生理の貧困、マスクの貧困

パンデミックより前だったかな、「生理の貧困」という言葉を聞いて私は心底驚愕した。(もはやここ4年間の記憶も消去され始めているようで時間の感覚が揺らいでいてちょっとよくわからない。)
生理用品を買えなくて、必要な時にも使えず・使わずに過ごしている子達がいるということなんだけど、使い捨ての生理用品なんて、よほど高性能?のものは別として、一つ数十円にも満たない、必然性に比べれば明らかに安価なものであるはずで、それなのに買えない・買わないんだ、、と。

私は貧困問題には比較的関心があるほうだと思うんだけど、それでも、そこまでだとは想定していなかった(でも美しい国ニッポンはとっくに、ここまで来ていた)。
これも、生傷が絶えないとか、がりがりに痩せているとか、着ている服がいつも同じだとか汚れているとかとは違って、「見えにくい」「気付かれにくい」ことだからこそ、起きてしまうのかもしれない。

「買えない」というのは、本当に経済的に、月数百円程度?が、必然性が高いものであっても捻出できない(おそらく食費とか光熱費とか家賃とかが優先される)場合。
「買わない」というのは、おそらく経済的に厳しいところはありながらも端から見れば「それ、必然性が低いのでは?」という、例えばメイク道具とかスマホ代とか交友費(ホスト代とかも?)を優先して、明らかにそれより低コストであろう生理用品を買えない場合。
おそらく前者については、多くの場合、批判なく同情が集まるのでは(新自由主義に染まっている人間はそれでも「自己責任だ」と言うのだろうけど)と思われる一方、後者については一般的には理解が難しいところではと思う。
正直、私も共感はできない。でも、そうなってしまう背景には、おそらく機能不全家庭、ネグレクトと勿論貧困があって、彼女達は(他人からすれば「何故そこに?」というポイントに)強い依存と執着を持ち、合理的な価値判断ができない状態に陥ってしまっていると推測されるから、わりと深刻な状況で、「我が儘」だと切り捨ててよいものではないと考える。

かつて私の通った大学は、学費が比較的高かったこともあり、基本的には裕福な家庭の出の子が多かった(中高一貫出身が半分位はいたかな、小学校から私立もちょいちょいいたし、海外生まれ、帰国子女、高校留学も多かった)。それでも、裕福な家の子が多い中にも必要としている子がいるからって、自分は必死にバイトをしながら生理用品配布プロジェクトを起こした子がいて、置いてある場所を見かけた。
あと、年始に京都へ行った時、OPAのトイレだったかな。アプリで広告見ると生理用品もらえますよみたいなお知らせを見て、いいなと思った。私は(セキュリティープライバシーを気にするしアプリや企業に個人情報を抜かれたくないっていうのと、普通に買えるから)使わないけど、上述の「買わない」の層には効果的。彼女達の生活にスマホは(ほぼ)あるから。

こういう風に、必然性があるのに自分で買えない子に、直接負担をかけない形でアクセスできる場が出来始めているのは一歩前進だな、と思う。(本当は、貧困とか機能不全家庭を減らしていくところに力を注ぐべきなんだけどね。でもそれには時間も労力も、コストも大きくかかる。できるところから確実な一歩を、というのも持続可能性を考える時の鍵だと思う。)

それで、どうして突然こんなことを書いたかと言うと、「生理の貧困があるくらいなんだから、【マスクの貧困】も絶対あるな」って、ふと思ったから。
そして、「マスクの貧困」も、「生理の貧困」と同じように、まずは極度の貧困で「買えない」があるのに加えて、貧困、機能不全家庭、ネグレクトのコンボ、さらに(多くの場合は貧困層だろうと思うけど)貧困要因が比較的に薄い場合の親の(カルト)信仰、思想が絡んでくる「買わない・買ってもらえない」が生じる深刻なものだと思うから(経済面や精神面に問題のある層、教育の行き届かなかった層はカルトに絡め取られやすい)。
貧困要因が薄いのに「買わない・買ってもらえない」は、例えば輸血拒否とか勧誘への連れ回しなんかと近い。子どもの内面は全無視で「親のお気持ち」を最優先した結果。

例えば、オレンジ色の政党と絡んだ強固な(カルト)信仰イデオロギーに染まった「素顔派」の家庭では、子どもがどう考えていようが、感染していようが、咳くしゃみ鼻水等を飛び散らかしていようが、マスクが買い与えられることは絶対に無い。
子どもも「空気を読む」し、特に小さいうちは生存のために環境に適応しなきゃいけないから、親が「素顔派」でマスクを外すことに心酔していたら、それに合わさざるを得ない。多くの場合は価値観の踏襲も起きるから、子どもも「素顔派」になってしまうんだけど(マスクをしないと親が喜ぶ、マスクは悪だと言われるから)、全部が全部、そうなるわけでもない。
子どもは親と別個の存在であり、別人格、別の価値観を持つのも当然である。
これを、虐待を行う、機能不全家庭の大人は理解できないんだけど、子どもにとっては、「親のお気持ち」よりも、例えば友達との関わりとか、学校に行けるか、行事に参加できるかのほうが重要だったりする場合がある(昔、私が親に「猫踏んじゃった」を禁じられても外で弾きまくったように)。
でもそうするとね、マスクの文脈だと、子どもは本当は「感染したくない、マスクがあれば」って思っているのに、マスクにアクセスできなくなるんだよ。親が、絶対に買い与えないから。特にバイトもできない義務教育段階の子が自分でどうにかするのは不可能だし、高校以降でバイトができるようになったとして、それこそその年でわざわざ働くくらいなんだから、彼らの生活にとってより優先度の高いものへ、バイト代は消えていく。

よくアポロ小太郎さんが、音楽の授業で、症状ありのノーマスクStudentsに自払でマスクを渡している、デザインが良いマスクだと受け取って普通につけてくれるということを書かれているんだけど、これ、薄給の「非常勤講師」が「自費で」することじゃない。
合唱は本当に高リスクだから、アポロ小太郎さんも泣く泣くそうせざるを得ないんだと思う(し、私はそもそもリスクの高い合唱は避けて別の低リスク活動をするべきだと考えている)んだけど、例えば「消耗品費」とかで学校、あるいは(学校がノーマスクイデオロギーに染まっている場合は)感染対策の必然性を感じていらっしゃる先生が、大容量マスクを購入して、「本当は必要だって思っているのに親に買ってもらえない層」が、(せめて3層以上の不織布)マスクにアクセスできるように、環境を整えていくようにできないかな。
例えば、保健室と連携して、朝、必要な子が登校したら渡してもらえる形にするとか、職員室に来てもらう形にするとか。

マスクを買ってもらえない子の家庭は、おそらく色々な問題を抱えているから、マスクを渡して、まずは挨拶程度からでも関係を作っていけば、そのうち色んなことを語ってくれるようになるかもしれない。

子どもは大人をよく見ているよ。特に機能不全家庭アダルトチルドレンは。多分はじめはなかなか心を開かないだろうし、近づこうとすると警戒されるかもしれない。でも、だからこそ、「おはよう」「はい、マスク」程度の繰り返しや関係って、実は大切だったりする。それで、「この大人は少なくとも危害を加えてくることはない(し、接するメリットがありそうだな)」って思ってもらえたら大成功。マスク以外の問題へもアプローチできるようになる。

家では買ってもらえないし、家からマスクだと親が発狂する、なんて環境の子には、親から切り離されて、家の外で、無料で、マスクを得られる場所は貴重だよ。
生理用品へのアクセスを開くのと同じように、マスクへのアクセスを開けるようにしていくのはどう?

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(逆風吹き荒れる中)感染対策を実践されている教員の方へ

お察しします。本当に、ご苦労の多いことかと存じます。
特に5類化(中でも秋学期)以降、職場感染させられていませんか?心身共に、維持できていますか?

私は「生徒にマスク着用を求めることを管理職から禁じられたため」(他のパワハラ要因もありますが)、授業が行えなくなり、昨年度末に退職をしました。
この社会情勢であっても教壇に立ち続けている先生方の感染リスクが、少しでも下がり、ただでさえ人手不足&多忙な現場の混乱が緩和されれば、と、思いはするものの、期待激薄ですね。。すみません外野から。

専任の先生でないと厳しいかとは思いますが、上述のように、学校での、必然性の高いStudentsへのマスク配布で開けるところがあるのではと思います。
全ての子に、1日に何枚も、高価な高性能の、というのはなかなか厳しいと思いますが、3層不織布大容量箱入りマスクであれば、今はかなり安価で手に入ります。そして、適切な(鼻と口を隙間なく覆う)着用をすれば、3層不織布であっても、少なくとも飛沫感染対策としては、充分に効果を得られます。まずは、「必然性の高い子に、登校時、1日1枚、3層不織布マスク」を目指してみませんか?試しの一箱からでも。

受け取る際の心的コストとしては「ご自由にお取りください」型のほうが低いはずですが、そうすると回転が速くなりすぎたり、持ち去りやいたずらがあったりというリスクもあるので、基本的には、関係性の構築という点からも、教員が管理しているものを取りに来てもらう形がいいのかなと私は思っています。(逆にその程度の負荷で、必然性の低い子を絞ることも可能になるかな、と。)

予算の承認など、実現に色々ハードルはあると思いますが、おそらくJN.1で大半が複数回感染者になった現場では今後、教員にも子どもにも、近いうち、後遺症とその影響が目に見えるようになっていきます。
教え子、ご自身、同僚を守り、子ども達の学ぶ権利や居場所を守るために、実現可能性のあるレベルから、合理的なことを、是非(後遺症のひとつ、ブレインフォグは皆さんの業務にも大きな支障をきたします)。

一度実績ができれば、Studentsのニーズ量などがつかめてくれば、それを踏まえて次の予算を組むことができます。
0から1の段階が一番きついと思いますし、現場の謎のマスク忌避体制も、本当に、痛いほど、よくわかります。。

でも、少なくとも、マスクが必要な子どもには、「学校で」「無料で」マスクを得られることは非常に大きなメリットになります。

子どもは柔軟で大人をよく見ているので、こちらがただの「お気持ち」や「命令」ではなく「客観的で合理的な根拠」と共にマスクの有効性を説明し、着用を求め、それに納得すれば、きちんとマスクをしてくれます。コスト負担が無ければ、ハードルはかなり下がります。
私が接していたのは、海外滞在年数が長く、居住文化圏でマスク習慣が無い、マスクに慣れないはずの子達でしたが、きちんと説明をして頭を下げたら、皆、「授業中」や「私と接する時」は(他の時は違っても)鼻と口を覆って適切なマスク着用をしてくれました。換気のための窓開けも手伝ってくれました。

Studentsよりよほど、すっかり凝り固まった大人のほうが、対話困難なんですよね。「マスク着用を求めることを禁ずる」というのは、一方的にそう「命令」し「有無を言わさず従わせ」る、自分がしているのと同じことしかできないと思っている「支配者」の暴力性による発想で、Studentsと「対話」し、「共生」していくという視点があり、適切な関係構築力があれば、たかがマスク一枚程度で信頼や関係が阻害されることなど無いと思えるはずなのに。

管理職が「自分がマスクをしたくない」人間である場合、かなり厳しくなることが容易に見通せますが、「どうしても必要な子どものため」というところから、「生理の貧困」と関連性もふまえつつ、切り開ければな、と思います。(他のことでも、実績があるのは強い。)適切な情報が必要だという点でも同じですよね。

皆さんが感染せず、より安全な環境でStudentsに向き合えるようになりますように。
ご苦労の多いことと存じますが、なるべくご無理のないようになさってください。休める時にはしっかり休んでくださいね。

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