トランスジェンダー のトイレ問題について考える 〜小説「ヒゲとナプキン」に至るまで【その4】〜
(全文無料公開)
世界を巡るバックパッカーでの旅から10年経った今、見える景色はかなり変わってきた。それはLGBTに対する認知度が底上げされたという社会の変化もあるだろうし、手術やホルモン投与、また様々な経験で心身ともに変化した僕自身にもあるだろう。
しかし、そんな今でも聞かれることがある。
「杉山さんってどっちのトイレ使っているんですか?」と。
この髭面で女性用のトイレに入っていけるとでも思っているのだろうか。
基本的には男性用のトイレを利用しているが、立って用を足すことはできないので個室を利用している。男性トイレの個室は数が限られている上に、個室内でスマホをいじる人が多くなった昨今では、埋まっている率が一気に高まり外出先でのトイレは本当に一苦労だ。(トランスに限らずトイレリテラシーをもっと上げていこうよ、、、)
今よりもっともっと大変だったのは見た目が男女どちらとも見えないときだった。ドランスジェンダーにはその特有の“性別の移行期”というものがある。僕も女子高生をやっていたころからヒゲが生えるおじさんになるまでには様々な段階があったのだが、かわいい男の子なのかボーイッシュな女の子なのか、どっちなの?という移行途中の頃が一番苦労した。
女性用のトイレに入れば入ったで、
「あんた!こっちじゃないでしょ!」
とおばちゃんに怒られ、
「すみません。これでも一応女子なんです。。。」
と、トイレで謝った回数は数知れず。かといって男性用のトイレに入れるかと言うと、知っている人に会ってしまっては気まずいな、、、ということで、極力外ではトイレに行かないようにしていた。これによって膀胱炎になってしまったり、中には尿意を催さないようよう外出先では徹底して水分を取らないトランスの当事者もおり、健康問題として切実な課題である。
男女で二分されたピクトグラムを目の前にするだけで苦しかったことを思い出す。トイレの度に「おまえは男と女、一体どっちなんだ?」そんな問いを突きつけられているようで、どちらにもあてはまることのできない僕は、トイレに行くという行為そのものが大きな苦痛であった。
裁判も起きているほどだ。経済産業省の職員で男性から女性に移行されたトランスジェンダーの方が、女性用のトイレの使用を認められないということで訴訟を起こし現在も係争中である。何故使ってはいけないのか?理由は戸籍上の性の変更ができていないからというものだが、そんなことを言ったら戸籍上女子の僕も同じである。もし僕が男性用のトイレの利用を禁止されたら、一体僕はどうすればよいのだろうか。僕だってトイレが年に一度くらいのものであるならば我慢もするだろうが、日々の生理現象ですら制限されてしまえば穏やかではいられないだろう。
難しい問題であるとは思う。
何をもって「男」「女」というのか。例えば髭が生えたら男なのかというと、見た目に関しては主観が入るためになかなか線引きできない、では戸籍でと言われれば日本は戸籍上の性の変更が非常に厳しい現実がある。そのため僕のように見た目(実生活)と書類上の性別の表記がちぐはぐになりトラブルになるケースが後を立たない。
そんな中で、一当事者として声を大にして言いたいのは、、、
トイレくらい行きたい時に行かせてくれよ!!!!!!!
それに尽きる。
「誰でもトイレを作ったほうがいいのでしょうか?」
「ピクトグラムにレインボーを入れたほうがいいのでしょうか?」
「いや、そんなことしたら余計当事者が行きづらくなるのではないか、、、」
(そんな議論している間に漏れちゃうぜ、、、涙)
政治的な課題を定義したいわけでもない。問題を起こしたいわけでもない。トイレくらい行きたい時に行かせてくれよ、それ以上でも以下でもないのだ。
「トランスだと言い張って変なおじさんが入ってきたらどうするんですか!?」
という質問もよく受けるが、変なおじさんとトランスを同じ土俵で語らないでほしい。トイレは用をたすところ。トイレ内において用を足すこと以外を行い他者に迷惑をかける者に対しては、性別に関わらず処罰すべきだろう。
裁判を起こさなければトイレすら行けない、これが日本のトランスジェンダーの現状だ。道のりはまだ長い。
小説「ヒゲとナプキン」 #1 https://note.mu/h_ototake/n/nd428808e05bd
小説「ヒゲとナプキン」 #2 https://note.mu/h_ototake/n/ne593fea2f70b
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