読んだ本

『原民喜 死と愛と孤独の肖像』
梯久美子 岩波書店(2018)

原民喜のことは あまり知らなかった (『羊と鋼の森』で初めて知った)。厚かましいかもしれないが、読んでいて、彼に親近感を感じた。

彼の、死を恐れる姿に。 (私も一時期死というものへの漠然とした恐怖がまとわりついて離れなくなったことがあった。)
彼の、何をするにもぎこちなくなる姿に。
一人でありながら、他者を求める姿に。

私の「死」への恐怖は、日常を繰り返すなかでしぜんと忘却のなかに送り込まれた。たぶん、まともに「死」に向き合っていたらしんどいからだ。

しかし原民喜は、おそらくもっと繊細で敏感で鋭く、死の恐怖がいつも近くにあって、恐怖であると同時に、身近な存在でもあったのだろうと思う。

著者が述べていたように、作家の自殺を美化するわけではないし、原が恐怖を抱いていたことを美化するわけでもない。だが、死者の声に耳を傾け、嘆き、それを言葉の形にする彼の生き方、死によって生きる原民喜の姿に、不思議と惹き付けられた。

彼の代表作と言われている『夏の花』、恥ずかしながら読んだことがないので、また読んでみようと思う。



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