梯久美子

梯久美子さんの「今月の必読書」…『帝国軍人 公文書、私文書、オーラルヒストリーからみる』

軍人は互いをかばいあう高級官僚にほかならない

大和ミュージアム(呉市)館長の戸髙一成氏と、昨年話題を呼んだベストセラー『独ソ戦』の著者である大木毅氏による対談本である。

昭和50年代から6十年代にかけて、旧軍人――将官、佐官クラスだった人たちがまだ存命だった――からじかに話を聞いた経験を持つ2人が、帝国軍人とはいったい何だったのかを、具体的なエピソードや史料をもとに縦横に語る。

日本海軍史研

もっとみる
ありがとうございます!
12

宮沢賢治をめぐる読書-『銀河鉄道の父』、『夢見る帝国図書館』など

ここしばらく気になっていた本を数冊読んだら、なんだか宮沢賢治に包囲されたような気持ち。
梯久美子『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』(角川書店)については既に感想を書いたが、何人かの文人のサハリン訪問の足跡を作者自らたどる中、一番比重が置かれていたのが、妹トシを亡くした直後の宮沢賢治の樺太旅行(当時勤めていた農学校の生徒の就職を斡旋してもらうための旅だったが、その過程でトシを追悼する詩を書き

もっとみる
是非他の投稿も読んで下さいね!
6

読書日記(6冊目)『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』梯 久美子(KADOKAWA)

今日で8月も終わり、遠出もせず自宅に籠もって読書三昧な日々でした。こういう時は辺境もの?に限ると思い、こちらを読了です。

いくつかの書評で取り上げられていて、「Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」2020年にノミネートをされているようです。

ちなみにこの「Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」ですが、どういった性質のものなのか少し分かりにくいと感じるのは僕

もっとみる

サハリン島-チェーホフ、宮沢賢治、林芙美子、村上春樹、そして梯久美子『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』(角川書店)

ノンフィクション作家梯久美子が「本の旅人」と「小説 野生時代」で連載していた「サガレン紀行」を単行本化した『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』を読んだ。
子どもの頃、地図帳を開くと、日本のちょっと上に細長くてかなり大きい、何もなさそうな島が浮かんでいた。樺太(カラフト)と書いてあった。そこはソ連(当時)の一部らしい(厳密にはちょっと違うらしいことを、この本を読んで知った)。ロシア語だとサハリ

もっとみる
読んで下さってありがとう♪♪♪
2

梯久美子さんの「今月の必読書」…『漱石と鉄道』

なぜ文豪は、汽車を憎みつつ愛したのか

夏目漱石の「草枕」にこんな一節がある。

〈人は汽車へ乗るという。余は積み込まれるという。人は汽車で行くという。余は運搬されるという。汽車ほど個性を軽甫したものはない〉

だが漱石が汽車嫌いだったと思うのは早計のようだ。漱石の小説に、汽車や市電がしばしば登場することには気づいていたが、本書を読むと、漱石がいかに頻繁に汽車旅をしていたかにあらためて驚く。

もっとみる
ありがとうございます!
8

梯久美子さんの「今月の必読書」…『女たちのシベリア抑留』

なぜ、年端も行かない少女が―

〈野も山も実りの9月19日 北斗七星ソ領で眺む〉

 阪東秀子という名の少女がシベリアに抑留された日に詠んだ歌である。彼女はこのとき15歳だった。

 抑留? 年端も行かない少女が? と疑問に思う前に、女性がシベリアに抑留されていたこと自体に驚く人もいるだろう。

 シベリアに抑留された女性たちの存在を私が知ったのは、2014年にNHKで放送されたドキュメンタリーに

もっとみる
ありがとうございます!
6

【全文公開】普遍性を持つ戦争の記録 梯久美子さんの「わたしのベスト3」

ノンフィクション作家の梯久美子さんが、令和に読み継ぎたい名著3冊を紹介します。

 時代が移っても継承すべきもののひとつに、先の戦争の記憶がある。きわめて私的な視点から戦争を描きつつ、ある普遍性を獲得している作品を選んだ。

『望郷と海』は、関東軍のハルビン特務機関に配属され、戦後、8年間にわたってシベリアに抑留された詩人・石原吉郎の評論集。収録作の「ペシミストの勇気について」で石原がペシミストと

もっとみる
ありがとうございます!
1

梯久美子さんの「今月の必読書」…『熱源』

読み手の心に静かな熱を生む

 あのブロニスワフ・ピウスツキを描く小説があらわれたとは! 本書の刊行を知ったとき、驚きと期待、そして、正直に言えばいくばくかの不安が心の中でせめぎあった。ブロニスワフは実在の人物で、帝政ロシア末期の1887年に皇帝暗殺未遂事件に連座し、政治犯としてサハリンに送られたポーランド人である。1905年に日本が日露戦争に勝利し、島の南半分を領有するまで、ロシアはこの島を流刑

もっとみる
ありがとうございます!
6

桐野夏生『デンジャラス』(中央公論新社)

2018年6月の読書記録。

桐野夏生『デンジャラス』(中央公論新社)読んだ。谷崎潤一郎と三人目の妻松子、その妹重子『細雪』の雪子のモデル)、松子の息子の嫁千萬子、の物語。重子の視点から、兄と姉の夫婦の愛情の揺るぎなさ、自分の薄幸さ、兄の寵愛が義理の息子の嫁に移っていく焦燥感を描いていて、これは小説だからすべてがすべて事実ではないだろうけれど、書くことの業、書かれることの業が執拗に追求されていて、

もっとみる
是非他の投稿も読んで下さいね!
1

昨年面白かった本

2018年は本を100冊ちょうど読みました。今年はもう少し沢山読めるといいな、と思っていますが、どちらかというと集中力を研ぎ澄まして、きちんとテキストを読み取り味わう読書を目指した方がいいような気もしています。

舞台「豊饒の海」を見る前に三島由紀夫『春の雪』『奔馬』を再読(『暁の寺』『天人五衰』もこれから読みたい)、舞台「メタルマクベス」disc1を見たら、あ、原作当たっておくべきだった、とdi

もっとみる
是非他の投稿も読んで下さいね!
12