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善き読者でありたい。素敵な本の素敵なところを綴る「読書感想」をアップしています(この頃は月5-10本、朝の更新が多め)。「発達障害のある我が子をより愛するために読む」というテーマでも読書しています。完全な趣味、非営利。お問い合わせはプロフィール欄からお願い致します。

マガジン

  • 読書熊録

    素敵な本に出会って得た学び、喜びを文章にまとめています

  • 発達障害の我が子をより愛するために読む

    発達障害のある我が子を今以上に愛するため、読み進めている本を記録します。ASDやADHDなど発達障害の他、身体・知的障害、難病、福祉、幅広い分野を学んでいきます。

  • 読書ノート

    読んでいる本、読んだ本、読みたい本についてつれづれ書いている日記のようなもの

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この本に出会えてよかった2023

今年、強く感じたことは「読むことは光になる」ということでした。 冬が終わる前、幼い我が子に発達障害がある可能性が分かりました。人生で味わった過去の戸惑いとは、比べようもないほどの戸惑い、「この先どうなるのか」と、まさに光を失うような状態が続きました。そこから、一冊二冊。障害や、当事者家族の本を開くごとに、足元が照らされていきました。再び歩み出せました。 本を読む目が変わりました。病や困難に直面した人の語りが身に沁みる。あらゆる物語に、我が子の姿や、我が子の人生のヒントにな

    • 声を伴う本ーミニ読書感想『絵本の力』(河合隼雄さん他)

      精神科医河合隼雄さんと、絵本編集者松居直さん、ノンフィクションライター柳田邦男さんが絵本を巡って懇談した『絵本の力』(岩波書店、2001年6月18日初版発行)が面白かったです。子の発達障害を診てくれている主治医から薦められた、絵本の読み聞かせ。その意味を深めたいと思って手に取りました。 絵本の最大の特徴は、黙読するものでは(基本的には)ないということ。親が子に、声に出して読み聞かせる想定であること。 河合隼雄さんは、このことに関連して、「絵本には音がある」と語る。 絵本

      • 2024年6月に読んだ本リスト

        【6月】・『AIを生んだ100のSF』、大澤博隆さん監修、ハヤカワ新書 ・『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』、平熱さん、東洋館出版社 ・『724の世界2023』、吉本ばななさん、DR by VALUE BOOKS ・『新編 普通をだれも教えてくれない』、鷲田清一さん、ちくま学芸文庫 ・『あいにくあんたのためじゃない』、柚木麻子さん、新潮社 ・『絵本の力』、河合隼雄さん他、岩波書店 ・『発達障害のある子どもと周囲との関係性を支援する』、野口晃菜さん・陶貴行さん編著、

        • 人生を潰されないための魔法の言葉ーミニ読書感想『あいにくあんたのためじゃない』(柚木麻子さん)

          柚木麻子さんの短編集『あいにくあんたのためじゃない』(2024年3月20日初版発行、新潮社)が、最高の物語でした。読めてよかった。物語の魅力は、タイトルに全て込められている。あいにくあんたのだじゃない。自分の人生の手綱を、どうでもいい他人に譲らない。私の人生は、私のためだ。 最もお気に入りは、フロントを飾った『めんや 評論家おことわり』。過去のブログで、客や店内を勝手に撮影、アップしたことが炎上したラーメンブロガー。そのことで超人気店に「出禁」をくらって悶々としていたとこ

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        この本に出会えてよかった2023

        • 声を伴う本ーミニ読書感想『絵本の力』(河合隼雄さん他)

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          哲学者の思考の断片ーミニ読書感想『新編 普通をだれも教えてくれない』(鷲田清一さん)

          哲学者・鷲田清一さんの『新編 普通をだれも教えてくれない』(ちくま学芸文庫、2010年2月10日初版発行)を面白く読みました。90年代、00年代に哲学者が世界をどう見ていたか。思考の断片に触れ、メタファーの使い方を味わうことができます。 タイトルに惹かれて手に取りましたが、一冊まるまる普通を考える本というよりは、まさに散文、エッセーの詰め合わせでした。京都在住の著者にとって90年代といえばやはり、阪神大震災と神戸連続児童殺傷事件だったようで、それらを巡ってぐるぐると、思考

          哲学者の思考の断片ーミニ読書感想『新編 普通をだれも教えてくれない』(鷲田清一さん)

          支援のあんドーナツをつくるーミニ読書感想『発達障害のある子どもと周囲との関係性を支援する』(野口晃菜さん・陶貴行さん編著)

          野口晃菜さん・陶貴行さん編著『発達障害のある子どもと周囲との関係性を支援する』(中央法規、2020年7月10日初版発行)が、実際の子育て(家庭内外の療育)を考えるにあたってとても参考になりました。明確な指針と、豊富なケーススタディが紹介されています。 「はじめに」でまず胸を打たれます。編著者のお一人は、発達障害児「だけ」が変わることを求められやすい支援の現実に疑問を呈する。 これは親としても感じる。自分もそうしてしまう。定型発達者のコミュニケーションを「正解」として、それ

          支援のあんドーナツをつくるーミニ読書感想『発達障害のある子どもと周囲との関係性を支援する』(野口晃菜さん・陶貴行さん編著)

          日記に隠れた物語の片鱗ーミニ読書感想『724の世界2023』(吉本ばななさん)

          吉本ばななさんの『724の世界2023』(DR by VALUE BOOKS、2024年6月1日初版発行)を面白く読みました。国民的作家による、普通の日記。その普通さを徹底的に追求しているように感じました。普通の中にすごみが宿る。普通の日記がこれほど分厚いのかと驚きました。 724の世界とは、7月24日生まれの著者が見る世界。365日毎日の一コマを記録したのが本書です。訪れた店名や、一緒に食事を囲んだ仲間のあだ名。それがそのまま書かれていて、まさに著者の机に置かれた日記帳を

          日記に隠れた物語の片鱗ーミニ読書感想『724の世界2023』(吉本ばななさん)

          全人類に有効な特別支援教育の知恵ー『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』(平熱さん)

          特別支援学校教員の平熱さんの著者『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』(東洋館出版社、2024年3月14日初版発行)が^学びになりました。サクッと読めてタメになる。「特別支援教育は全人類に有効です」と平熱さんが断言する理由がよく分かる。 いったい何が役に立つというのか。それは「分けると分かる」ということ。タイトルが「むずかしい」と「むつかしい」(これは著者の造語)を分けているように、さまざまな物事を分けていくと、理解がクリアになるという話です。 たとえば、「できた」

          全人類に有効な特別支援教育の知恵ー『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』(平熱さん)

          2024年上半期に読めてよかった本10冊

          2024年上半期に読んだ本の中から、特に胸に残った10冊をまとめました。 ①『水車小屋のネネ』津村記久子さんの小説。ネグレクト気味な親元を飛び出した姉妹の半生を追いかける、大河小説と言って良い重厚さ。『本の雑誌』の2023年度ベストに選ばれたのを知り、遅ればせながら24年初めに読みました。 何も持たない姉妹は、たくさんの大人の善意に救われて、どうにかこうにか歩いていく。そして成長して大人になった姉妹は、別の誰かに善意をバトンパスしていく。 自分もまた、誰かの善意で出来て

          2024年上半期に読めてよかった本10冊

          科学者はSFをどう読むか?ーミニ読書感想『AIを生んだ100のSF』(大澤博隆さん監修)

          早川書房の新書レーベル・ハヤカワ新書から出た『AIを生んだ100のSF』(大澤博隆さん監修、2024年4月25日初版発行)が面白かったです。さまざまな分野の科学者が、SF作品をどう読んでいるかが分かる本です。 流体力学が専門の保江かな子さんは、SFの中に「自分が生きるかもしれない未来」を垣間見る。 SFをあり得ない未来としてではなく、現在と地続きにあり得る未来としてみる。そして「その未来に生きたい」と考える人の価値観を想像する。 気になっていたけど、読んでいないSFの名

          科学者はSFをどう読むか?ーミニ読書感想『AIを生んだ100のSF』(大澤博隆さん監修)

          『君が手にするはずだった黄金について』を真似た読書リスト

          毎月、読んだ本のリストをこのnoteに残しています。感想も何もなく、ただタイトル、著作者、出版社を羅列したもの。 なぜこんなことをしようと思ったのかといえば、小川哲さんの『君が手にするはずだった黄金について』という小説で、主人公の小説家が同じ取り組みをしていたからです。 引用後段で出てくる、「一人で粛々と本を読み、そこで得た知識や感情を何かに活かすこともなく、ひたすら内側に溜めこんでいた」という主人公の姿に、妙に惹かれました。そしてなんだか、自分も真似てみようと思い立った

          『君が手にするはずだった黄金について』を真似た読書リスト

          支援者は探偵であれーミニ読書感想『自閉もうひとつの見方』(バリー・M・プリザントさん&トム・フィールズーマイヤーさん)

          バリー・M・プリザントさん&トム・フィールズーマイヤーさんの『自閉 もうひとつの見方 これが私だと思えるように』(長崎勤さん監訳、福村出版、2024年5月10日初版発行)が、ASD(自閉スペクトラム症)の子を育てる親として深い学びになりました。もうひとつの見方とは、人としての尊厳を何より重視する見方。治すとか、普通にするとかではなくて、その人がその人らしくあれる道を模索する考え方でした。 著者のプリザントさんは、長年ASD者を支援し、中には幼少時に支援した人がもう高齢者

          支援者は探偵であれーミニ読書感想『自閉もうひとつの見方』(バリー・M・プリザントさん&トム・フィールズーマイヤーさん)

          2024年5月に読んだ本リスト

          【5月】・『ことば、身体、学び』、為末大さん・今井むつみさん、扶桑社新書 ・『他者といる技法』、奥村隆さん、ちくま学芸文庫 ・『成瀬は天下を取りにいく』、宮島未奈さん、新潮社 ・『学びとは何か』、今井むつみさん、岩波新書 ・『利他・ケア・傷の倫理学』、近内悠太さん、晶文社 ・『自閉症スペクトラムの精神病理』、内海健さん、医学書院 ・『娘が母を殺すには?』、三宅香帆さん、PLANETS ・『ハーモニー(新版)』、伊藤計劃さん、ハヤカワ文庫 ・『贈与経済2.0』、荒谷大輔さん、翔

          2024年5月に読んだ本リスト

          自分の靴を脱ぐーミニ読書感想『他者の靴を履く』(ブレイディみかこさん)

          ブレイディみかこさんの『他者の靴を履く』(文春文庫、2024年5月10日初版発行)が学びになりました。一冊まるまるエンパシーについて語った本。和訳困難なこの単語を、「他者の靴を履く」というメタファーで考えていきます。 英語では、エンパシーとシンパシーは区別され、さらにエンパシーの定義も多様だといいます。日本語ではエンパシーとシンパシーも「共感」の字が当てはまりそうで(強いて言えばシンパシーは同情)、さらにエンパシーにいろんな意味があると言ってもそのニュアンスを一語で説明する

          自分の靴を脱ぐーミニ読書感想『他者の靴を履く』(ブレイディみかこさん)

          分からないで済む世界ーミニ読書感想『ワンダフル・ライフ』(丸山正樹さん)

          丸山正樹さんの『ワンダフル・ライフ』(光文社文庫、2024年1月20日初版発行)が胸に残りました。ある事故で、頸髄損傷の重度障害が残った妻を介助・介護する男性を軸に展開するストーリー。重い障害を物語の材料ではなく、主題(テーマ)として正面から捉えた作品だと感じました。 発達障害のある子を育てる親として、本作にはリアリティを感じました。それは、障害というものを間近で見てきた人のリアリティ。「単行本時のあとがき」によると、作者は登場人物と同様、頸椎損傷の障害がある家族と生活をさ

          分からないで済む世界ーミニ読書感想『ワンダフル・ライフ』(丸山正樹さん)

          「中古本を買っていいのか問題」への読書猿さんの回答から学ぶ

          新刊本を買わず中古本を買うことは、著者・作者や出版社にダメージを与える「悪い行為」なのではないか?というモヤモヤを抱いていました(今も解消しきってはいない)。この「中古本を買っていいのか問題」に対して、『独学大全』などで知られる読書猿さんが回答され、それが納得感のある考え方だったので、記録しておきます。 質問投稿サービス「マシュマロ」で、学生さんから読書猿さんに寄せられた質問。「作家への印税や、書店の売り上げ」といった経済的側面から、本を中古で買うこと、図書館を利用すること

          「中古本を買っていいのか問題」への読書猿さんの回答から学ぶ