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最新経済研究の半歩先

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人的資本家が所得格差を広げる?

人的資本家が所得格差を広げる?

今日は最近のマクロ経済学研究で注目されつつある「人的資本家」という概念について解説し、それによって所得格差が広がっているのか考えていきたいと思います。(一般向けに平たく書いておりますが、最後の章だけ研究者向けに書きました)

人的資本家とはおそらく多くの方が「資本家(Capitalist)」という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。端的にいうと、企業に資金を提供している株主です。同じく「人的

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経セミ連載:成田悠輔・矢田紘平「データで社会をデザインする:機械学習・因果推論・経済学の融合」

経セミ連載:成田悠輔・矢田紘平「データで社会をデザインする:機械学習・因果推論・経済学の融合」

■はじめに 経セミ連載=成田悠輔・矢田紘平「データで社会をデザインする:機械学習・因果推論・経済学の融合」が、 2021年6・7月号 よりスタートしました。

第1回のタイトルは「すべてがデータに、アルゴリズムに、そして実験になる」 でした。

そして、2021年8・9月号掲載の第2回タイトルは「過去を反省する」です!

各回のタイトルからしてちょっと変わったこの連載。はたしてどんな内容なのか

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書評:川上淳之著『「副業」の研究』 (経セミ2021年8・9月号より)

書評:川上淳之著『「副業」の研究』 (経セミ2021年8・9月号より)

川上淳之[著]
『「副業」の研究――多様性がもたらす影響と可能性』
慶應義塾大学出版会、2021年、四六判、324ページ、税別2700円

評者:黒田祥子(くろだ・さちこ)
早稲田大学教育・総合科学学術院教授

日本の副業の実態を
順を追って丁寧に解き明かす副業の推進は、安倍政権下でスタートした「働き方改革実行計画」の重点項目の一つに位置付けられてきたものの、これまでは「同一労働同一賃金」や「長時

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コロナ対策をめぐる政策現場との対話(仲田泰祐・藤井大輔インタビュー)

コロナ対策をめぐる政策現場との対話(仲田泰祐・藤井大輔インタビュー)

仲田泰祐・藤井大輔先生による「Covid-19と経済活動」プロジェクトに関するインタビューシリーズ「政策と経済学をつなぐ」。今回は、2021年1月にウェブサイトを立ち上げ、コロナ禍において感染者数や経済被害に関する分析・見通しを発信し続ける中で二人が経験してきた、行政や政治家の方々をはじめとする「政策現場との対話」にフォーカスしたインタビューの一部をご紹介します!

なお、以下の二人が運営するウェ

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気候変動にどう向き合うか?:実証ミクロの視点(経セミ 2021年12月・22年1月号・付録)

気候変動にどう向き合うか?:実証ミクロの視点(経セミ 2021年12月・22年1月号・付録)

このnoteでは、『経済セミナー』2021年12月・22年1月号の特集「気候変動にどう向き合うか?」の巻頭対談:

の中で語られたトピックの関連情報や、対談でのディスカッションのベースとなっている研究成果や参考資料をリンク付きで紹介しながら、ちょっとだけ本号特集の内容をご案内します!

なお、2022年1月17日には、この特集をまとめた廉価版(希望小売価格550円)の電子書籍「経セミe-Book

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ノーベル経済学賞2021:川口大司「社会問題の因果関係を解明する 自然実験の確立~カード、アングリスト、インベンス」

ノーベル経済学賞2021:川口大司「社会問題の因果関係を解明する 自然実験の確立~カード、アングリスト、インベンス」

このnoteでは、東京大学の川口大司先生に『経済セミナー』2021年12月・22年1月号にご寄稿いただいた、2021年ノーベル経済学賞の解説記事を公開しています! 

受賞者たちの研究成果の紹介はもちろん、彼らが巻き起こした論争、経済学のあらゆる分野にもたらしたインパクトとその意義を語るとともに、川口先生がセンター長を務める東京大学政策評価研究教育センター(CREPE)でのご経験もふまえて、政策現

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「歴史データ×経済学」の可能性(経セミ2022年2・3月号 付録)

「歴史データ×経済学」の可能性(経セミ2022年2・3月号 付録)

このnoteでは、『経済セミナー』2022年2・3月号の特集「『歴史データ×経済学』の可能性」の巻頭鼎談:

の中で、トークの題材となったトピックの関連情報や、その背後にある研究、参考文献や資料、補足情報などをリンク付きで紹介しつつ、ちょっとだけ本号特集の内容を覗いてみたいと思います!

コンピュータの性能向上や、テキストや画像認識技術の発達などなど、技術進歩とともに、歴史的な史料の活用可能性に改

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データ・ビジネスの最前線に迫る!!(渡辺努・辻中仁士編著『入門オルタナティブデータ』、「はしがき」公開)

データ・ビジネスの最前線に迫る!!(渡辺努・辻中仁士編著『入門オルタナティブデータ』、「はしがき」公開)

渡辺努・辻中仁士 [編著] 『入門オルタナティブデータ ―― 経済の今を読み解く』が発売になりました!(2022年2月18日。電子版も配信中です)

コロナ禍を通じて、携帯電話の位置情報に基づいた「人流」や、クレジットカード取引履歴に基づく足元の「消費動向」などなど、新しいタイプのデータを目にする機会がグッと増えました。これまで、人々の社会・経済活動の動向を捉えるデータとしては、政府が集めて公表す

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書評:小倉義明著『地域金融の経済学』 (経セミ2022年2・3月号より)

書評:小倉義明著『地域金融の経済学』 (経セミ2022年2・3月号より)

評者:原田喜美枝(はらだ・きみえ)
中央大学商学部教授

地域金融の現実を受け止め
理論、実証から今後を考える本書は、著者のこれまでの地域金融に関する研究をベースに執筆されている書籍であり、研究者としての長年の考察が随所に生かされている。理論的考察や、数多くの実証分析の紹介、それらの断片を組み合わせ、地域金融という経済活動が経済学的にまとめられている。

日本の生産年齢人口は1995年にピークを迎

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書評:渡辺努著『物価とは何か』 (先行公開! 経セミ2022年4・5月号より)

書評:渡辺努著『物価とは何か』 (先行公開! 経セミ2022年4・5月号より)

評者:青木浩介(あおき・こうすけ)
東京大学大学院経済学研究科教授

第一人者が語る、
謎に満ちた奥深い「物価の世界」 物価研究の最先端を牽引する渡辺努東京大学教授による非常によい一般書である。書名が疑問形であると同時に、各章名も疑問形である:

第1章「物価から何がわかるのか」

第2章「何が物価を動かすのか」

第3章「物価は制御できるのか」

第4章「なぜデフレから抜け出せないのか」

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金融規制と危機を理論・実証の両面から(植田健一『金融システムの経済学』より)

金融規制と危機を理論・実証の両面から(植田健一『金融システムの経済学』より)

このnoteでは、東京大学教授の植田健一先生による『金融システムの経済学』の「はしがき」とあわせて、内容を紹介していきます。

本書は、主に戦後の金融システム(金融制度や規制)の歩み、自由化・国際化と経済成長の関係を振り返り、それを読み解くための経済学の理論と実証研究の成果を学びながら解説していくものです。

さらに、そこで学んだ経済学の原理を用いて、金融危機や金融のデジタル化、フィンテック興隆の

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経済学と経営学の交差点(経セミ2022年4・5月号付録)

経済学と経営学の交差点(経セミ2022年4・5月号付録)

新年度最初の『経済セミナー』2022年4・5月号、特集は【「職場」の経済学】です!

いわゆる「日本的経営」の機能不全、長時間労働の是正とワークライフバランス、職場や労働市場における大きなジェンダー格差など、日本の企業・組織や働き方について、これまでさまざまな議論が交わされています。

さらに2020年以降、新型コロナの影響もあり、デジタル化の遅れやテレワークなどの新しい働き方への対応を通じて、問

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将来予想のインパクトを測る:連載「実証ビジエコ」第7回より

将来予想のインパクトを測る:連載「実証ビジエコ」第7回より

『経セミ』2021年4・5月号から始まった連載、上武康亮・遠山祐太・若森直樹・渡辺安虎「実証ビジネス・エコノミクス」。気づけばもう第7回!

今回からはなんと、新章に突入です!!

今回以降の大きなテーマは、「人々や企業の時間を通じた意思決定を考える」こと。今回は、その中でも最もシンプルなモデルである、単一の意思決定者(エージェント)が、将来の予想までをふまえて、現在の行動を決めるというものです。

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書評:佐々木勝著『経済学者が語るスポーツの力』 (経セミ2022年4・5月号より)

書評:佐々木勝著『経済学者が語るスポーツの力』 (経セミ2022年4・5月号より)

評者:久米功一(くめ・こういち)
東洋大学経済学部教授

スポーツとは何か
~その面白さと可能性を語りたくなる書2021年、新型コロナウイルス感染症の拡大により延期されていた東京2020オリンピック・パラリンピックが無観客で開催された。その開催の是非を問われた私たちは、スポーツの役割や機能について否応なく考えさせられた。同年10月に刊行された本書は、その問いに対するさまざまな考え方を提示した、非常

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