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アニータ少尉のオキナワ作戦(5)、石垣島へⅡ

 過去アップした「エレーナ少佐のサドガシマ作戦」は、「エレーナ少佐のサドガシマ作戦、時系列」「マガジン『エレーナ少佐のサドガシマ作戦』」こちらからどうぞ。

 まだ、サドガシマ作戦、終わっていませんが、アニータ、スヴェトラーナとソーニャの物語でも。台湾侵攻をぜんぜん触れていませんでしたので。単なる輸送任務ということだったですが、それで終わりになるはずもなく・・・

アニータ少尉のオキナワ作戦(5)、石垣島へⅡ

前回の話(4)
次回の話(6)

●今回のお話の肝は、後半部分です。


アニータ少尉のオキナワ作戦(4)、★デート、那覇市内(前回までのお話)

 佐々木がソーニャの袖を引いて、ちょっと離れた。「ソーニャ、私たちもね、くっついちゃったんだよ」と言う。

「え~、私たちって、佐々木さんと藤田さん?」
「違うの、違うの。私と卜井さんと藤田さんの三人が・・・」
「え?どういうことなんですか?ソーニャには理解できません!」
「あのね、形式上、卜井さんと藤田さんが入籍して、私が養子ってことで。事実上の一夫二妻という形に・・・」
「???、ソーニャ、まったくわかりません!一夫二妻って、夫が藤田さんで、妻は卜井さんと佐々木さん二人ってこと??わかりません!」
「まあ、複雑よね。藤田さんを分け合うだけじゃなくて、卜井さんと私も愛情関係になってて・・・」
「・・・に、日本って、変わってるんですね・・・」
「私たちが変わってるのかもね」
「・・・後で、カオルに・・・広瀬二尉に話してみます・・・理解できない・・・」
「まあ、後でね。関係ない話だけど・・・」
「ハァ・・・」

 クルーを乗せてきたタクシーの運ちゃんが「そこのお二人さん、乗ってくの?乗るならどこでも行ったげるよ?」と広瀬に聞いたので「ソーニャ、ちょうどいい。これに乗っていこう。みなさん、また、あとで」と広瀬がソーニャをタクシーに押し込んだ。


★デート、那覇市内、コンドミニアム

 広瀬とソーニャは市内のオーナー事務所でコンドミニアムのキーをもらった。紺野が借りたのは、コンドミニアムというより一軒家。市街地の十字路にある角番の家だった。鉄筋コンクリート製打ちっぱなしの3階建て。

 家を見上げてソーニャが「紺野二佐、こんな家を借りていただいて・・・ありがたいですが、官費の無駄遣いですわ。ねえ、カオル」と玄関前で広瀬を見上げて言う。確かに、一夜の宿でこれはないなあ、と広瀬は思った。支払いは内閣情報調査室(まさか内閣情報調査室にビジネスカードがあるはずもなく、実際は紺野名義のクレカ)で済ませてあった。「二佐がいいと言うからいいんじゃないか?」と二人は玄関を入った。

 玄関を入ると、左手に階段があって、上の階に行く。玄関の正面のドアを開けると、プロレスの道場並の広さのLDKになっていた。「カオル、ここで明日の10時のチェックアウトまで、私たちにプロレスでもさせるつもりでしょうか?なんでこんなに広いの?」「いやぁ、紺野二佐の部屋の選別眼は理解できん。ハウステンボスもそうだったが、ここはもっと豪華だ」

「カオル、私、探検してくる!」とソーニャが自分のバッグを持って上の階に上がった。広瀬がバックからパソコンを取り出していると、上の階から「ヒァ~」とか「おおお!」とかソーニャが叫んでいるのが聞こえた。ソーニャが俺と結婚すると、自衛隊の給料では、こんな家は無理だよなあ、と広瀬は思った。彼女はしばらく降りてこなかった。シャワーでも浴びているんだな。

 しばらくすると、階段をトントン降りてLDKにソーニャがバッグを持って入ってきた。広瀬が目を見開く。黒のシルクのキャミソール。ツーピースでトップスはブラ付きだが、薄くて彼女の乳首が透けて見える。ボトムスはショーツだが、横のカットが深い。
 
「日本はすごい!ロシアと違う!ロシアの別荘並の広さ!おまけにロシアと違って、お湯も水も水圧が高くてジャアジャアでます。カオルもシャワー浴びたらいかがですか?」とソーニャが言う。

「俺はあとで・・・あの、ソーニャ、そのキャミソール・・・」「ああ、これ?これは、アナスタシア少尉から頂いたんです。子供みたいな下着を着るんじゃない!と言われて。ほら、彼女、身長が152でしょう?私は154だから、体型が同じなんですよ。ダメ?似合わない?私、アニーみたいにセクシーじゃないからなあ」と舌を出してアカンべをする。

「いや、ソーニャ、それ、俺、鼻血が出そうだ」「え?鼻血ですか?ティッシュあります!」「違うよ。日本語で、鼻血が出そうなほど興奮する、という意味なんだ」「まあ、カオル!私で興奮してくださったんですか?」「ああ、セクシーだよ」「そうかなあ?お尻も小さいし、胸もないのに?」「それでいい!俺はそのソーニャがいい!変わらずそのままでいて欲しい!」

「カオルがいいと言うなら、このままで・・・」と急にしみじみと自分のキャミソール姿を見下ろす。「あら?このボトムス、あそこの形がわかっちゃうじゃありませんか!シルクだから張り付いちゃう・・・カオル、ソーニャ、ちょっと恥ずかしいです・・・気づかなかった・・・」と内股になって前を隠した。この抜けているところがたまらないな、と広瀬は思う。

 広瀬の前をパタパタ通って、広瀬の横のソファーベッドにもなる方に座って、彼女もパソコンをバッグから取り出した。うつ伏せになって、脚をブラブラさせてパソコンを操作する。

 うつ伏せになったから、前が見えないと思っているんだろうか?その代わりにヒップが見えるんだけど・・・キャミソールのボトムスがちょっと食い込んでいるので、ソーニャの可愛いお尻がはみ出している。プニュプニュしたお尻のお肉が見えてしまう。お~い、これで、どうやったら、俺は、パソコンでレポートが書けるんだ?

「ああ、気が散る・・・レポートが書けないよ」「あら、私、カオルの邪魔をしてます?」「うん、俺の可愛い婚約者が誘惑するから・・・」「え?私、誘惑してますか?」「十分してる。もう、ダメだ。ソーニャ、そのお尻、触っていい?」「え?お尻?・・・あ!見えてる!お肉、はみ出てる!・・・カオル、見ましたね?見ちゃだめです!恥ずかしい!何か、スースーすると思ったんだ・・・」

 ドアチャイムが鳴った。「あ!いいとこだったのに・・・紺野さんお勧めの寿司屋からお寿司が来たようだ」「じゃあ、食事にしましょう。シャワーにする?それとも、私?は後にしましょうねえ」「残念だ・・・」
 
 広瀬が即席で味噌汁を作る。コンビニにオクラがあったので買ったのだ。出汁の素のパックで出汁をとった。「この野菜は何?」「オクラ、英語だとレディースフィンガー」「ロシアにないなあ」
 
 ソーニャがまな板と包丁をシンクの下から取り出した。「オクラはどうします?」「ヘタを取って、1センチくらいに斜め切りにして」「お豆腐は?」「2センチ角くらいに切り分けて」「なんか楽しいです!」出汁にオクラと豆腐を入れる。「煮立たせないようにするんだ」「ふむふむ」
 
「カオル、これは何?」とコンビニで買ってきたパックをソーニャが指差す。「ゴーヤチャンプルーと言って、沖縄の有名な料理だ」「この緑の野菜は?」「ゴウヤ、英語でいうと、ビター・ゴード」「苦いんですか?ロシアにこのような野菜、ないです」「熱帯の野菜だからね」「ゴウヤと卵と豚肉の炒めものなんだ。あら、美味しい!これ、どうします?」「お皿に取り分けて、電子レンジで3分くらい」「ラジャ!」

 寿司にゴーヤチャンプルー、オクラの味噌汁。簡単な料理だったが、ソーニャがうまい!うまい!とたくさん食べてしまう。「私、結婚前に太りそう!」「痩せているから、多少太ってもいいんじゃないの?」

★広瀬のレポート

 食べながら「カオルのレポートの内容はなんなのでしょうか?」と聞くので、広瀬が「今回の北朝鮮の佐渡上陸作戦でなぜあれだけ我が方に被害が出たのか?半数が死傷した北朝鮮人民軍が軍事常識に反して、撤退も降伏もしなかったのか?という点を書こうと思って」

「あれは、彼らの上陸4時間前に察知したという、この遅さが問題ですよね?」
「レーダーも察知できなかった」
「あのホバーは、コンバンⅡ級、35トンとコンバンⅢ級、20トン。全長21メートル、最高時速74~96キロと、全長18メートル、最高時速96キロ。小型漁船のサイズで、時速96キロで接近してきましたもの。これでは、イージス艦もガメラレーダーも遠距離探知は無理だったでしょう。P-1哨戒機が探知できてむしろラッキーだったと思います」
北朝鮮 ホーバークラフト約20隻を黄海配備=潜入準備か
北朝鮮、上陸作戦用ホバークラフトも前進配備か

「それに、積載していたのが、重装甲車輌や戦車ではなく、軽装甲SUVとマウンテンバイクという意表をついた戦備。機動性を考慮したんですね。その機動性に水陸機動団もロシア軍も展開が追いつかなかった。それから、軍事常識をわきまえるのは、民主主義国家の軍隊であって、恐怖で国民と軍隊を支配している独裁者の統治する国家に軍事常識などありません。おまけに、レールガンと私たちの携帯対戦車ミサイルでホバーの半数が潰されたわけですから、撤退もままならず、降伏するなど念頭になく、佐渡のレーダーを目指すほかはありませんでした。私たちのあまり選択の余地のない戦闘だったと思います」

「ソーニャの言う通りだな。こちらは、水陸機動団千名、東ロシア共和国軍二千名で、兵数において劣っているわけでもない。東ロシア共和国軍の豊富な携帯兵器もあった。レールガンまであった。おまけに、我々は、防衛側で待ち構えていた方だ。それが、惨憺たる有様、考えもしなかった死傷者の数。探知の遅延、展開の失敗が原因だ」

「どうしたら良かったのでしょうか?エレーナ少佐もカオルも最善を尽くしたと思います」
「探知、哨戒能力の向上をどう図るか、だよね。衛星搭載合成開口レーダーのデータもオンタイムで入手できたら、違った結果になったかもしれない。千トン、数千トンの艦艇、J-20(殲20)などの航空戦力、これらを想定して、対艦、対空ミサイル防衛を中心に練られてきた自衛隊の離島防衛作戦は、北朝鮮の高速ホバー60隻による上陸部隊など考慮していないのだから、作戦対象をもっと広げないといけない」

「当然、中国の人民解放軍はこの戦闘を観察していただろう。北朝鮮と佐渡は850キロも離れている。それに引き換え、石垣島などの南西諸島と中国本土は500キロだ。北朝鮮のオンボロホバーと違い、人民解放軍のホバーは、積載量も大きい。早急に、水陸機動団もこの戦闘を参考に、南西諸島などの離島防衛作戦を練り直さないといけないなあ」

「紺野二佐が言われておりました。『人民解放軍が南西諸島に侵攻してきた場合、エレーナ少佐揮下の諸君らロシア軍最強女性部隊をオスプレイやC-1輸送機で石垣島に降下してもらうよう、ジトコ大将にお願いするか?まさかね。じゃあ、アメリカ海兵隊が助けてくれるかね?まさかだな。相手は核保有をしている大国。そうそう、核保有国相手に戦争を開始できないのは、ウクライナでも証明済みだ。自衛隊は、自衛隊だけで離島防衛をせざるを得ないんだ』って」

「まさにそうだ。『自衛隊は、自衛隊だけで離島防衛をせざるを得ない』、米軍も核抑止力を持つ中国とはことを構えたくないのはウクライナの例でも明白だ。干渉せず、ウクライナのように、自衛隊に武器供与する程度だ。だから、今回のサドガシマ作戦は離島防衛の作戦変更のいい材料になる」

「カオル、私たち、結婚したら石垣島に住むんですか?」「そうなるかもしれないなあ。今回の水陸機動団の派遣が、この台湾有事の間だけなのか、恒久的なものなのか、まだわからない」「私、ロシア軍を除隊してしまうから、一般の民間人になりますよね?それだと、カオルと一緒に闘えない!」「奥さんと一緒に闘う自衛隊員なんて聞いたことがないよ」「そうだ!紺野二佐に相談して、私を自衛隊に採用してもらいましょう!そうしたら、カオルと二人で闘えます!」

「そういうマンガかドラマみたいな展開、現実にはあり得ないよ」
「カオル、忘れてます!サドガシマ作戦だって、北朝鮮の佐渡ヶ島上陸作戦だって、マンガかドラマみたいな展開に等しく、現実にあり得ないと思っていたことが現実になったんですよ?」
「・・・確かに、言われてみればそうだ。だいたい、俺とソーニャがここにこうしている、なんてことも数週間前には現実にあり得ないと思っていたことだからなあ」
「そうですよ!これは奇跡に近いことです!」
「まあ、これでレポートの骨子はできたな。さすが、俺のフィアンセ!」
「じゃあ・・・」

「じゃあ?」
「サッサと後片付けをして・・・え~っと、日本語でこういう時は・・・あ・な・た、シャワーになさいます?それとも、私?」と広瀬にヒップを向けて、キャミソールの裾を持ち上げる。
「あ!そういうアニーみたいなことをする!ダメです!ソーニャ、お仕置きするよ!」
「お仕置き!じゃあ、早く、お二階に行きましょうよ」

★那覇出港、石垣島へ、燃料気化爆弾

 積載物を沖縄の自衛隊にハンドオーバーして、ペレスヴェートとオスリャービャは一路石垣島を目指した。沖縄から約420キロの距離だ。曳航して両艦と同道していた強行武装揚陸艦「ポモルニク」四艦は沖縄で別れた。
 
ロシアの強行武装揚陸艦「ポモルニク」と海上自衛隊の揚陸艇「国産計画」
Russia Rolls out NEW engines for latest Project 12322 Zubr-class amphibious assault hovercraft
LCAC Air-Cushion Vehicle Landing & Unloading LAV-25 Amphibious Vehicle

「そう言えばアニータ、気づいたんだけど、船内ドックの一番奥にあるのは、あれはまさかTOS-1か?」と紺野がアニータに聞いた。
「ハイ!そうです。通称、ブラチーノ。サーモバリック爆薬弾頭ロケット弾を発射する多連装ロケットランチャーであります」
「なぜそんな物騒なものがここにある?」
「佐渡で積載する時に、急いでいたものですから、一番奥に積んでしまいました。03式や12式、その他の積載物が邪魔で、本当なら今回沖縄でおろすつもりでした。だから、石垣島で残りを降ろした後、帰りの沖縄寄港で自衛隊にお渡しします。研究のため、と装備庁が言ってます。ジュネーブ条約違反の兵器ですから、今は信管も抜いて、弾体も外してあります
TOS-1
ロシア使用の「燃料気化爆弾」は「TOS-1」か その兵器特性と見えてくる戦場の現状

「おっかない代物だな」と紺野。
「そりゃあ、もう、ひどいです。アイロンマンⅠのトニースタークのジェリコミサイルよりもひどいですよ。TNT爆薬なら爆風は一瞬ですが、燃料気化爆弾は、爆風が長い間続きます。爆風だけで被害を与えます。その仕組は、信管が作動して、一次爆薬が起爆、液体燃料が高温高圧になって、圧力が限界点に達した瞬間に液体燃料の放出弁が開きます。急激な圧力低下で液体燃料が蒸発、秒速二千メートルの高速で噴出。液体燃料が蒸発して蒸気雲が形成され、着火されて蒸気雲爆発を起こします。近傍にいる人間は、酸素がない状態で、超高圧下で窒息死、内臓破裂が起こります。私はその場に絶対にいたくありません」
TOS-1A 24-barrel thermobaric multiple rocket launcher
The Jericho Scene | Iron Man (2008) [4K]
Outbreak (1995) - You'll Have to Take Us Out Scene (6/6) | Movieclips

「ふ~ん、それ、対艦、対空用に使えるものかね?」
「このTOS-1は対地用ですけど・・・使えないこともありませんわ。例えば、ペレスヴェートの後部甲板に設置して、スティールワイヤーで車輌を固定して使えますね。これは改良版で射程が6キロです。標準が問題かな?対艦では数発で敵艦の人員の戦闘能力を無効化できるでしょう。対空だと、戦闘機正面の距離に信管をセットして、爆風に突っ込んでくる機体を破壊できると思います」
「もちろん、使うつもりはないけど、通常爆薬弾体と違って、何発も必要ない、ってことだね?」
「米軍が、携帯用の手榴弾の発射に使われているグレネードランチャーM203でサーモバリック弾の発射テストを行ったそうです。M16だと、敵の分隊を1つ壊滅させるのにかなりの量の弾薬が必要になりますが、空中炸裂型サーモバリック爆薬手榴弾なら、たった1発で敵の分隊を全滅させられるそうです」
殺傷能力の高いサーモバリック爆弾、「市街戦版」を米軍が開発中

「将来も使われないことを祈ろう」

★石垣島、離島フェリーターミナル

 ペレスヴェートとオスリャービャは、自衛隊沖縄地方協力本部石垣出張所のある離島フェリーターミナルに着岸した。

ひゅうが

 岸壁には、「ロシア軍は帰れ!」「ウクライナから撤退せよ!」「石垣島を非戦力、無抵抗の島に!」などというプラカードを掲げた反対派の人間が数十名、集まっていた。
 
 紺野は、ペレスヴェートの前部76.2 mm単装両用砲のあるデッキにいて、岸壁の様子をビデオで撮影していた。彼女の横に来たアニータが、不愉快そうにデモ隊を眺める。「まったく、ペレスヴェートとオスリャービャは日本政府にチャーターされた貨物船みたいなものですわ。所属も東ロシア共和国海軍で、ロシア連邦軍じゃありません。佐渡で闘ったのも日本国土防衛のため。ああいった、自己の思想信条を主張するために事実を湾曲する人間はどの国にもいるもんですわね」と紺野に言う。
 
「内閣情報調査室、自衛隊情報保全隊本部情報保全課としても、ああいった輩は放っておけない。もちろん、私に民間人の逮捕権はないけどね」「紺野二佐、日本ではロシアと違って、ああいう反国家的活動は取り締まれないんでしょうね?」

「そうだけど、破防法とかスパイ行為等の防止法とか、法律はあるんだ。ただ、施行すると、左がうるさい。ま、こうやって、ビデオに撮っておいて、後で、顔認識をさせてみようと思う。かなりの人間が中国人工作員、破防法違反の組織崩れで石垣島に移民した人間だと思う。島民も混じっているが、奴らにそそのかされているだけだ

「アニータ、今晩、散歩しに行こうよ。スヴェトラーナも誘って」
「夜は空いていますけど?どちらへ?」
「人民解放軍のスパイ観察に行こう。目立たない服は持ってる?」
「全身黒のレオタードならありますが・・・筋トレ用の・・・」

「そう、全身黒のレオタードって、アニータとスヴェトラーナが着たら、男どもは興奮した猿みたいになるだろうな?私は、バラクラバ帽を持ってきているから。それを被ってもらう。拳銃は?」
「ありますが、日本国内に持ち込めませんよ?」
「内閣情報調査室、日本国政府が許可します。午後11時に警察庁警備局公安警察の人間が迎えに来るから、彼らと同道する。内閣情報調査室、自衛隊情報保全隊に逮捕権はないからね。ただの盗聴と観察だから、何も起こらないだろうけど。アニータとスヴェトラーナが一緒なら、最強のボディーガードだよ」
「面白そうですわ。でも、公安警察の人が文句を言わないかしら?」
「彼らは、あなた方東ロシア共和国軍のファンだよ。今やこっち側の人間だから。特に、女性兵士はお好きだそうだ。なんなら、ジトコ大将に許可を日本国政府からとりつけてもいいわよ」
「紺野二佐、了解であります!スヴェトラーナにも指示しておきます!」

「いいねえ。今まで、日本国はアメリカ以外に一緒に闘ってくれる国家がなかった。今や、東ロシア共和国がいる。日本は孤独ではなくなったのさ」

★石垣島、自衛隊ミサイル部隊周辺の農家の納屋

 その夜、自衛隊沖縄地方協力本部石垣出張所を徒歩で出た紺野、アニータ、スヴェトラーナは、八重山郵便局近くの路上で迎えの車を待っていた。紺野は白のボタンダウンにジーンズ、アニータとスヴェトラーナはダンガリーのシャツにストレッチジーンズという格好だった。二人の少尉は、服の下に黒のレオタードを着ていた。

 県道87号を黒のハイエースが来て、紺野たちの前に止まる。スライドドアが開いた。紺野が何も言わず乗り込む。少尉二人もボストンバッグを車内に放り込んで乗り込んだ。後部座席には、黒のポロシャツに同じ色のジーパンを着た男が座っていた。
 
 アニータは、公安警察というからロシアのFSB(KBG)のいかつい職員を想像していたのだが、それとは違って、やさ男だった。彼が「紺野さんですね。こちらは土屋(アニータ)さんと本間(スヴェトラーナ)さんですね。私は富田、としておきましょうか」と紹介をそそくさとすませて車を出させた。富田の私たちの身上調査はできているようね、とアニータは思った。

「今日の目的地は、石垣島の石垣市平得大俣にある陸自駐屯地周辺にある農園の納屋です。設置してるCCDカメラが木箱を早朝に搬入している様子を撮影していました。画像を解析すると、携帯型の兵器のようです。お二人には、納屋に侵入して、その木箱の中身を撮影していただきたいのです」と富田が説明した。

「二人共、あなた方がロシア軍だから依頼したんじゃありませんからね。ここ石垣島に今いる中で、あなた方が最適な人材だからお願いしたの。政府を通じて東部軍管区にも打診したわ。エレーナ少佐とも話しました。あなた方の軍の記録は入手した。レンジャーの成績は特A級。あなた方、ピッキングまでできるのね?すごいわ。少佐は『なんでそんな面白そうなことに私を呼んでくれないの?』って言っていたわ」

「紺野さん、お任せ下さい。ツール、あります?」とスヴェトラーナ。富田が二人にツールを渡す。「これがピッキングツール。赤外線カメラ。赤外線フラッシュ付きでシャッターを押せば全てオートです。オペ用手袋。使うことはないと思いますが、拳銃はお持ちで?」

「二人共、これですわ」とアニータが背中に差した銃を取り出す。外付け消音器(サプレッサー)をポケットから取り出す。富田に渡した。

「ほほぉ、PBですね。初めてみました。アフガンでスペナッズが使っていた銃ですか。日本には入ってきてません。暴力団の話ですが。暗殺などの特殊任務用途で使用するもんですな」
PB (拳銃)

「富田さん、彼女たちがこっち側で良かったわね。彼女たち、北朝鮮の兵士を数十人殺傷できるわよ。もちろん、中国人も」
「紺野さん、佐渡では、私たち、指揮をしてましたので、戦闘に参加してませんよ」とスヴェトラーナ。「あら、エレーナ少佐が言っていたもの。アカデミー出のヤワな私やアデルマン、アニー、ソーニャじゃあ、あの二人に敵いっこないわよ、って」「そんなことはありません。私たち、か弱い乙女ですから」「まぁ、そうしておきましょう」

 八重山郵便局前から目的地まで9.2キロ、車で17分だった。駐屯地の十字路の手前に目的地の農園があった。夜間は無人のようだ。ハイエースの後部で二人はシャツとパンツを脱ぎ捨てて、体にピッタリしたつなぎのレオタード姿になった。紺野に渡されたバラクラバ帽をかぶる。黒の手術用手袋を付けた。目と口の周りに炭を塗る。
 
 すごいな、プロだ。日本の自衛隊でもこういう人材はあまりいないだろう。こっちに来ている水陸機動団隊員よりも能力は上だろうな。それに自衛隊だと物議を醸すが、友軍のロシア軍だから目的に合致する。おまけに・・・ものすごい美人じゃないか?と富田は思った。

「お二人とも、時計を合わせます。1時18分30秒・・・19分」「オッケー!」「1時40分にここに戻ってきます。成果がなくても20分で完了です」「ラジャ!」

 二人は87号線沿いの道を忍び歩く。農園は塀も何もなかった。道路沿いの建物の裏の納屋に近づいた。納屋はごく普通の南京錠で施錠されていた。アニータが富田に渡されたピッキングツールで解錠する。30秒。スヴェトラーナは音が漏れないように蝶番にミシン油をさした。
 
 納屋の奥に木箱が5つ、積み上げられていた。長さ1.6メートルくらい、断面が40✕40センチの直方体の箱が4箱だった。これも普通の南京錠で施錠してある。アニータがサッサと解錠する。
 
 木箱の蓋を開けると、中身は、中国製69式40mm対戦車ロケットランチャーだった。ソ連のRPG-7の無断コピー品だ。同じサイズの本体の箱が4箱。もう一つの大きな木箱には、成形炸薬弾が8基入っていた。スヴェトラーナが赤外線写真をすばやく撮った。
 
 また施錠して、すべてを元に戻した。二人は左右を見回し、異常がないかどうか、確認した。オッケーだ。外に出て、納屋の扉を閉め、施錠する。また、元の道を通り、道路沿いに。1時39分。ハイエースがすぐ近づいた。後部ドアが開かれ、サッと二人は乗り込む。
 
「ご苦労さまでした」と富田。「富田さん、物騒なものがあったわ」とアニータ。「中国製69式40mm対戦車ロケットランチャーが4基。成形炸薬弾が8基。これは自衛隊駐屯地攻撃用かしら?」

「たぶんそうでしょうね。中国の南部戦区が台湾の太平島に侵攻してから三週間経ちましたが、ここ数日、この島からの暗号通信の頻度が以前の5倍になっています。起こってほしくはありませんが、石垣島とこの周辺の島は、台湾本土侵攻には目の上のたんこぶ。さらに新石垣空港は二千メートル級滑走路で、占領すれば奴らにとっては魅力的です。ここに奴らが来る確率は非常に高くなった、と言えるでしょう」

「こういう兵器を隠し持っているシンパを逮捕しないんですか?」「もう少し、泳がせておこうと思ってます」「なるほど」

「お二人はいつまでご滞在なんですか?」と富田が聞く。「72時間の予定ですので、明後日出港です」とアニータ。「残念だな。数週間いてほしいくらいです」「富田さん、無茶言わないでよ。アニータとスヴェトラーナのとおちゃんが佐渡で待っているんだから」と紺野。「まあ、そうですな。日本の問題ですしね。いやいや、ありがとうございました」

三人を郵便局前で降ろした後、富田は車の中で一礼した。ハイエースは速やかに走り去った。
 
「アニータ、スヴェトラーナ、ご苦労さま」と紺野。「お安い御用ですわ」とアニータ。「どうだい?もう、宿舎に帰って寝る?それとも、私の部屋で一杯やる?ウィスキーがあるわよ。バランタインの30年もの。飲んでいかない?おいしいソーセージもあるわ」と二人に聞いた。二人が顔を見合わせてうなずく。「では、お言葉に甘えまして、お伺いいたします」とスヴェトラーナ。

「いいねえ、話が早いわ。あのさ、三本あるから、ボトムズアップね!」
「・・・」

前回の話(4)
次回の話(6)


島崎藤村 - 椰子の実

島崎藤村作詞・大中寅二作曲

名も知らぬ 遠き島より
流れ寄る 椰子の実一つ

故郷(ふるさと)の岸を 離れて
汝(なれ)はそも 波に幾月(いくつき)

旧(もと)の木は 生(お)いや茂れる
枝はなお 影をやなせる

われもまた 渚(なぎさ)を枕
孤身(ひとりみ)の 浮寝(うきね)の旅ぞ

実をとりて 胸にあつれば
新(あらた)なり 流離(りゅうり)の憂(うれい)

海の日の 沈むを見れば
激(たぎ)り落つ 異郷(いきょう)の涙

思いやる 八重(やえ)の汐々(しおじお)
いずれの日にか 国に帰らん


マガジン『エレーナ少佐のサドガシマ作戦』


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