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音楽エッセイとスピリチュアル、そして詩的な何か

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マガジン「音楽と私と、そしてココアと」から「森」関連のエッセイ・散文詩を此方に移設しました。 ※マガジン「音楽に寄せる想い」から全ての記事を、このマガジンに統合しました。(202… もっと読む
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記事一覧

Esperanza 2020、そして2021の聖夜に思うこと

Esperanza 2020、そして2021の聖夜に思うこと

2021年12月24日 金曜日のクリスマス・イヴ。
実母がクリスチャンなので、予定では毎年今日は深夜までイグナチオ教会でミサに参加する日。ですがこのコロナ禍で、母も(存命であれば)かなりの高齢です。
きっと慎ましく家でじっとしていることを願いながら、私は今年一年を振り返っています。

Twitterにも先程投稿したところですが、過去作品の『Esperanza』をあらためて聴いています。未だ機材も旧

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Our Last Planet

Our Last Planet

先週末の悲しい訃報に気持ちが滅入り、なかなか立ち直れずに数日間が過ぎて行きました。そんな折、アッシュ (https://note.com/gtrslovesyf_ever) さんが美しいつぶやきを、noteにアップなさっていました。

この世界に地球の声をつぶさに聴き取れる人は、どのくらい存在するのでしょうか‥。少なくとも私は過去にリラ星に居た頃から、自然神の声を聴くことが普通に出来ました。
各々

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巫女の視点で語る「人類の行方」と「人類の未来」

巫女の視点で語る「人類の行方」と「人類の未来」

①57年目の冬に思うこと昭和から平成、そして令和へと時間が進み、私は今年、まれてから57年目の今を生きている。
父は戦中派の人で、海軍に従事した人だったようだ。「~だったようだ」と言うのも父が生前私にその話しをしたことは一度もなく、当時日常的に「北部屋」に幽閉されながら暮らしていた私はその部屋の一角に聳え立つ大きな箪笥の中身が気になり、両親が家を空ける隙を見計らって中身をそっと確認し始めた。
そこ

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タンゴにまつわる思い出

タンゴにまつわる思い出

一説には、タンゴは男女が密会する為の場所で使用される為の音楽だった…とも言われている。その説が物語る通りに、タンゴはとても淫靡でなおかつ高貴な音色を持ち合わせている。

一人になりたい時、私はタンゴのアルバムを手に取り、心が完全に孤独を味わい尽くすまでそれを聴き続ける。
そして架空のダンス・パートナーを想像し、その人と二人でステップを踏むのだ。それは何ともかなしいステップ、コツコツとバンドネオンの

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私の中のジプシー

私の中のジプシー

勿論トランシルヴァニアにも行った事がないし、スペインの路上で演奏なんてした事もない。なのに私の中になぜか放浪の記憶が深く根付いているのはなぜなのだろうか…と、時々考える。

荒涼とした砂丘を剥き出しの楽器を担いで、粛々と歩き続ける記憶。家もなく金もなく、なによりどこの誰か…と言う戸籍を持たない放浪の民をいつかの自分が生きていたと思うだけで、せつなくやるせなくなり涙が溢れ出す。

冷たい風と氷が溶け

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マグレブと水タバコ

マグレブと水タバコ

おそらくこれは夢だろう…と意識のどこかで分かっている、にも関わらず、私はグイグイとその不思議な音色に引き込まれ、妙に煙臭い路地の奥へ奥へ…と入って行く。
30歳の誕生日に心臓に発作が起きて、それ以来煙草をやめた。だがその臭いは鼻の奥のそのまた奥の、記憶の嗅覚をツン!と突き抜けて脳天の一部に小さな穴を開けた。

よく聴くと、大好きなグナワの響き。実際にはまだその域には一歩も足を踏み入れた事がないのに

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消えたインドネシア・レストラン

消えたインドネシア・レストラン

東京都内某所、東京駅近くに数十年間ひっそりと続いたインドネシア・レストランがあり、よく通ったものだった。特に何が美味しいと言うわけでもないのに、その空間の持つ独特な空気や店の匂い、それに女性店員の話すインドネシア語の響きに妙に惹かれ、それ程個性的ではないカレーやナシゴレン、ソトアヤム等をずらっとテーブルに並べて、まるで料理を鑑賞するが如く数十分間楽しんでゆっくりと平らげるのが好きだった。

私が特

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Gabriel's Message

Gabriel's Message

ある日仕事から帰宅すると、部屋の中はもぬけの殻だった。

その朝妻はいつも通りにオムレツとポタージュ、そして薄めのコーヒーをテーブルに並べて、いつも通りの笑顔で僕を仕事に送り出してくれた。
一週間前辺りからお腹が痛いと言って、何度か病院に行き医者に診てもらっていた事は聞いていたけれど、本当にそれ以外の妻の変化に僕は全く気づいていなかった。

僕は美術品の運搬の仕事を、彼女は内科病棟のナースだった。

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白の回廊

白の回廊

おそらく何もない空間。目を閉じた途端にポン!と放り出されたみたいに、僕はその部屋に招かれた。
太陽光のような静かな光が燦々と降り注ぎ、肉眼では無限の空間を捉えているはずなのに、第三の目の中に女性の姿が映り込んでいた。

年齢不詳、もしくは性別も怪しいその女性のような人影がしきりに、不思議な香りのする煙の中でカードを切って行く。一枚一枚のカードはメタリックかガラス質の板のようにきらきらと光って、女性

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ラフマニノフと赤い河

ラフマニノフと赤い河

彼女がもう一つの世界へと飛び立ったのはもう、かれこれ10年以上も前のこと。スコンと抜けるような青空の広がる朝、彼女は自らの意思で冷たいアスファルトの海に飛び込んだ。
ふと、僕が目を離した隙のことだった。

前夜の彼女は眠っている間も何かに魘されながら時折奇声を発し、天井に向かって大きな拳を上げたかと思うといきなり布団や自分の太腿を叩き、その衝撃で飛び起きては荒れた呼吸を整えながら再び眠りに就く…、

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ドゥドゥクとツグミ

ドゥドゥクとツグミ

その年の春の森に ツグミは来なかった
雛の頃からこの手の中に抱き上げ 抱きしめて
そして澄んだ夏空に解き放った
妹のようなツグミ

だから私はドゥドゥクを吹き
ふたたびこの部屋にツグミを呼び戻したくて
彼女の好きなパン屑をポケットに忍ばせ
さえずりの真似をした

彼女はきっと僕を忘れない

僕の声 仕草 時折のため息
そして指をパン!と弾いて鳴らすその音も
ツグミは僕のすべてに応えてくれたし

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その名はヤスミン

その名はヤスミン

トルコはイスタンブールの旅行中に無性に飲酒がしたくなり、なにげなく街外れの(絶対に知り合いには会わなそうな)小さなショー・パブに足を踏み入れた。アルコール、プラス㌁の何がしかを心も体も欲しがって仕方がなくて、とにかく闇雲にその種の匂いを求めて彷徨った挙句に見つけた一軒の小さなパブだった。

英語で「Belly Dance Show!」と小さく書かれ、丁度その日の夜にLiveが催される予定が書き込ま

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La solitude(Léo Ferréに捧ぐ)

La solitude(Léo Ferréに捧ぐ)

偉大な魂はなおも 惑星を包括し続ける
その瞬間の彼の孤独を 想像し得た誰かがいるだろうか…

なおも彼は世界に問う
自らの人生が本当にこれで良かったのか否かと

だが誰も 彼のささやきに触れることが出来ない
勿論 私も

歌は 詞は そして彼の音楽も
無防備にこの星を横断し続ける
今では小さな電子機器の片隅に 彼は静かに立ち
歌声と悲しみを放つ
そして世界を見回しながら
これで良かったのか と 自

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たとえばそれはアビスのような

たとえばそれはアビスのような

風の姿となり
拠り所を失い
ただ誘われるままに生きた日々を思う

鏡に映らない僕をこの世界でただ一人
見い出した君をまた 僕も愛し
手を取り合うこの夜の果て
 僕たちに出来ることは最初から
 ひとつしかなかった

たとえれば それはアビスのような
わずかな蒼が溶け出た 無の世界
泳ぐようにすべてがとりとめもなく
無数の心と心がすれ違う世界

乾いた魂が水を求め 彷徨いながら
凍てつく闇に映る
 

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