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この本に出会えてよかった2023
今年、強く感じたことは「読むことは光になる」ということでした。
冬が終わる前、幼い我が子に発達障害がある可能性が分かりました。人生で味わった過去の戸惑いとは、比べようもないほどの戸惑い、「この先どうなるのか」と、まさに光を失うような状態が続きました。そこから、一冊二冊。障害や、当事者家族の本を開くごとに、足元が照らされていきました。再び歩み出せました。
本を読む目が変わりました。病や困難に直面
2024年4月に読んだ本リスト
【4月】・『その可能性はすでに考えた』、井上真偽さん、講談社文庫
・『学ぶことは、とびこえること』、ベル・フックスさん、ちくま学芸文庫
・『自閉症感覚』、テンプル・グランディンさん、NHK出版
・『いつかたこぶねになる日』、小津夜景さん、新潮文庫
・『死にたいって誰かに話したかった』、南綾子さん、双葉文庫
・『訂正する力』、東浩紀さん、朝日新書
・『中央線をゆく、大人の町歩き』、鈴木信子さん、河出
人生がどうしようもなく変わってしまったときにどう生きる?ーミニ読書感想『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』(谷川嘉浩さん)
哲学者・谷川嘉浩さんの『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』(ちくまプリマー新書、2024年4月10日初版発行)が、学びになりました。衝動とは、自分でもコントロールできない、人生の針路を変えてしまうエネルギーのこと。これは人間内部から起こるモチベーションとは必ずしも一致しなくて、外部からやってくるものでもある。タイトルはポジティブですが、私はこれは、事故やトラブル、予期せぬ人生の転機に「それでも
もっとみる定型発達者に自閉症者の何が分かるのかーミニ読書感想『自閉症の僕が跳びはねる理由』(東田直樹さん)
重度自閉症で会話が難しいなか、文字盤やパソコンによるコミュニケーション方法で発信を続ける東田直樹さんの『自閉症の僕が跳びはねる理由』(角川文庫、2016年6月25日初版発行)が、衝撃的でした。執筆当時13歳。「話せない」ということで顧みられなかった、内なる心、豊かな言葉。まっすぐに読者に届けてくれています。
私が買ったもので42刷。ASD(自閉スペクトラム症)当事者の本がこれだけ読まれているとい
すこし不思議でシリアスで不思議―ミニ読書感想『冬に子供が生まれる』(佐藤正午さん)
佐藤正午さんの最新作『冬に子供が生まれる』(小学館、2024年2月4日初版発行)は、佐藤作品らしさ全開、佐藤作品ど真ん中の物語でした。SFをサイエンス・フィクションではなく「すこし・不思議」の略だと解釈したのは藤子・F・不二雄さんだったか。佐藤作品もまさにすこし・不思議で、かつ、シリアスで不思議(SF)なのが良さだなと思います。
「今年の冬、彼女はおまえの子供を産む」(p5)。
本編の1ページ
孤独につながるーミニ読書感想『つながる読書』(小池陽慈さん)
予備校で現代文を教える小池陽慈さんが編者となった『つながる読書』(ちくまプリマー新書、2024年3月10日初版発行)が面白かったです。副題は『10代に推したいこの一冊』。小池さんとつながりのある研究者やエッセイストらが、若者に薦める渾身の一冊をプレゼンするという内容です。その熱量は、10代をとうに過ぎたアラフォーにも響きました。
紹介される本は十人十色。だけど、プレゼンターたちには本を愛する気持
読みたかったのは私だけではなかったーミニ読書感想『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆さん)
書評家・三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書、2024年4月22日初版発行)が面白かったです。これほど心に刺さるタイトルもありません。ほんとに、なぜ?なぜ仕事を一生懸命やって、こんなに頑張っているのに、大好きな本を読めないのだろう。本書は、本好きにとって切実な問いに、真摯に向き合ってくれる。悩む私と同じように向き合ってくれるから勇気が湧く。
「そんなの、仕事で疲れる
AUT VIAM INVENIAM AUT FACIAMーミニ読書感想『世界はラテン語でできている』(ラテン語さん)
ラテン語さんの『世界はラテン語でできている』(2024年1月15日初版発行、SB新書)が、シンプルに面白かったです。世界史、政治、宗教、エンタメ…さまざまな分野に今も根付き、数々の言葉の語源になっているラテン語。その魅力を次々披露してくれる、豆知識・トリビアの本です。気軽に読めて、確実に「へ〜」と驚ける。
特に興味深かったのは、世界史のさまざまな場面で登場するラテン語でした。世界史好きには刺さる
「聞けてよかった」が不可欠ーミニ読書感想『死にたいって誰かに話したかった』(南綾子さん)
南綾子さんの『死にたいって誰かに話したかった』(双葉文庫、2023年1月15日初版発行)が、かなりの名作でした。タイトルにギョッとするかもしれませんが、この作品は奥深く力強い。生きづらさと、話すこと・聞くことについての物語です。
それぞれの事情で生きづらさを抱える主人公たちが、ひょんなことから「生きづらさを克服しようの会」(通称生きづら会)を結成するというのがあらすじ。最初は、何をやってもうまく
羽のように雪のように砂糖菓子のようにーミニ読書感想『いつかたこぶねになる日』(小津夜景さん)
なんとも不思議な本に出会いました。俳人・小津夜景さんの『いつかたこぶねになる日』(新潮文庫、2023年11月1日初版発行)。内容を説明すれば、本書は漢詩を紹介するエッセイ。でもそれだけでは捉えられない読書世界がある。羽のように軽く、雪のように白い。あるいは砂糖菓子のように甘く、でもすぐ消えていく。何かのジャンルに当てはめることが、どうにも勿体無い一冊でした。
著者は俳人で、フランスのニーズに住ん
攻略法という発想ーミニ読書感想『自閉症感覚』(テンプル・グランディンさん)
ASD(自閉スペクトラム症)当事者で、研究者のテンプル・グランディンさんの『自閉症感覚』(中尾ゆかりさん訳、NHK出版、2010年4月10日初版発行)が学びになりました。15年近く前の本ですが、いまだに版を重ね、現在も書店の棚に挿されていました。タイトル通り、ASD者として「どう感じてきたか」がたくさん盛り込まれている。
ASDは、抽象的概念の理解に困難さがある人がいるとされます。著者もその一人
声を聞くために学ぶーミニ読書感想『学ぶことは、とびこえること』(ベル・フックスさん)
人種差別の課題やフェミニズムに取り組んだ研究者ベル・フックスさんの『学ぶことは、とびこえること』(里美実さん監訳、朴和美さん、堀田碧さん、吉原令子さん訳、ちくま学芸文庫2023年5月10日初版発行)が学びになりました。特にフェミニズムについて、黒人女性であるベルさんは、それが白人女性のためのフェミニズムになっていないか批判的思考を追求した。周縁化される声を、無効化される声を聞くための、学びの方法を
もっとみる2024年3月に読んだ本リスト
・『自閉症スペクトラムとは何か』、千住淳さん、ちくま新書
・『八月の御所グラウンド』、万城目学さん、文藝春秋
・『散歩哲学』、島田雅彦さん、ハヤカワ新書
・『疲労社会』、ビョンチョル・ハンさん、花伝社
・『人間はどこまで家畜か』、熊代亨さん、ハヤカワ新書
・『門』、夏目漱石、角川文庫
・『日本人は、どんな肉を喰ってきたのか?』、田中康弘さん、ヤマケイ文庫
・『野生のしっそう』、猪瀬浩平さん、ミシマ