『君が手にするはずだった黄金について』を真似た読書リスト

毎月、読んだ本のリストをこのnoteに残しています。感想も何もなく、ただタイトル、著作者、出版社を羅列したもの。


なぜこんなことをしようと思ったのかといえば、小川哲さんの『君が手にするはずだった黄金について』という小説で、主人公の小説家が同じ取り組みをしていたからです。

僕と美梨の関係は、知人以上、友人未満といったところだろうか。ミクシィという当時流行っていたSNSで、ぎりぎりマイミクの仲だった。彼女はときどき日記を書いていた。どこどこに旅行したとか、誰々と久しぶりに食事したとか、サークルの飲み会があったとか、そういうありふれた内容だった。僕は日記を書かず、読んだ本のリストを更新し続けていた。本の感想を書くこともなかった。ただひたすら、自分が読んだ本のリストを作っていた。

『君が手にするはずだった黄金について』p17

僕は相変わらず、読んだ本のリストを更新していた。リストが二百冊を超えたとき、僕は唐突に「自分はなんのためにこのリストを更新しているのだろうか」という実存的な問いを抱いてしまった。僕の友達に、読書が趣味の人間はいなかった。正確には、僕のように読書をしている人間は一人もいなかった。僕は一人で粛々と本を読み、そこで得た知識や感情を何かに活かすこともなく、ひたすら内側に溜めこんでいた。

『君が手にするはずだった黄金について』p19

引用後段で出てくる、「一人で粛々と本を読み、そこで得た知識や感情を何かに活かすこともなく、ひたすら内側に溜めこんでいた」という主人公の姿に、妙に惹かれました。そしてなんだか、自分も真似てみようと思い立ったのでした。

主人公のやっている読書は孤独です。どこに向かうでもない。何のためでもない。それは、アウトプットとしてみれば不完全で未熟とさえ言える。

でも、たぶん読書とは本質的には、孤独な営みです。何かのために読書があるのではなくて、どうしようもなく本を読まずにはいられない。そういう根源的なエネルギーが、私たちの中に眠っている。

しかし、孤独な作業というのは当然つらくて、だからこそ主人公は、森の中で自分の歩いた道にパン屑を落とすように、ただ読書リストを連ねている。

不思議ですが、そうしてできた足跡を辿ってくれる方がいます。また自分自身を、このリストを通じて月日を振り返ることができる。

たぶんまだしばらく、この主人公を真似た読書リストの更新を続けると思います。

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『君が手にするはずだった黄金について』の感想はこちらです。とても面白い物語です。


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