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スーサイド・ツアー(第1話 闇サイトへ、ようこそ)
あらすじ
自殺願望のある者達が、闇サイトを通じて南海の孤島に集まる事に。闇サイトの主催者は、孤島で参加者全員が美食を楽しんだ後1週間後に苦しまない方法での死を約束。
にも関わらず、なぜかその前に1人ずつ殺されてゆく……。
『当サイトでは、30歳以下の自死志願者を募集しています。先着8名で打ち切りますので、お早めにご応募ください』
スマホをいじっていた時に、そんな文章が倉橋翠(くらはし
スーサイド・ツアー(第8話 狂った目算)
「ごめんなさい。あたし、余計なおせっかいに走っちゃって」
深々と美優に頭を下げて謝ると、一美はそそくさと席を立ちあがり、その場を辞して、エレベーターで4階の自室へ上がる。
我ながら、余計なごたくを並べすぎたと彼女は内心反省した。
そして自室のドアを開錠すると、部屋に入る。室内からサムターンキーを回して扉を施錠する。
しかし、自殺願望のある人達の気持ちは、正直一美には理解できなかった。
無
スーサイド・ツアー(第7話 あなたは誰?)
「どうしてよ!?」
井村は自分でも、おのれの声が尖ったのがわかる。
「あなただって自殺しに来たんでしょう? 同じじゃない」
翠が、そう返した。
「だって翠さんは人気タレントで……」
「あたしも井村さんも、同じ人間でしょう? 命の重さに変わりはない。あたしは、自分の人生に疲れちゃったの。これ以上生き続けるのは、もうこりごり」
翠の顔に翳りが生じた。井村には、どうすれば良いのかわからない。
自
スーサイド・ツアー(第6話 残された者達)
「それではみなさん、私はこの辺で退散します。1週間後に戻りますので、後はよろしくお願いします」
案内役の宇沢はそれだけ口にすると、北側のスライドドアを開けて橋を渡り、丸い池の対岸に速足で向かった。
そして向こうに到着すると右すなわち東に行く。そっちにはここへ来る時上がってきた階段がある。
宇沢はそこを降りて、姿を消す。しばらくすると、ここにいるメンバーを連れてきた船が北側の港から出ていくのが
スーサイド・ツアー(第5話 ある計画)
「それは、私にもわかりません」
苦笑と共に、案内役の宇沢が答える。
「この建物を建てた方の趣味なんでしょう」
「建てたのは、どんな方なんですか?」
一美は、さらに畳みかけた。
「私も、よく知らないのです。私としてはそれなりのお金をもらっていますし、その代わり余計な詮索をしないよう釘を刺されています」
一行は、橋の上を歩いて渡った。橋は幅2メートルぐらいある。両脇に手すりがあった。
池の中は
スーサイド・ツアー(第4話 約束の地)
崖の周囲を巡るように道があるが、宇沢は左の方に向かう。他の8人もゾロゾロと付き従った。宇沢の次を歩くのが井村である。その他の者達は、足取りが重い。自殺志願者ばかりだから当然だろう。
やはり井村が自殺願望者とは、一美には信じられない。彼女は1番後ろを歩く。どんな顔ぶれが集まってるのかを、後方から俯瞰して見たかったのだ。宇沢が胡散臭そうな目で、一美を見る。
彼女は、顔をうつむけた。一美のすぐ前を
スーサイド・ツアー(第3話 自殺ツアーの行方)
知的な雰囲気のある男性は銀縁のメガネをかけたイケメンで、身長は185センチはありそうだ。どこかで観たような記憶があるが、井村はなぜか思い出せなかった。芸能人とかではなかったような気がする。
肩幅が広く、筋肉質の体型なので、もしかしたらスポーツ選手かもしれなかったが確証はない。
「あの茶髪の男、変じゃない?」
那須一美は、同じ船上にいるボブヘアーの女性に話しかけた。一美は28歳だ。多分ボブヘ
スーサイド・ツアー(第2話 謎の男)
井村の乗った飛行機は、那覇空港に到着した。空港を出て、指定されたホテルに向かう。絵に描いたような高級ホテルで、宿泊費も飲食代も、全部今回の主催者が負担する。
サイトの説明では主催者は資産家で、人生に絶望した若者に、苦痛のない死を与えたいとの話だった。そして死ぬ前に、生前では味わえなかった贅沢を堪能させてあげたいと書いてあったのだ。
なので井村は無料のルームサービスを存分に味わった。今後のスケ
ミスティー・ナイツ(第35話 最終話 ラスト・スパート)
雲村博士の研究所を襲撃するジェットヘリは、全部で5機。南美島から飛行機で飛んできた畠山はそのうちの1号機に、井口は2号機に乗りこんでいる。
時刻は真夜中の零時を過ぎていた。都心なら街灯やネオンで明るいが、今ヘリの飛んでいる多摩地区の外れの方はそうでもなかった。
「全機、ミサイル攻撃開始」
無線を構えた畠山の声が響き渡り、5機のヘリは一斉に、腹に抱えたミサイルを射出した。その時である。
研究所
ミスティー・ナイツ(第34話 無残な末路)
衣舞姫は研究所の一室を借りると、早速常に所持してるノーパソでハッキングを開始した。鶴本の悪事がハッキリわかるような情報を、探しだすのだ。衣舞姫は最初に鶴本の銀行口座にアクセスした。
政治家としての給料や、法律で決められた範囲内の献金はちゃんと表示されているが、それ以外に一体どうしてこんな大金が入金されるのか、意味不明な入金先が散見される。
疑わしいというだけで、不正なお金の受けとりがあったか
ミスティー・ナイツ(第33話 猿芝居)
「明定様が、今お見えになりました」
その声は、執事のものだ。彼は有能を絵に描いたような男で、鶴本のお気に入りだった。
まるで映画『日の名残り』でアンソニー・ホプキンスが演じたような風格のある執事である。
「よくもまあ、おめおめと姿を現しおって」
鶴本は、自分の口調の苛立ちに気づいた。おそらく顔は鬼面のように険しくなっているだろう。
「いかがいたしましょう? 明定様には、お帰りいただきますか?
ミスティー・ナイツ(第32話 葬送)
木戸脇は丸太のように太い腕で裏切り者を押さえつけながら宣言した。そんな状況の中で今度は別の潜水艦乗りが、まるで猫のように静かに博士の背後に忍びより、雲村をはがいじめにする。
「銃を下ろせ、じいさんよ。でないと首をしめちまうぞ」
博士をはがいじめにした男は、右手を雲村の喉元に当てる。次の瞬間、またまた信じられない状況が起こった。
西園寺が機関銃の引き金を引き、よりによって一緒に裏切った仲間のは
ミスティー・ナイツ(第31話 裏切り)
「番号がわからねえんだ。おれには開けられねえ」
美山は再び、靴で男の腹を踏んだ。男はまるで赤子のように声をあげて泣きはじめた。
「世間はおれ達を『現代のねずみ小僧』とか『日本のアルセーヌ・ルパン』と呼んでるが、厳密には違う。おれ達はアルセーヌ・ルパンと違って人を殺したり、傷つけるのを何とも思ってないからな。特に貴様らのような悪党には容赦しないのがポリシーだ。金庫をすぐに開けるか、拷問されながら生
ミスティー・ナイツ(第30話 惨劇)
美山は口笛を吹いた。
「ありがてえ」
「元々粒島はバブルの頃に成金が島ごと買って、プライベート・リゾートとして使ってたの。そこを設計した建築家のパソコンのファイルからひっぱりだしてきたってわけ。あたしの好きな建築家で、以前からファイルの内容を盗み見て、楽しんでたの。彼のデザインした建造物は、どんな男よりかっこいいし」
「そいつは結構」
美山は思わず爆笑した。
「で、そのプライベート・リゾートが
ミスティー・ナイツ(第29話 敵地潜入)
星空がとても美しい。観てるだけで、吸いこまれそうな気がするくらい。美山はそんな夜空の下、ダイビングスーツに身を包むと、海に潜って島に向かった。
海夢と釘谷も同じ姿で一緒に泳いだ。 浜辺にたどりついた3名は暗視スコープを顔に装着した。周囲は漆黒の暗闇で、島にある建物に、わずかの明かりが見える程度だ。
聞こえるのは、浜辺に寄せる波の音だけである。どこかからひょっこり幽霊やゾンビが出てきても、お
ミスティー・ナイツ(第28話 ダーク・タイム)
残り7名の潜水艦乗りが衣舞姫と共に島に残る。
フォルモッサが再び襲われる可能性があるので、守りを固める必要もあるし、敵の攻撃で破壊されたあちらこちらを修復する作業も残っていた。
美山はジェットヘリで本州に戻る3名の労をねぎらい、当初の約束を上回る報酬を退職金として、振りこむのを約束した。
島にあった金は全部何者かに持ち逃げされたので、東京にいる経理担当のメンバーから報酬を振りこんで