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この本に出会えてよかった2023
今年、強く感じたことは「読むことは光になる」ということでした。
冬が終わる前、幼い我が子に発達障害がある可能性が分かりました。人生で味わった過去の戸惑いとは、比べようもないほどの戸惑い、「この先どうなるのか」と、まさに光を失うような状態が続きました。そこから、一冊二冊。障害や、当事者家族の本を開くごとに、足元が照らされていきました。再び歩み出せました。
本を読む目が変わりました。病や困難に直面
2024年6月に読んだ本リスト
【6月】・『AIを生んだ100のSF』、大澤博隆さん監修、ハヤカワ新書
・『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』、平熱さん、東洋館出版社
・『724の世界2023』、吉本ばななさん、DR by VALUE BOOKS
・『新編 普通をだれも教えてくれない』、鷲田清一さん、ちくま学芸文庫
・『あいにくあんたのためじゃない』、柚木麻子さん、新潮社
・『絵本の力』、河合隼雄さん他、岩波書店
・『
人生を潰されないための魔法の言葉ーミニ読書感想『あいにくあんたのためじゃない』(柚木麻子さん)
柚木麻子さんの短編集『あいにくあんたのためじゃない』(2024年3月20日初版発行、新潮社)が、最高の物語でした。読めてよかった。物語の魅力は、タイトルに全て込められている。あいにくあんたのだじゃない。自分の人生の手綱を、どうでもいい他人に譲らない。私の人生は、私のためだ。
最もお気に入りは、フロントを飾った『めんや 評論家おことわり』。過去のブログで、客や店内を勝手に撮影、アップしたことが炎
哲学者の思考の断片ーミニ読書感想『新編 普通をだれも教えてくれない』(鷲田清一さん)
哲学者・鷲田清一さんの『新編 普通をだれも教えてくれない』(ちくま学芸文庫、2010年2月10日初版発行)を面白く読みました。90年代、00年代に哲学者が世界をどう見ていたか。思考の断片に触れ、メタファーの使い方を味わうことができます。
タイトルに惹かれて手に取りましたが、一冊まるまる普通を考える本というよりは、まさに散文、エッセーの詰め合わせでした。京都在住の著者にとって90年代といえばやは
支援のあんドーナツをつくるーミニ読書感想『発達障害のある子どもと周囲との関係性を支援する』(野口晃菜さん・陶貴行さん編著)
野口晃菜さん・陶貴行さん編著『発達障害のある子どもと周囲との関係性を支援する』(中央法規、2020年7月10日初版発行)が、実際の子育て(家庭内外の療育)を考えるにあたってとても参考になりました。明確な指針と、豊富なケーススタディが紹介されています。
「はじめに」でまず胸を打たれます。編著者のお一人は、発達障害児「だけ」が変わることを求められやすい支援の現実に疑問を呈する。
これは親としても感
日記に隠れた物語の片鱗ーミニ読書感想『724の世界2023』(吉本ばななさん)
吉本ばななさんの『724の世界2023』(DR by VALUE BOOKS、2024年6月1日初版発行)を面白く読みました。国民的作家による、普通の日記。その普通さを徹底的に追求しているように感じました。普通の中にすごみが宿る。普通の日記がこれほど分厚いのかと驚きました。
724の世界とは、7月24日生まれの著者が見る世界。365日毎日の一コマを記録したのが本書です。訪れた店名や、一緒に食事を
全人類に有効な特別支援教育の知恵ー『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』(平熱さん)
特別支援学校教員の平熱さんの著者『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』(東洋館出版社、2024年3月14日初版発行)が^学びになりました。サクッと読めてタメになる。「特別支援教育は全人類に有効です」と平熱さんが断言する理由がよく分かる。
いったい何が役に立つというのか。それは「分けると分かる」ということ。タイトルが「むずかしい」と「むつかしい」(これは著者の造語)を分けているように、さまざ
科学者はSFをどう読むか?ーミニ読書感想『AIを生んだ100のSF』(大澤博隆さん監修)
早川書房の新書レーベル・ハヤカワ新書から出た『AIを生んだ100のSF』(大澤博隆さん監修、2024年4月25日初版発行)が面白かったです。さまざまな分野の科学者が、SF作品をどう読んでいるかが分かる本です。
流体力学が専門の保江かな子さんは、SFの中に「自分が生きるかもしれない未来」を垣間見る。
SFをあり得ない未来としてではなく、現在と地続きにあり得る未来としてみる。そして「その未来に生き
『君が手にするはずだった黄金について』を真似た読書リスト
毎月、読んだ本のリストをこのnoteに残しています。感想も何もなく、ただタイトル、著作者、出版社を羅列したもの。
なぜこんなことをしようと思ったのかといえば、小川哲さんの『君が手にするはずだった黄金について』という小説で、主人公の小説家が同じ取り組みをしていたからです。
引用後段で出てくる、「一人で粛々と本を読み、そこで得た知識や感情を何かに活かすこともなく、ひたすら内側に溜めこんでいた」とい
支援者は探偵であれーミニ読書感想『自閉もうひとつの見方』(バリー・M・プリザントさん&トム・フィールズーマイヤーさん)
バリー・M・プリザントさん&トム・フィールズーマイヤーさんの『自閉 もうひとつの見方 これが私だと思えるように』(長崎勤さん監訳、福村出版、2024年5月10日初版発行)が、ASD(自閉スペクトラム症)の子を育てる親として深い学びになりました。もうひとつの見方とは、人としての尊厳を何より重視する見方。治すとか、普通にするとかではなくて、その人がその人らしくあれる道を模索する考え方でした。
著
2024年5月に読んだ本リスト
【5月】・『ことば、身体、学び』、為末大さん・今井むつみさん、扶桑社新書
・『他者といる技法』、奥村隆さん、ちくま学芸文庫
・『成瀬は天下を取りにいく』、宮島未奈さん、新潮社
・『学びとは何か』、今井むつみさん、岩波新書
・『利他・ケア・傷の倫理学』、近内悠太さん、晶文社
・『自閉症スペクトラムの精神病理』、内海健さん、医学書院
・『娘が母を殺すには?』、三宅香帆さん、PLANETS
・『ハーモニ
分からないで済む世界ーミニ読書感想『ワンダフル・ライフ』(丸山正樹さん)
丸山正樹さんの『ワンダフル・ライフ』(光文社文庫、2024年1月20日初版発行)が胸に残りました。ある事故で、頸髄損傷の重度障害が残った妻を介助・介護する男性を軸に展開するストーリー。重い障害を物語の材料ではなく、主題(テーマ)として正面から捉えた作品だと感じました。
発達障害のある子を育てる親として、本作にはリアリティを感じました。それは、障害というものを間近で見てきた人のリアリティ。「単行本
「中古本を買っていいのか問題」への読書猿さんの回答から学ぶ
新刊本を買わず中古本を買うことは、著者・作者や出版社にダメージを与える「悪い行為」なのではないか?というモヤモヤを抱いていました(今も解消しきってはいない)。この「中古本を買っていいのか問題」に対して、『独学大全』などで知られる読書猿さんが回答され、それが納得感のある考え方だったので、記録しておきます。
質問投稿サービス「マシュマロ」で、学生さんから読書猿さんに寄せられた質問。「作家への印税や、