見出し画像

タンゴにまつわる思い出

一説には、タンゴは男女が密会する為の場所で使用される為の音楽だった…とも言われている。その説が物語る通りに、タンゴはとても淫靡でなおかつ高貴な音色を持ち合わせている。

一人になりたい時、私はタンゴのアルバムを手に取り、心が完全に孤独を味わい尽くすまでそれを聴き続ける。
そして架空のダンス・パートナーを想像し、その人と二人でステップを踏むのだ。それは何ともかなしいステップ、コツコツとバンドネオンの旋律の合間を縫うように音を立てながら、そのかなしみの底へと滑り落ちて行く。

若い頃、ずっとかなしい恋が好きだった。恋愛は成就した時に終わるべき…などと勝手なストーリーを作り上げ、本当に幸せの絶頂を迎えた時を見計らって悲恋物語をでっち上げて、一方的に終わらせた恋が一体幾つあっただろうか…。
あの時意味不明な理由で私と終わって行った人たちは今頃一体どうしているのだろうかと、ピアソラを聴きながらふと、思う。
[Listening to Astor Piazzolla -- Ave Maria (15:18 - 20:58)]


私にとって恋とは愛のイントロであり、そして純潔で崇高なものでなければならなかった。少なくとも男女の色まみれなどそこに在ってはならないし、兎にも角にも神を愛するようにお互いを精神性の高みへと押し上げて行くような、そんなものであるべきだとずっと考えていたが、現実はそう上手くは行かなかった。
…と言うより、若い頃の私の行いに天罰が下ったのだろう。

ここから先は

764字 / 1画像

¥ 290

記事を気に入って下さった暁には是非、サポートで応援して下さい。 皆様からのエネルギーは全て、創作活動の為に使わせて頂きます💑