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散文 夏の終わりを思い出す

夏の熱を帯びた青が薄い水色の空に変わっていた。そこに黒い点として動くカラスの鳴き声はどこかの工場の音に負けずに私の耳に届く。
あの痛い暑さはどこに行ったのだろう。
空気も涼やかで息がしやすい。
なのに、私の胸には重みがある。
水色の空に鳴くカラス。涼しい風に揺れるカーテン。いつかの何かの記憶と重なり、不安に駆られる。目をつぶると余計に風景がぐるぐる回る。この日々からは逃げ出せたはず。
なのに、そのころ付いた傷を癒せず無かったことにした。その罰だろうか。

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