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5大総合商社の2021年度第1四半期決算

こんにちは!
就活アドバイザーをしています総合商社3年目のYasuです。
8月3日、4日に5大総合商社の決算発表がありました。
今回は各社資源分野を中心に好調で、予想を上回る好成績でしたね。

まずは決算発表日を振り返ります。
20年度第3四半期決算と同じ順番での発表となっています。
最近、伊藤忠は最後に発表することが多いですね。

【5大総合商社の21年度第1四半期決算発表日】
8月3日(火) 11:00 丸紅
8月3日(火) 13:30 三井物産
8月3日(火) 14:15 三菱商事
8月4日(水) 12:30 住友商事
8月4日(水) 13:30 伊藤忠商事

20年度の決算をおさらいしますと、伊藤忠商事が4,014億円で1位、次いで三井物産、丸紅、昨年から順位を落とした三菱商事が4位、減損を吐き出した住友商事が5位という結果でした。

昨年度の通期決算分析は以下の記事をご参照ください。

野球に例えると、安定した非資源で2ベースヒットを積み重ねた伊藤忠と資源でホームランを打った三井物産が好調でした。

21年度は伊藤忠商事、三菱商事、三井物産の3社でトップ争いと、丸紅・住友商事の4位争いに注目が集まります。

果たして結果はどうだったのでしょうか。

筆者ってどんな人?
2019年卒で、総合商社にて勤務しております。
趣味:読書とスポーツ全般
出身大学:MARCHレベル
就活時は幅広く業界を見ており、40社にエントリー。面接も70回以上受け、結果的に外資金融、外資コンサル、大手食品メーカー、広告代理店を含む6社から内定をいただきました。
noteでは、就活のコツや総合商社業界に関する記事を中心に書いています。
学歴で諦めない、攻めの姿勢の就活を応援します!
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5大総合商社の2021年度第1四半期決算

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早速、5大総合商社の第1四半期決算を分析していこうと思います。
今回も純利益、キャッシュフロー、今年度見通し対比での進捗率、株価の変動、各社の事業分析に分けて解説していきます。

純利益

毎度ながら一番初めに昨年同期比で純利益を見ていこうと思います。
(前年度比は第1四半期における増加率、減少率を表します)

20年度対比純利益

参考までに日経新聞のまとめ記事も共有します。

第1四半期(1Q)時点での純利益の順番は、伊藤忠商事、三井物産、三菱商事、丸紅、住友商事の順番でした。

5社全てがコロナの影響を受けて不振だった20年度1Qよりも大幅に増益をしています。
三菱商事を除く4商社は四半期ベースで最高益を記録しました。

★伊藤忠は前年同期と比べて2.6倍の2,674億円。
丸紅や住友商事の通期決算見通しを1Qで達成する凄まじい純利益となりました。金属部門が昨年の3.4倍の利益を計上したことが主な要因です。

三井物産、三菱商事もそれぞれ前年同期と比べてそれぞれ3倍、5倍以上の純利益です。
三菱商事は前年度、三菱自動車やローソンの減損に悩まされていましたが、今回の決算では目立った減損はなく、財務体質が改善されてきていると言えるでしょう。

大型減損を19年度に計上した丸紅、20年度に計上した住友商事は、どちらも減損案件がなくなり、純利益が改善されています。
その差はわずか100億円。2Q以降も接戦を繰り広げることが予想されます。

★なぜここまで5商社の決算が良かったのか?
その要因として一番大きいのは、鉄鉱石、アルミニウム、銅の価格が急上昇したことです。

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出典:ダイヤモンドオンライン(https://diamond.jp/articles/-/271433)

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出典:世界経済のネタ帳(https://ecodb.net/commodity/aluminum.html)

上に鉄鉱石、銅、アルミの価格推移のグラフを貼り付けましたが、どちらも20年度以降うなぎ登りですよね。

特に鉄鉱石は昨年と比べて2倍以上まで成長しています。
理由としては中国の向上が鉄鋼生産を増やす動機があることや、投資家マネーが現物に集まってきていることなどが挙げられます。
三井物産のCFOは21年度末あたりに緩やかに通常の水準に戻ってくると予想をしていますが、今年度一杯は資源での収益拡大が期待されます。

資源は非資源と比べて単価が高く、純利益に反映されやすいため、このトレンドが続くと権益を多く持つ三井や三菱が上がってきやすいかと思います。

純利益見通し

次に通期見通し対比で1Qの純利益を見ていきましょう。

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1/4の期間が終了しましたので、21年度見通し/21年度1Qが25%以上であれば順調と言えます。
この指標に照らし合わせると、全ての総合商社が進捗率30%以上であり、かなり順調です。

★1Qで早くも見通しを上方修正したのは2社。
まず三井物産は好調な資源ビジネスを裏付けに期初に発表した見通し、4,600億円を+1,800億円上方修正し、6,400億円に設定し直しました。それでも進捗率30%をキープしているのは素晴らしいです。
次に期初には丸紅と同じ見通し、2,300億円で提出をしていた住友商事ですが、+600億円の2,900億円に変更しています。

伊藤忠は49%という高い進捗率をマークしており、同社のCFOは
「期中に上方修正をする」とコメントしています。

三菱と丸紅も高い進捗率ですので、上方修正の可能性が充分あると言えるでしょう。

キャッシュフロー

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次に前年同期比でキャッシュフローを比べてみます。
いつも話してますが、私の大好きな指標です。

定義を説明します。

基礎営業キャッシュ・フローとは?
営業キャッシュ・フローから営業資⾦、運転資本の増減等を控除した数字をいい、5大総合商社ではよく用いられる指標です。
損益計算書での純利益と違い、営業キャッシュ・フローは売り上げや仕入れなど会社の本業で稼いでいる"お金の量"を表します。利益ではなく、企業が実際に保有するお金で測るのがポイントです。
"企業の財布の中身"と言い換えることができます。

保有するキャッシュの量を測りますので、今後積極的に投資を行う資金があるかを探ることができます。
特に総合商社は任意のタイミングで減損を計上し、急激に純利益が変動する業界ですので、キャッシュ・フローを見た方が良いことも多いです。

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★キャッシュフローを見てみると、昨年度の通期決算に引き続き、三井物産が1位だということが分かります。
前年同期比でも144%増で、素晴らしい数字ですね。
この指標から三井物産は今年度も資源やデジタル分野を中心に積極的な投資を行えることでしょう。

★少し気になるのは、伊藤忠商事です。
1,770億という数字は三井・三菱から少し差をつけられていますね。
IR資料で理由を探ってみたところ、
「固定資産の取得に加え、台湾ファミリーマートの一部売却に伴い子会社から関連会社に区分変更したことによる現金の減少等があった」
と書かれていました。

どの商社も定期的に固定資産は取得しますので、少し疑問が残りますね。
これだけ純利益が好調であったのに、上方修正を行わなかった理由が何かあるのでしょうか?

今後も注目してチェックしていきましょう。

決算前後 株価の変動

次に決算前後での株価の変動を見てみます。
決算発表日の前日の終値と翌日の終値をまとめてみました。

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今回の株価は謎な動きでしたね。
大幅に見通し修正を行った三井物産以外は、大変良い決算であったのにも関わらず、横ばいになりました。
三菱、三井、丸紅が発表を行った8月3日は日経平均が下げのトレンドだったこともあり、伸び悩んだのかもしれません。

「決算の上昇で抜けておこう」と考えた投資家が大勢売り抜けた可能性も高いです。

★総合商社の決算分析をしていて思うのは、株価は純利益見通しと連動しやすいということです。
どんなに四半期で良い成績でも上方修正がなければ、「今後減損があるのでは?」と投資家が懸念をして買いが進まないです。

総合商社株で短期トレードをする方は、ぜひ参考にしてみて下さい。

5大総合商社 各社の分析

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最後に5大総合商社各社の事業分析をします。

★伊藤忠商事
・1Qでの稼ぎ頭は金属カンパニーの779億円。前年同期比で+551億円、純利益全体の30%ほど。次いで、北米建材関連事業が好調な住生活が518憶円、ファミマが属する第8(新規ビジネスを行うカンパニー)が400億円となりました。
→非資源が強い伊藤忠が資源でこれだけ稼いだら他商社は追いつけないですよね。
・「保有するグループ会社のどれくらいが黒字か」を表す黒字会社比率は81.4%
→伊藤忠のみがIR資料に載せている指標です。
・年間の配当金は94円で過去最高
・ネットDEレシオ(有利子負債/自己資本)は過去最良の0.71倍
→財務体質も改善されています。

★三井物産
・稼ぎ頭はやはり金属資源。1Qでの実績が1,190億円。なんと全体の純利益の62%を占めます。それ以外の分野はどれも300億円以下。
→金属資源でホームランを打てなくなったら、結構厳しいですね。
一方、エネルギー分野は12億円のマイナス。事業計画では通期500億円の見込みなので、心配が残ります。
基礎営業キャッシュフローを期初に発表した6,800億円から9,000億円に上方修正。9,000億円のうち4,800億円が金属資源によるもの。
・21年8月から10月までに最大500億円の自社株買い実施を決定

★三菱商事
・稼ぎ頭は金属資源で579億円。純利益全体の約30%
・唯一、電力ソリューショングループでマイナス33億円を計上。
・アルミ精錬事業と三菱HCキャピタル統合関連利益で合計189億円の一過性利益を計上。
→三菱自動車とローソンに減損はなかったです。

★丸紅
・稼ぎ頭は金属で409億円。純利益全体の約38%
・コロナの影響を受けていた航空・船舶やフォレストプロダクツを中心に利益回復
・1株当たりの年間配当金は34円を下限に設定。

★住友商事
・稼ぎ頭は金属で471億円。純利益全体の約44%
・昨年同期比で生活・不動産分野が2.8倍まで回復。
・資源ビジネスは、資源価格上昇とマダガスカルニッケル操業開始により、回復。
→ニッケル鉱山にて目立った減損なし

5商社とも金属分野が稼ぎ頭となり、純利益を引っ張っています。

まとめ

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今回も5大総合商社の第1四半期決算発表をまとめました。
各商社、資源分野を中止に利益を増やしていますね。
資源の三井が資源価格の上昇とともに、どこまで伊藤忠に食らいつけるか期待が高まります。
今後の見通し修正も充分にありそうです。

依然として、伊藤忠、三井、三菱の首位争いと丸紅・住友の4位争いが激しくなってきましたので、2Qが楽しみです。

今日はここまでにします。

2Q決算でも同様の分析をする予定ですので、総合商社や就活テクニックに興味のある方はぜひフォローのほど宜しくお願いいたします。

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