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たとえばそれはアビスのような

風の姿となり
拠り所を失い
ただ誘われるままに生きた日々を思う

鏡に映らない僕をこの世界でただ一人
見い出した君をまた 僕も愛し
手を取り合うこの夜の果て
 僕たちに出来ることは最初から
 ひとつしかなかった

たとえれば それはアビスのような
わずかな蒼が溶け出た 無の世界
泳ぐようにすべてがとりとめもなく
無数の心と心がすれ違う世界


乾いた魂が水を求め 彷徨いながら
凍てつく闇に映る
 別世界の月を見上げ
息を殺してふたりで泣いた…

ひとしきりの逃避と号泣の後に
ふたたび同じ世界が広がるそのたび
絶望と落胆が胸を震わせ
ふたりは何度も何度も壊れて行った


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あらゆるものをすり抜けて
無限の虚無に包まれるたびに僕らは
自らが風であることを思い出す
無であることを思い出す
それを打ち消すように
風のからだを抱きしめて
互いが砕け散る音を 確かめ合う…

だけどすべては虚しいこと
心と体の隙間は埋まらない
だって僕たちは
最初から存在しないのだから

だからと言って溶け合うことも許されず
神の不条理に嘆き続ける声は
やはり無休の風の一部となって
地上に溶け出る
 幽かな夢の余韻を
 永遠に響かせて行くだろう

※iTunesアルバム「Fantasy」より、「Abyss」からのインスピレーションで綴った即興詩です。 写真ソース: Night's Requiem by Eleni Fine Art Photo


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