マガジンのカバー画像

発行部数1万部のローカル新聞でみたこと

26
某地方都市で発行部数1万部という超ローカル新聞社の記者をしていました。全国紙とは違った田舎のほほえましくもエグいできごとについて紹介します。
運営しているクリエイター

記事一覧

郷土紙という超ローカル新聞(連載27)年寄りは冬によく死ぬ

郷土紙という超ローカル新聞(連載27)年寄りは冬によく死ぬ


新聞社恒例の年末特集記事

新聞の規模を問わず、12月になると掲載されるのが「今年亡くなった人」をまとめた記事です。
本郷日報(仮称)では、おおむね12月後半、各分野別の回顧記事の特集が終わった後に載せていました。
1月からの訃報をすべて集めて掲載するだけで、紙面を埋めるのが楽な記事です。
1年を振り返る新聞社恒例の年末特集記事のひとつです。
12月の後半に亡くなるとまとめ記事に載りません。記事

もっとみる

郷土紙という超ローカル新聞(連載26)名ばかり支局長は、きょうも支局でお茶を飲む


支局長を任ず

県の南地域、3市5町人口60万人という小さなエリアで1万部ほど新聞を発行している本郷日報(仮称)のような新聞社でも、本社のほかに支局を持っています。

本郷日報の支局長ポストには、キャリア15年以上のベテラン記者がなることが多いです。支局勤務が10年くらい経ったころ、前支局長の本社異動をきっかけに内部昇格します。本社勤務の担当記者が突然支局長になることはほとんどありません。
政治

もっとみる
郷土紙という超ローカル新聞(連載24)豆記者って何よ

郷土紙という超ローカル新聞(連載24)豆記者って何よ


新聞を身近に

せっかく10月15日から1週間が新聞週間となっているのでこのネタをぶつけてみました。
郷土紙のような発行エリアが狭く部数が少ない新聞だけでなく、多くの新聞社が行っていることの一つに「小学生新聞コンクール」があります。

事業の名称、詳細は各紙で微妙に違いますが、壁新聞のような形式で新聞社に応募してもらい、金賞、銀賞、銅賞、社長賞、編集局長賞、デスク賞ほかいろいろな賞を出すようなヤ

もっとみる
郷土紙という超ローカル新聞(連載23)税務署も見ている?

郷土紙という超ローカル新聞(連載23)税務署も見ている?


農業は地元の重要産業

食欲の秋と並ぶといいますか、関連しているのが実りの秋です。秋に収穫期が訪れる野菜や果物はたくさんあります。さつまいもだけではありません。

農業も盛んな遠浜県(仮称)南部地域は、さまざまな農産物を生産。地域内消費だけでなく、東京、大阪など都市部へもたくさんの農産物を出荷しています。地元の重要産業という位置づけです。
国内全体では就業者割合が5%を切った第一次産業(農業、漁

もっとみる
郷土紙という超ローカル新聞(連載22)顔の大きさと同じ芋といっしょにパチリ

郷土紙という超ローカル新聞(連載22)顔の大きさと同じ芋といっしょにパチリ



秋の定番ネタ

地域密着、道で見かけたような、夕ごはんの話題レベルのできごとをニュースにしてしまうのが発行部数1万部の零細新聞、本郷日報(仮称)です。

スポーツの秋や芸術の秋、読書の秋…
なんといっても食欲の秋こそが日本の秋です。
もう、これだけで優勝!
食べ物に関することは、記事としても広く注目されます。秋になると本郷日報の紙面に必ず掲載されるのが地元の幼稚園児たちの芋掘り。季節の恒例記事

もっとみる
郷土紙という超ローカル新聞(連載21)寄付をするなら新聞社…      を呼べ

郷土紙という超ローカル新聞(連載21)寄付をするなら新聞社… を呼べ


タイガーマスク運動?

地域に密着した情報を取捨選択(編集)し、新聞紙面にまとめ読者に届けるのが郷土紙。商圏人口60万人程度、発行部数1万部の小さな新聞では、地元企業や団体、学校のボランティアクラブなどの寄付行為のニュースも定期的に記事になります。

地元でまあまあ羽振りのいい企業、人気の飲食店、ロータリークラブやライオンズクラブなどの奉仕団体、青年会議所(JC)、学校や幼稚園で行われたバザーや

もっとみる
郷土紙という超ローカル新聞(連載20)原稿用紙健在

郷土紙という超ローカル新聞(連載20)原稿用紙健在



令和でも原稿用紙

いまだに紙の原稿用紙が残っているのが新聞社です。しかも紙名入り!
仕事や大学のレポート提出のような場面でも手書き提出が減った21世紀の話です。
今でも原稿用紙を目にすることがあるのは、新聞社以外なら、小学校の作文の授業と昔ながらの文豪先生がいらっしゃる出版社くらいではないでしょうか。

私がそんなクラシカルな新聞社をやめてから10年ほど経ちました。
さすがにこのネタは、お蔵

もっとみる
郷土紙という超ローカル新聞(連載19)載っていればOK!

郷土紙という超ローカル新聞(連載19)載っていればOK!



地元のことならなんでもニュースに

郷土紙は、地元に関するできごとをニュースとして紙面で紹介するメディアです。
おもに記事にするのは、新聞発行エリアの市町村の選挙関連、議会の様子、行政情報、地元企業の動向、地域で問題になっていること(医療や教育、学校、交通問題、市街地再開発など)です。
このような固い話題だけでなく、地域の祭りや伝統行事、小学校の運動会、地元農家の桃や柿の出荷が始まった、市内の

もっとみる
郷土紙という超ローカル新聞(連載18)再開告知←誰得?

郷土紙という超ローカル新聞(連載18)再開告知←誰得?


待望ではなくても連載再開!

このシリーズ、前回のエントリーから1年半以上あいてしまいました。
その間に、少なからずフォローくださった方、生暖かく見守ってくださった方、感謝しています。
あまりにも更新が少ないので、解除してしまった方も多いですよね。
待望ではありませんし、誰得?って感じですが連載再開いたします。

本連載は、2020年夏にスタートしました。しばらく続いたのち、2年ほど休肝、休刊。

もっとみる
郷土紙という超ローカル新聞(連載17)逮捕されたからといって名前が出るわけではありません

郷土紙という超ローカル新聞(連載17)逮捕されたからといって名前が出るわけではありません

逮捕されたら地元の有名人!
日本では、事件の被疑者や交通事故の第一当事者(事故の過失の多い側)の身柄を拘束、いわゆる逮捕した場合、報道機関に向けて「詐欺容疑で邦立市の幹奈汚斗57歳、男性を現行犯逮捕した(固有名詞は架空・仮名、以下同じ)」などと発表します。

少年法で保護されている未成年を除き、逮捕された人は原則として実名で発表されます。新聞やテレビでは、事件や事故の重大性や注目度を各社で判断しな

もっとみる
郷土紙という超ローカル新聞(連載16)地域紙の存在意義はどこにあるのか

郷土紙という超ローカル新聞(連載16)地域紙の存在意義はどこにあるのか

ついに全国メディアでも報道
2022年1月25日のニュースウオッチ9の中で、地域紙の廃刊や休刊が相次いでいることが報道されました。その中で、2021年3月まで北海道根室市で発行されていた根室新聞を再び発行させようという動きを取材し、その取り組みを紹介していました。※後継の日刊紙(題字も同じ?)を発行することになるようです。参考出典:朝日新聞2021.11.19
NHKの夜のニュースという全国メディ

もっとみる
郷土紙という超ローカル新聞(連載15)この記事は記者が書いていない

郷土紙という超ローカル新聞(連載15)この記事は記者が書いていない

【ローカル新聞らしからぬ記事】地方新聞(県紙、郷土紙)は、地元の話題を中心に掲載しています。
全国的なニュースといえば地元に関係がある政治や経済のニュース程度。県を代表する県紙は、テレビのニュース番組で扱うようなヘッドライン的ニュースもありますが、それ以外は、基本的に地域のニュースを記事にするのが地方紙の役割です。

政治なら県政や市政がメイン。経済は、地元企業の動向と県内や地域の景況。、事件も基

もっとみる
郷土紙という新聞(連載14)左側にはいつもブーメランが!

郷土紙という新聞(連載14)左側にはいつもブーメランが!

【見慣れない大刷りが!】取材から帰ると、私のデスクの上には見慣れない大刷りが2枚置いてありました。
大刷りとは、入稿された記事と写真を紙面として編集した印刷前の原稿です。ゲラというほうがわかりやすいかもしれません。

記事を書いた記者とデスク、編集局長、紙面を組んだ整理記者らに必要な紙面(ページ)が配られます。
通常、大刷りは記事を入稿した後にもらうものです。
午後の早いうちにもらうとしたら、前日

もっとみる
郷土紙という超ローカル新聞(連載13)コーヒーチケット買収事件

郷土紙という超ローカル新聞(連載13)コーヒーチケット買収事件

【代打取材】遊軍記者を用意できるほど人員的にも経営的にも余裕がない郷土紙では、新人が遊軍を兼ねることもあります。もちろん本来の遊軍記者のような鋭い切れ味のキャンペーンを企画するわけではありません。担当記者が同じ時間帯に取材案件が重なったなど物理的に難しい場合の代理程度のことです。新人に回ってくるのは、写真を撮って資料をもらい、ちょっとだけ話を聞けばいいような簡単な案件ですから。

本社がある本郷市

もっとみる