 〜あなたの幸せはわたしの幸せ〜」です。
(テーマに込めた想いはこちらからご確認ください→ https://tokyorainbowpride.com/trp2020theme_statement/ )。

自分たちがイベントを中止にしたくないからと周りに迷惑をかけてまで突き進むより、早い段階で中止を決めて、傷を最小限に抑えることがみんなにとっての幸せなのではないか。TRPやLGBTQコミュニティがこれまで社会と築きあげてきた信頼関係を何よりも大切にしたい、そう考えると頭の中がクリアになっていきました。

また現実的な金銭面の課題もありました。
二丁目のゲイバーを一軒ずつ回って数万円のスポンサー費用を募って開催してきたパレードも、今では年間予算約1億円にまでなりました。様々なシュミレーションを行ったところ、開催するか、中止にするか、その判断が10日程度前後するだけで、数千万円という単位で損失額が変わってくるという試算がでました。

これはきっとうちだけではなく、中止の決定が遅くなれば遅くなるほどTRPにご協賛・ご協力いただく皆さまにとっても同じく大きな負担がかかってしまうと考えました。(スケジュールを考えると、この時期に一気に制作物や発注が増え、キャンセルできないものが多発するからです)

以上のようなことから、今後も継続的にパレードを開催していくためにも今年は中止の判断をしようと決め、共同代表のイージーこと山田に相談し、メンバーみんなに伝えました。そして予定よりも約一週間早い3月19日に中止の発表を行いました。
https://tokyorainbowpride.com/news/notice/17416/

中止を決断するまでの時間はかなり苦しかったのですが、中止を決め発表したらすっと気持ちが楽になりました。もちろん断腸の想いではありましたが、決めるまでが苦しすぎたからかもしれません。そしてそこからぷつッと糸が切れてしまったような、空白の二週間がありました。

中止を決めたときにも、
「それでもGWには何かしらは企画して、できる範囲でイベントをやろう!」
とみんなで話していました。4月の後半にもなれば中止したことを後悔する程度には情勢が回復しているかもしれない。そんな淡い期待があったからです。20万人とまではいかなくても、何かしらの形で企画ができるのではないか?

そんな甘い考えは一蹴されていきます。そこから拍車をかけて状況は悪化を辿り、企画どころか来月の自分のことすら考えられない、、、そこからピタッとメンバー同士での連絡も止まってしまったのです。

例年、3月後半というのは少しスマホから離れただけで、あっという間に3ケタの未読ラインが溜まってしまうほど連絡が飛び交う時期です。こんなに携帯が鳴らない年度末は初めてでした。

僕の個人的な話をすればパレードは中止、講演会は軒並みキャンセル、店は2店舗ともクローズという三重苦。3月、4月の収入はほぼゼロとなり、家賃と社員の支払いの資金繰りをどうするかも考えなければいけませんでした。保育園に行けない1歳半の子どもの面倒を見ながら融資の書類を作成する、そんな日々。普段は子どもとゆっくり過ごす時間などないので、このような時間は幸せなことだとは思いつつも余裕などは一切ありませんでした。

こんな時こそ自分がやるべきことは何なのか?
何か発信をしなくてはと考えようにも考えられない思考停止状態。

ここで大きな励みになったのは皆さんからいただいた言葉でした。
「何かできることがあったら何でも言ってね。」
「TRPが何かやるならどんな企画でも手伝います!いや、やりましょう!」

期待に応えられない情けなさやもどかしさはありましたが、それでもこのような言葉によって切れそうになった糸を皆さんに繋ぎ止めていただきました。
絶対「何か」やらなければ、こんな時だからこそ自分たちにできることがあるはずだと。

中止の発表後初めてミーティングを開いたのは4月に入ってからでした。
「何かやりたいよね。でもこの状況じゃ何もできないよね。。。」
「オンラインでできることだけでも何かやろうよ。」
「でも何していいんだろう、、、」
気持ちはあっても何をしていいかは相変わらず見えず、進展がないまま、4月7日を迎えました。いよいよ緊急事態宣言の発令です。

「あーあ、とうとう出ちゃったかぁ」

しかし、この緊急事態宣言が逆によかったのかもしれないと今となっては感じています。これによって完全にオフラインでの企画の可能性が絶たれたからです。毎年笑顔で埋め尽くされる代々木公園の会場のイメージから脱却できず、何を検討してもそのイメージに引きずられて新しいアイディアを生み出せなかったことに気づきました。しかし完全にオンラインのみと決まれば、シンプルでした。

TRPがこれまで毎年開催してきた通り、プライドパレード、フェスティバル、ウィークイベントの全てをオンライン化するだけです。

的を絞ったことによって、逆にアイディアが出るようになり、一気にイメージが出来上がりました。数日間でオンライン開催の大きな枠組みをつくり、4月14日に発表を行いました。
https://tokyorainbowpride.com/news/notice/17493/

そしてそこから4月25日までの約2週間で全てのコンテンツを作りあげました。
今回ご出演・ご協力いただいた皆さんもそのタイミングでのお声かけとなり、ありえないほど直前の無茶振りオファーにも関わらず、皆さんにご快諾いただけたからこそ実現にまでこぎつけられたことには感謝しかありません。

結果的に二日間のトークライブとオンラインパレードは合計で延べ約44万人の方にご視聴・ご参加いただくことができました。初めてのことだらけで、例年にも増して舞台裏はバタバタで戦場のようでしたが、、、それでもなんとか無事に終えることができました。

ご協力いただいた皆様には感謝してもしきれません。また、これまでの長い活動の積み重ねあってこその今年の結果です。活動の先輩方にも感謝を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。
そして、手前味噌ではありますが、一言だけ言わせてください。TRPメンバー最高です。それぞれのプロ意識の高さ、そしてチームワーク、底力を感じました。


ここまで追い込まれなかったらオンラインでパレードなんて考えもしなかったはずです。しかしやらざるを得なくなりオンライン開催にしたことで「東京までは行けないけど、オンラインだから参加できました!」「カミングアウトしていないので、会場まで行くのは不安だったけど、今回初めて参加できて嬉しかったです!」「病院のベッドから楽しませてもらいました😊」などなどなど、全国、そして海外からもたくさんのメッセージをいただきました。これまでご参加いただいていた方はもちろん、ご参加いただけていなかった多くの方々にもご参加いただくことができたのは大きな学びと発見につながりました。今後の可能性が一気に広がったように感じています。

改めてこの1ヶ月間を振り返ると、精神と時の部屋のような(古いかな、、😅)濃密な時間で、もう遥か昔のことのようにも感じています。本当に貴重な経験をさせていただきました。
今回の経験を糧として、しっかりと今後につなげていきたいと思います。是非みなさんのご意見、感想をいただけたら嬉しいです。

まだしばらくは苦しい状況が続くことも予想されますが、どんな時も前を向いて、次に繋げていきましょう!

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1981年東京都生まれ早稲田大学大学院教育学研究科卒 フェンシング元女子日本代表トランスジェンダーNPO法人東京レインボープライド共同代表理事NPO法人ハートをつなごう学校代表渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員http://fuminos.com
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