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散文

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#創作

詩 『小さくなって考える』

詩 『小さくなって考える』



小さくなって考える
日々の悲しみの源は誰とも関わることが出来ないこと
たくさんの人とすれ違ったとしても
私は誰とも繋がることが出来ない

小さくなって考える
このわだかまりは、私が私のことを理解してあげられなかったこと
責められたときに言い返せるほど
私は私の感情に気にかけられない

小さくなって考える
指先から冷たいものが入ってくるのは、攻撃ではなくただの侵食
私は抵抗することも出来ず、

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コピー『年賀状を書こう』

コピー『年賀状を書こう』

【大学 コピーライト入門の課題】
年賀状を書こうと思うコピーライトを書く。

散文『ポツポツ』

散文『ポツポツ』

繁華街をポツポツ歩く。

その一文だけがノートに残されていた。過去の自分が何を考えたのか、思い出そうとすら思わなかった。ただ、『繁華街をポツポツ歩』いてみたくなった。

電車が停止し、歩く。
ガヤガヤとした街は暗かった。都会ももう暗い時間なんだと思う。
死んだ都会は、見慣れた場所だと思った。

頭がバラバラと崩れるような、具体性がないような、全てが消え去る瞬間のような思考は断片的で線路の美しさに気

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写真詩『言葉は痛い』

写真詩『言葉は痛い』



言葉は痛い
書き残したルーズリーフは途切れたまま
君の読む本のタイトルを知ることは無かった
投げかけた挨拶は消えていく
ずっとは無いこの時間
筆圧は強くなる
君の言葉を考える
机に書かれた誰かのボヤキ
私はそんなこと出来ない
書き残せるほど少ない想いじゃない
言葉は痛い
君にはあげられない

写真詩『愛おしさと風』

写真詩『愛おしさと風』



滑り台の下に置かれたカバンたち
どこかから聞こえる工事の音
待ち合わせ場所だったカーブミラー

蘇るようになぞるように
風になる

自転車はキィキィ鳴るけど
それも全てこの秋の奏でる一部で
ふと生きた感覚が指先に
鼻の先の冷たさをすぐに忘れる

秋のいつの日かを思い出すとき
この目に映るものが
息衝いていたことを理解するのだろう

写真詩『金色の目の先』

写真詩『金色の目の先』



明日の夜の声がした
漂う金色は中秋の名月の匂い
肺に溜め込むよう吸い込んだ
君の眺める世界は
裏切るもののいない空の下
遠く彼方よりも
目の前の愛を守りたかった

詩『はみ出す青』

詩『はみ出す青』



もう終わるらしい夏休みの
空を見ることなく
部屋の中
ひとりぼっちで吸う息に
とくとくと輝いた愛のなさ
めぐる命の空き箱は
何かを思わすことも無い
さおさおさお
竹の音がどこからか聞こえるの
さおさおさお
また聞こえる
それは猫の悲鳴をかき消すために

マスクから開放され
入ってくるのは青の音
侵食していくその色は
まぶたの裏に焼き付いた

散文 踏切の君に

散文 踏切の君に



私は明るく冷えた電車の中で、
君は猛暑の余韻の中、
私を探して踏切の向こうにいる。
君の硬い熱を掴んだ手でバイバイをする。

詩『午睡の空』

詩『午睡の空』



午睡の夢の色をしていた
その空を僕は目をつぶって感じてる
吸った息に含まれた
純粋な色彩は
僕の体内全部を染め上げた

色の着いた空気は
ちるちると音を立てる
宇宙を感じるその色を
きっと火星人も見ているに違いない

僕の世界は
ピンクとも撫子色とも石竹色とも
言いたくない色で満たされた

命よ君よ、僕をありがとう

散文 空の青さは敵わない

散文 空の青さは敵わない

踏切の青いライトには、自殺を抑制する意図があるらしい。青色は人の気持ちをおちつけるとのことだ。青色のご飯が食欲をそそらないのとなにか関係はあるのだろうか。多分ないだろうな。
ある有名な大学の最寄り駅には、青いライトが沢山あった。人身事故の多いその駅には、青いライトが沢山あった。
大学生の心を落ち着けることが、青いライトには出来るのだろうか。
自殺を本当に止めるのだろうか。
僕は知っている。その青い

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文体練習 比喩の坩堝はどこに

文体練習 比喩の坩堝はどこに

一文を長くしようのコーナーです。
比喩に比喩を重ねる文体をやってみます。

もう戻れないと知っていても、僕はただ使われることの無い公園のベンチに我が物顔で眠り込む猫のような君を見つめることしか出来なかった。

空はどこまでも青くて、息が止まりそうなほどの夏を受け止めるためだけに肺を膨らませる。

ああ、と言うだけのアイツは、俺の事を心底嫌いなのに全てを包み隠そうとしたあの女に似ていて吐き気がした。

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散文 街は鯨の目の中に

散文 街は鯨の目の中に

街の音が響く。信号の音が聞こえてきそうな程に、僕の部屋は無味であった。赤から青に変わって、また赤になる。
もうすぐ4時になる。雑念しか存在しない脳裏には、指の先までの意識はない。
信号に従う人が今もどこかにいる。
僕は部屋のベッドの隅で何かを見ているつもり。友はもう眠ったのだろうか。明日の夕方、今起きたと口を揃えて呟くのだろう。
夜はいい。何もしなくても責められない。
だから、いいと思う僕は、何故

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散文 夏の終わりを思い出す

散文 夏の終わりを思い出す

夏の熱を帯びた青が薄い水色の空に変わっていた。そこに黒い点として動くカラスの鳴き声はどこかの工場の音に負けずに私の耳に届く。
あの痛い暑さはどこに行ったのだろう。
空気も涼やかで息がしやすい。
なのに、私の胸には重みがある。
水色の空に鳴くカラス。涼しい風に揺れるカーテン。いつかの何かの記憶と重なり、不安に駆られる。目をつぶると余計に風景がぐるぐる回る。この日々からは逃げ出せたはず。
なのに、その

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散文 闇に溶けきれなかった

散文 闇に溶けきれなかった

私は夜中の公園にいた。彼氏のことを待っている。
風はまだ寒く、空気は澄んでいた。
真っ暗な空間の中、私は1人。ド真ん中に立つ。
風が木を揺らす。
ブランコに座ると私すら揺らす。

私は誰に大事にされたのだろう。
誰を大切に思っていたのだろう。
私は何故こんなところにいるのだろう。

世界は回っているのに、この場所には1人。

街頭の照らす外側は、闇が深くて、私も包こもうとしている。そんな気がする。

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