読書熊

善き読者でありたい。素敵な本の素敵なところを綴る「読書感想」をアップしています(この頃…

読書熊

善き読者でありたい。素敵な本の素敵なところを綴る「読書感想」をアップしています(この頃は月5-10本、朝の更新が多め)。「発達障害のある我が子をより愛するために読む」というテーマでも読書しています。完全な趣味、非営利。お問い合わせはプロフィール欄からお願い致します。

マガジン

  • 読書熊録

    素敵な本に出会って得た学び、喜びを文章にまとめています

  • 発達障害の我が子をより愛するために読む

    発達障害のある我が子を今以上に愛するため、読み進めている本を記録します。ASDやADHDなど発達障害の他、身体・知的障害、難病、福祉、幅広い分野を学んでいきます。

  • 読書ノート

    読んでいる本、読んだ本、読みたい本についてつれづれ書いている日記のようなもの

記事一覧

固定された記事

この本に出会えてよかった2023

今年、強く感じたことは「読むことは光になる」ということでした。 冬が終わる前、幼い我が子に発達障害がある可能性が分かりました。人生で味わった過去の戸惑いとは、比…

読書熊
7か月前
38

声を伴う本ーミニ読書感想『絵本の力』(河合隼雄さん他)

精神科医河合隼雄さんと、絵本編集者松居直さん、ノンフィクションライター柳田邦男さんが絵本を巡って懇談した『絵本の力』(岩波書店、2001年6月18日初版発行)が面白か…

読書熊
5時間前
11

2024年6月に読んだ本リスト

【6月】・『AIを生んだ100のSF』、大澤博隆さん監修、ハヤカワ新書 ・『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』、平熱さん、東洋館出版社 ・『724の世界2023』、吉本…

読書熊
6日前
14

人生を潰されないための魔法の言葉ーミニ読書感想『あいにくあんたのためじゃない』(柚木麻子さん)

柚木麻子さんの短編集『あいにくあんたのためじゃない』(2024年3月20日初版発行、新潮社)が、最高の物語でした。読めてよかった。物語の魅力は、タイトルに全て込められ…

読書熊
13日前
14

哲学者の思考の断片ーミニ読書感想『新編 普通をだれも教えてくれない』(鷲田清一さん)

哲学者・鷲田清一さんの『新編 普通をだれも教えてくれない』(ちくま学芸文庫、2010年2月10日初版発行)を面白く読みました。90年代、00年代に哲学者が世界をどう見てい…

読書熊
2週間前
14

支援のあんドーナツをつくるーミニ読書感想『発達障害のある子どもと周囲との関係性を支援する』(野口晃菜さん・陶貴行さん編著…

野口晃菜さん・陶貴行さん編著『発達障害のある子どもと周囲との関係性を支援する』(中央法規、2020年7月10日初版発行)が、実際の子育て(家庭内外の療育)を考えるにあ…

読書熊
3週間前
18

日記に隠れた物語の片鱗ーミニ読書感想『724の世界2023』(吉本ばななさん)

吉本ばななさんの『724の世界2023』(DR by VALUE BOOKS、2024年6月1日初版発行)を面白く読みました。国民的作家による、普通の日記。その普通さを徹底的に追求しているよ…

読書熊
3週間前
12

全人類に有効な特別支援教育の知恵ー『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』(平熱さん)

特別支援学校教員の平熱さんの著者『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』(東洋館出版社、2024年3月14日初版発行)が^学びになりました。サクッと読めてタメになる…

読書熊
4週間前
13

2024年上半期に読めてよかった本10冊

2024年上半期に読んだ本の中から、特に胸に残った10冊をまとめました。 ①『水車小屋のネネ』津村記久子さんの小説。ネグレクト気味な親元を飛び出した姉妹の半生を追いか…

読書熊
4週間前
27

科学者はSFをどう読むか?ーミニ読書感想『AIを生んだ100のSF』(大澤博隆さん監修)

早川書房の新書レーベル・ハヤカワ新書から出た『AIを生んだ100のSF』(大澤博隆さん監修、2024年4月25日初版発行)が面白かったです。さまざまな分野の科学者が、SF作品を…

読書熊
1か月前
17

『君が手にするはずだった黄金について』を真似た読書リスト

毎月、読んだ本のリストをこのnoteに残しています。感想も何もなく、ただタイトル、著作者、出版社を羅列したもの。 なぜこんなことをしようと思ったのかといえば、小川哲…

読書熊
1か月前
12

支援者は探偵であれーミニ読書感想『自閉もうひとつの見方』(バリー・M・プリザントさん&トム・フィールズーマイヤーさん)

バリー・M・プリザントさん&トム・フィールズーマイヤーさんの『自閉 もうひとつの見方 これが私だと思えるように』(長崎勤さん監訳、福村出版、2024年5月10日初版発行…

読書熊
1か月前
19

2024年5月に読んだ本リスト

【5月】・『ことば、身体、学び』、為末大さん・今井むつみさん、扶桑社新書 ・『他者といる技法』、奥村隆さん、ちくま学芸文庫 ・『成瀬は天下を取りにいく』、宮島未奈…

読書熊
1か月前
18

自分の靴を脱ぐーミニ読書感想『他者の靴を履く』(ブレイディみかこさん)

ブレイディみかこさんの『他者の靴を履く』(文春文庫、2024年5月10日初版発行)が学びになりました。一冊まるまるエンパシーについて語った本。和訳困難なこの単語を、「…

読書熊
1か月前
17

分からないで済む世界ーミニ読書感想『ワンダフル・ライフ』(丸山正樹さん)

丸山正樹さんの『ワンダフル・ライフ』(光文社文庫、2024年1月20日初版発行)が胸に残りました。ある事故で、頸髄損傷の重度障害が残った妻を介助・介護する男性を軸に展…

読書熊
1か月前
11

「中古本を買っていいのか問題」への読書猿さんの回答から学ぶ

新刊本を買わず中古本を買うことは、著者・作者や出版社にダメージを与える「悪い行為」なのではないか?というモヤモヤを抱いていました(今も解消しきってはいない)。こ…

読書熊
1か月前
24
この本に出会えてよかった2023

この本に出会えてよかった2023

今年、強く感じたことは「読むことは光になる」ということでした。

冬が終わる前、幼い我が子に発達障害がある可能性が分かりました。人生で味わった過去の戸惑いとは、比べようもないほどの戸惑い、「この先どうなるのか」と、まさに光を失うような状態が続きました。そこから、一冊二冊。障害や、当事者家族の本を開くごとに、足元が照らされていきました。再び歩み出せました。

本を読む目が変わりました。病や困難に直面

もっとみる
声を伴う本ーミニ読書感想『絵本の力』(河合隼雄さん他)

声を伴う本ーミニ読書感想『絵本の力』(河合隼雄さん他)

精神科医河合隼雄さんと、絵本編集者松居直さん、ノンフィクションライター柳田邦男さんが絵本を巡って懇談した『絵本の力』(岩波書店、2001年6月18日初版発行)が面白かったです。子の発達障害を診てくれている主治医から薦められた、絵本の読み聞かせ。その意味を深めたいと思って手に取りました。

絵本の最大の特徴は、黙読するものでは(基本的には)ないということ。親が子に、声に出して読み聞かせる想定であるこ

もっとみる

2024年6月に読んだ本リスト

【6月】・『AIを生んだ100のSF』、大澤博隆さん監修、ハヤカワ新書
・『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』、平熱さん、東洋館出版社
・『724の世界2023』、吉本ばななさん、DR by VALUE BOOKS
・『新編 普通をだれも教えてくれない』、鷲田清一さん、ちくま学芸文庫
・『あいにくあんたのためじゃない』、柚木麻子さん、新潮社
・『絵本の力』、河合隼雄さん他、岩波書店
・『

もっとみる
人生を潰されないための魔法の言葉ーミニ読書感想『あいにくあんたのためじゃない』(柚木麻子さん)

人生を潰されないための魔法の言葉ーミニ読書感想『あいにくあんたのためじゃない』(柚木麻子さん)

柚木麻子さんの短編集『あいにくあんたのためじゃない』(2024年3月20日初版発行、新潮社)が、最高の物語でした。読めてよかった。物語の魅力は、タイトルに全て込められている。あいにくあんたのだじゃない。自分の人生の手綱を、どうでもいい他人に譲らない。私の人生は、私のためだ。

最もお気に入りは、フロントを飾った『めんや 評論家おことわり』。過去のブログで、客や店内を勝手に撮影、アップしたことが炎

もっとみる
哲学者の思考の断片ーミニ読書感想『新編  普通をだれも教えてくれない』(鷲田清一さん)

哲学者の思考の断片ーミニ読書感想『新編 普通をだれも教えてくれない』(鷲田清一さん)

哲学者・鷲田清一さんの『新編 普通をだれも教えてくれない』(ちくま学芸文庫、2010年2月10日初版発行)を面白く読みました。90年代、00年代に哲学者が世界をどう見ていたか。思考の断片に触れ、メタファーの使い方を味わうことができます。

タイトルに惹かれて手に取りましたが、一冊まるまる普通を考える本というよりは、まさに散文、エッセーの詰め合わせでした。京都在住の著者にとって90年代といえばやは

もっとみる
支援のあんドーナツをつくるーミニ読書感想『発達障害のある子どもと周囲との関係性を支援する』(野口晃菜さん・陶貴行さん編著)

支援のあんドーナツをつくるーミニ読書感想『発達障害のある子どもと周囲との関係性を支援する』(野口晃菜さん・陶貴行さん編著)

野口晃菜さん・陶貴行さん編著『発達障害のある子どもと周囲との関係性を支援する』(中央法規、2020年7月10日初版発行)が、実際の子育て(家庭内外の療育)を考えるにあたってとても参考になりました。明確な指針と、豊富なケーススタディが紹介されています。

「はじめに」でまず胸を打たれます。編著者のお一人は、発達障害児「だけ」が変わることを求められやすい支援の現実に疑問を呈する。

これは親としても感

もっとみる
日記に隠れた物語の片鱗ーミニ読書感想『724の世界2023』(吉本ばななさん)

日記に隠れた物語の片鱗ーミニ読書感想『724の世界2023』(吉本ばななさん)

吉本ばななさんの『724の世界2023』(DR by VALUE BOOKS、2024年6月1日初版発行)を面白く読みました。国民的作家による、普通の日記。その普通さを徹底的に追求しているように感じました。普通の中にすごみが宿る。普通の日記がこれほど分厚いのかと驚きました。

724の世界とは、7月24日生まれの著者が見る世界。365日毎日の一コマを記録したのが本書です。訪れた店名や、一緒に食事を

もっとみる
全人類に有効な特別支援教育の知恵ー『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』(平熱さん)

全人類に有効な特別支援教育の知恵ー『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』(平熱さん)

特別支援学校教員の平熱さんの著者『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』(東洋館出版社、2024年3月14日初版発行)が^学びになりました。サクッと読めてタメになる。「特別支援教育は全人類に有効です」と平熱さんが断言する理由がよく分かる。

いったい何が役に立つというのか。それは「分けると分かる」ということ。タイトルが「むずかしい」と「むつかしい」(これは著者の造語)を分けているように、さまざ

もっとみる
2024年上半期に読めてよかった本10冊

2024年上半期に読めてよかった本10冊

2024年上半期に読んだ本の中から、特に胸に残った10冊をまとめました。

①『水車小屋のネネ』津村記久子さんの小説。ネグレクト気味な親元を飛び出した姉妹の半生を追いかける、大河小説と言って良い重厚さ。『本の雑誌』の2023年度ベストに選ばれたのを知り、遅ればせながら24年初めに読みました。

何も持たない姉妹は、たくさんの大人の善意に救われて、どうにかこうにか歩いていく。そして成長して大人になっ

もっとみる
科学者はSFをどう読むか?ーミニ読書感想『AIを生んだ100のSF』(大澤博隆さん監修)

科学者はSFをどう読むか?ーミニ読書感想『AIを生んだ100のSF』(大澤博隆さん監修)

早川書房の新書レーベル・ハヤカワ新書から出た『AIを生んだ100のSF』(大澤博隆さん監修、2024年4月25日初版発行)が面白かったです。さまざまな分野の科学者が、SF作品をどう読んでいるかが分かる本です。

流体力学が専門の保江かな子さんは、SFの中に「自分が生きるかもしれない未来」を垣間見る。

SFをあり得ない未来としてではなく、現在と地続きにあり得る未来としてみる。そして「その未来に生き

もっとみる

『君が手にするはずだった黄金について』を真似た読書リスト

毎月、読んだ本のリストをこのnoteに残しています。感想も何もなく、ただタイトル、著作者、出版社を羅列したもの。

なぜこんなことをしようと思ったのかといえば、小川哲さんの『君が手にするはずだった黄金について』という小説で、主人公の小説家が同じ取り組みをしていたからです。

引用後段で出てくる、「一人で粛々と本を読み、そこで得た知識や感情を何かに活かすこともなく、ひたすら内側に溜めこんでいた」とい

もっとみる
支援者は探偵であれーミニ読書感想『自閉もうひとつの見方』(バリー・M・プリザントさん&トム・フィールズーマイヤーさん)

支援者は探偵であれーミニ読書感想『自閉もうひとつの見方』(バリー・M・プリザントさん&トム・フィールズーマイヤーさん)

バリー・M・プリザントさん&トム・フィールズーマイヤーさんの『自閉 もうひとつの見方 これが私だと思えるように』(長崎勤さん監訳、福村出版、2024年5月10日初版発行)が、ASD(自閉スペクトラム症)の子を育てる親として深い学びになりました。もうひとつの見方とは、人としての尊厳を何より重視する見方。治すとか、普通にするとかではなくて、その人がその人らしくあれる道を模索する考え方でした。

もっとみる

2024年5月に読んだ本リスト

【5月】・『ことば、身体、学び』、為末大さん・今井むつみさん、扶桑社新書
・『他者といる技法』、奥村隆さん、ちくま学芸文庫
・『成瀬は天下を取りにいく』、宮島未奈さん、新潮社
・『学びとは何か』、今井むつみさん、岩波新書
・『利他・ケア・傷の倫理学』、近内悠太さん、晶文社
・『自閉症スペクトラムの精神病理』、内海健さん、医学書院
・『娘が母を殺すには?』、三宅香帆さん、PLANETS
・『ハーモニ

もっとみる
自分の靴を脱ぐーミニ読書感想『他者の靴を履く』(ブレイディみかこさん)

自分の靴を脱ぐーミニ読書感想『他者の靴を履く』(ブレイディみかこさん)

ブレイディみかこさんの『他者の靴を履く』(文春文庫、2024年5月10日初版発行)が学びになりました。一冊まるまるエンパシーについて語った本。和訳困難なこの単語を、「他者の靴を履く」というメタファーで考えていきます。

英語では、エンパシーとシンパシーは区別され、さらにエンパシーの定義も多様だといいます。日本語ではエンパシーとシンパシーも「共感」の字が当てはまりそうで(強いて言えばシンパシーは同情

もっとみる
分からないで済む世界ーミニ読書感想『ワンダフル・ライフ』(丸山正樹さん)

分からないで済む世界ーミニ読書感想『ワンダフル・ライフ』(丸山正樹さん)

丸山正樹さんの『ワンダフル・ライフ』(光文社文庫、2024年1月20日初版発行)が胸に残りました。ある事故で、頸髄損傷の重度障害が残った妻を介助・介護する男性を軸に展開するストーリー。重い障害を物語の材料ではなく、主題(テーマ)として正面から捉えた作品だと感じました。

発達障害のある子を育てる親として、本作にはリアリティを感じました。それは、障害というものを間近で見てきた人のリアリティ。「単行本

もっとみる
「中古本を買っていいのか問題」への読書猿さんの回答から学ぶ

「中古本を買っていいのか問題」への読書猿さんの回答から学ぶ

新刊本を買わず中古本を買うことは、著者・作者や出版社にダメージを与える「悪い行為」なのではないか?というモヤモヤを抱いていました(今も解消しきってはいない)。この「中古本を買っていいのか問題」に対して、『独学大全』などで知られる読書猿さんが回答され、それが納得感のある考え方だったので、記録しておきます。

質問投稿サービス「マシュマロ」で、学生さんから読書猿さんに寄せられた質問。「作家への印税や、

もっとみる