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毎日読書メモ

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2023年1月の記事一覧

『キツネ潰し―誰も覚えていない、奇妙で残酷で間抜けなスポーツ』(毎日読書メモ(461))

『キツネ潰し―誰も覚えていない、奇妙で残酷で間抜けなスポーツ』(毎日読書メモ(461))

エドワード・ブルック=ヒッチング『キツネ潰しー誰も覚えていない、奇妙で残酷で間抜けなスポーツ』(片山美佳子訳、日経ナショナルジオグラフィック)を読んだ。10月に新聞の書評欄で読んで(ここ)、面白そうだな、と思っていたのだが、年末に書評子(トミヤマユキコさん)が、今年の3冊、という欄で再度取り上げていらしたのに肩を押され、取り掛かる。
古代ギリシアから現代に至るまでの、さまざまな時代に、人々が思い付

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桐野夏生『燕は戻ってこない』(毎日読書メモ(460))

桐野夏生『燕は戻ってこない』(毎日読書メモ(460))

桐野夏生『燕は戻ってこない』(集英社)を読んだ。テーマは代理母(サロゲート・マザー)。
日本国内では代理出産は認められていない。法的な規制はないが、社団法人 日本産科婦人科学会の会告(平成15年)に、「生殖補助医療への関与、また代理出産への斡旋を行ってはならない」という文言があり、代理出産を行うことは出来ない。妻の子宮を摘出してしまっていたり、不育症だったり、夫婦間の子どもを妻が出産できない場合、

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直木賞受賞おめでとうございます! 小川哲『君のクイズ』(毎日読書メモ(459))

直木賞受賞おめでとうございます! 小川哲『君のクイズ』(毎日読書メモ(459))

昨年末、小川哲『地図と拳』(集英社)が直木賞にノミネートされたあたりから、小川哲さんの名前を聞く機会が一気に増えた。多くの書評家が、昨年の収穫として、小川さんの著作をあげるようになり、まずは『君のクイズ』(朝日新聞出版)を読んでみた。一気読み。

クイズを究める人たちの物語。であると同時にミステリー。
テレビの『Q-1グランプリ』第1回大会の決勝戦で、僕、三島玲央は、7問先勝の早押しクイズで先行し

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ルイ・ヴィトンというブランド名を初めて知った時(毎日読書メモ(458))

ルイ・ヴィトンというブランド名を初めて知った時(毎日読書メモ(458))

知り合いが最近松本清張の話をしているのを読んでいて、その人が書いていることとは全然関係なく、そういえばわたしがルイ・ヴィトンというブランド名を知ったのは松本清張の小説を読んでいた時だったな、と思い出した。
松本清張『迷走地図』(上下・新潮文庫、現在もKindleで読める)は、1982年2月から1983年5月にかけて朝日新聞で連載していた小説で、永田町の権力闘争を泥臭く描いている。その後映画やテレビ

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ポディマハッタヤさんとカルナナンダさん(毎日読書メモ(457))

ポディマハッタヤさんとカルナナンダさん(毎日読書メモ(457))

日本で一番よく知られているスリランカ人は、ポディマハッタヤさんらしい。

子どもが小学校2年生の頃、図書館で見かけた「いっぽんの鉛筆の向こうに」(谷川俊太郎文 /坂井信彦写真 /堀内誠一絵 ・福音館書店)という絵本に、わたしがはまって、子どもたちの学年4クラス全部で朗読したのだった。ポディマハッタヤさんは、スリランカの鉱山で黒鉛を掘っている人。アメリカでインセンス・シダーという木を切っている人、ト

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柚木麻子『らんたん』、朝ドラみたいな、明治~昭和の光景(毎日読書メモ(456))

柚木麻子『らんたん』、朝ドラみたいな、明治~昭和の光景(毎日読書メモ(456))

世田谷にある恵泉女学園の創始者、河井道の生涯を描いた柚木麻子の小説『らんたん』(小学館)、かなり前に買ってあったのだが、買ったことで油断してなかなか読めずにいたのをようやく読了。
作者、柚木麻子自身が恵泉の出身で、恩師一色義子から聞いた話も含め、膨大な資料にあたって書いた、「史実に基づくフィクション」。
わたし自身が恵泉女学園とあまり馴染みがなかったこともあり、この本の主人公である河井道、道とシス

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本屋さんでガレット・デ・ロワ(毎日読書メモ(455))

本屋さんでガレット・デ・ロワ(毎日読書メモ(455))

仕事帰りに、丸の内オアゾの丸善に入ったら、入口にGallette des Roisって書いてある。この半月、出先でガレット・デ・ロワを探し続けていて、とうとう、本屋さんで幻影を見るようになっちやったのかと思ったら、一昨年刊行された絵本『王様のお菓子』(石井睦美文、くらはしれい絵、世界文化社)の原画展示+グッズ販売だった。本物のガレット・デ・ロワも売って欲しかったところね…、と思ったら1月6日~8日

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梯久美子『散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道 』(毎日読書メモ(454))

梯久美子『散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道 』(毎日読書メモ(454))

正月に実家に帰っているときに、手持ちの本を読み終わって、父の書架にあった梯久美子『散るぞ悲しきー硫黄島総指揮官・栗林忠道』(新潮文庫)を読んでみた。梯久美子のノンフィクションライターとしてのデビュー作であり、梯はこの作品で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している。2005年の作品。
冒頭に、栗林忠道を慕い、硫黄島にも付いていきたい、と志願したが、軍人ではなく軍属だったため、同行を許されなかった貞岡

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有川ひろ『イマジン?』(毎日読書メモ(453))

有川ひろ『イマジン?』(毎日読書メモ(453))

有川ひろ『イマジン?』(幻冬舎)読了。有川ひろの1ジャンルであるお仕事小説。今回のお仕事は映像制作会社。5つの章で、映画やテレビドラマの制作現場を描く。
主人公良井良助は、故郷の別府で、映画「ゴジラVSスペースゴジラ」に別府の風景が映ったのを見て、知っている光景が映画の舞台となる=自分と物語は繋がることが出来るのだ、ということに気づき、映像制作の現場を目指すようになる。福岡の映像専門学校を出て、東

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窪美澄『夜に星を放つ』(毎日読書メモ(452))

窪美澄『夜に星を放つ』(毎日読書メモ(452))

昨年夏に直木賞を受賞した窪美澄『夜に星を放つ』(文藝春秋)、受賞直後に単行本買ってあったのをずっと寝かせてしまってあったのを、ようやく読んだ。切ない、5つの短編は、それぞれに夜空に浮かぶ星や衛星を狂言回しとした物語。松倉香子さんの装丁、章扉の星座の絵が、ネタバレにまではならない物語の予感を与えてくれる。

「真夜中のアボカド」:コロナ下の閉塞感を縷々語る。コロナ禍になる前に双子の妹の弓ちゃんを亡く

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昨年一番読まれた記事(毎日読書メモ(451))

昨年一番読まれた記事(毎日読書メモ(451))

新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
家族とおせちを食べたり、ガレット・デ・ロワの探求をしたりしているうちに、正月休みは終わりました。またぼちぼち本を読んだり感想を書いたりモードに入ります。入れるかな。入ろう。

画像は日本橋三越のパン屋さんJohanのウィンドウのガレット・デ・ロワです。本文とは関係ないですが、フェーヴが可愛かったので、つい。

年末に、Note

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