小溝拓

「アカデミック先生」として、大学院でのスポーツマネジメントの知見とオタクレベルのスポー…

小溝拓

「アカデミック先生」として、大学院でのスポーツマネジメントの知見とオタクレベルのスポーツ知識を融合させた『New体育論』を展開。R5年度末に小学校教諭を退職。2024年1月28日に自身初の単著出版。X(旧Twitter)やvoicyも配信中。

マガジン

  • New体育論-Management Perspective-

    小学校で体育を指導しながら、スポーツ産業のマネジメントを学んだ私が、スポーツが発展するためにあるべき体育の姿を様々な切り口から解説するシリーズ。これまでにはなかった「新しい体育の考え方」をマネジメントの視点で理論から実践まで幅広く紹介!

  • New体育論 -Practical Perspective-

    大好評だった前作マガジン『New体育論 -Management Perspective-』の【実践編】だけを集めた新シリーズ。そのまますぐに使えるゲーム事例や単元中の教師のマネジメント実践などを詳しく紹介。新種目も随時更新中。

  • 運動嫌いがゼロになる!子どもが考えて楽しむ体育ゲーム 動画集

    2024年1月出版の拙著『運動嫌いがゼロになる!子どもが考えて楽しむ体育ゲーム』内で紹介されているゲームのプレイ動画です。 マガジン内の記事や動画は、書籍を購入した方のみが見られる設定となっております。

記事一覧

固定された記事

体育とは、マーケティングである。

「体育はスポーツとは違う」「体育が目指すところは何だ」 「体育は子供をスポーツ嫌いにしている」 などといわれるようになって久しい。 なぜこういわれるようになったか…

小溝拓
3年前
72

「体育」の意味を改めて考える

昨年度末で退職し、この4月は次の仕事までのモラトリアムだった。今はもう自分で体育の授業をすることはないが、次の仕事もまったくの無関係ではないので、久しぶりにでき…

小溝拓
2週間前
27

体育における教師の介入モデル

今回は、体育における教師の子どもへのかかわりについて深く掘り下げる。教科書の存在しない体育では、教師の「ここに向かわせたい」という主観的なイメージが非常に強く影…

小溝拓
2か月前
53

【実践編】ミッション達成型おにごっこ~逃走中~

おにごっこにはさまざまなバリエーションがあり、各変数を調整することで無限にオリジナルおにごっこを作ることができる。そして、それらの変数の構造化は別稿でしてきた(…

小溝拓
4か月前
31

【実践編】ゴール型ゲーム~サッカー~

1.「ゴール型ゲーム」の特徴そもそも体育においては、「サッカー」を指導するのではなく、「ゴール型ゲーム」を指導するのであり、そのための題材がサッカーやバスケット…

小溝拓
6か月前
110

評価のときにもつべき5つの視点

教師に限らず、すべての人は何かしらの対象を評価している。個人の成績かもしれないし、自分の健康状態かもしれないし、今日訪れたレストランの料理の味かもしれない。学校…

小溝拓
7か月前
22

【実践編】マット運動×ゲーム ~カードバトル~

今回は、マット運動の新たな実践スタイルを提案する。これまでのマット運動といえば、「開脚前転」や「後転」などの技がテーマとなり、全員が同じ技を練習することが当たり…

小溝拓
8か月前
137

運動会の表現種目に関する一考察

ここ数年はさまざまな分野で「あたりまえの見直し」がされてきている。学校もその例外ではなく、各校の努力で様々な部分にメスが入れられていることだろう。特に大きな見直…

小溝拓
9か月前
26

「面白い!」「うれしい!」「楽しい!」の意味とその違い

私の記事を読んでくださっている方は、少なからず体育や子どもの運動指導に関心があるだろう。多くの方があるいは教師や指導者として子どもの前に立っていると想像する。自…

小溝拓
9か月前
41

体育は「study」か「play」か

体育をなんとかしたいと考えている教員はとても多い。積極的に研修に参加して専門性を高めようとしているモチベーションに満ち溢れた教員は、体育にとって希望の光である。…

小溝拓
9か月前
54

体育における学習者の「解放」

このマガジンでは、体育に関連する具体的な実践だけでなく、しばしば哲学的なテーマで考察を展開してきた。「中動態」や「エトス(ethos:倫理)」、「贅沢」といった概念…

小溝拓
10か月前
11

体育は、目的を「超越」できるか。~体育における「贅沢」~

「体育とスポーツのギャップを埋めることはできないのか」 この漠然とした問いから私の知的探求は始まっている。これまでもマガジンで50本近い記事をまとめてきたが、具体…

小溝拓
1年前
19

楽しい『おにごっこ』のつくり方8選

だれもが好きな遊びといっても過言ではないだろう「おにごっこ」。氷おに、ドロケイなどが有名だが、実は多くの遊びやゲームの『原種』とよんでもいいくらい、その根底的な…

小溝拓
1年前
78

なぜ体育は「エンタメ」になれないのか?

先日私は次のようなツイートをした。 この真意を知りたいというコメントをいただいたので、私がこのように感じた理由を本稿にまとめることとする。まず簡単にロジックの整…

小溝拓
1年前
44

今年度の体育を総括する

1年間の学級が終わりを迎えた。今年度は昨年度と同じ学年を持ちあがったが、クラス替えもあって初めての子と2年連続の子がシャッフルされた学級だった。この1年間も私の…

小溝拓
1年前
29

【実践編】授業マネジメント~ハンドボール~

過去に実践した「ハンドボール」は、多くの方に評価していただけた自身を代表する実践の1つである。前回は4年前の4年生での実践だったが、今年度5年生で改めて実践した…

小溝拓
1年前
36

体育とは、マーケティングである。

「体育はスポーツとは違う」「体育が目指すところは何だ」
「体育は子供をスポーツ嫌いにしている」
などといわれるようになって久しい。

なぜこういわれるようになったかといえば、それは「体育」に求められているものが時代とともに変わったからだ。
学校が扱う「体育」は、時代とともに学習指導要領の改訂とともに「修正」されてきた。しかし、その変化のスピードは社会のそれに比べると非常に遅く、「修正」程度では到底

もっとみる

「体育」の意味を改めて考える

昨年度末で退職し、この4月は次の仕事までのモラトリアムだった。今はもう自分で体育の授業をすることはないが、次の仕事もまったくの無関係ではないので、久しぶりにできたゆったりとした時間にも、体育について考えを巡らせていた。

新年度の体育を考えるオフラインイベントへの参加、体育・スポーツ経営学の研究をしている大学の先生とのディスカッション、為末大氏の著書『ぼくたちには「体育」がこう見える』をはじめとす

もっとみる
体育における教師の介入モデル

体育における教師の介入モデル

今回は、体育における教師の子どもへのかかわりについて深く掘り下げる。教科書の存在しない体育では、教師の「ここに向かわせたい」という主観的なイメージが非常に強く影響する。そして、その達成に向けてさまざまなアプローチで子どもに指導や声かけをしていくのだが、それにはいくつかのパターンがあることが分かった。

本稿では、教師が子どもの活動に介入していくときの役割と介入するポイントを整理することで、教師の行

もっとみる
【実践編】ミッション達成型おにごっこ~逃走中~

【実践編】ミッション達成型おにごっこ~逃走中~

おにごっこにはさまざまなバリエーションがあり、各変数を調整することで無限にオリジナルおにごっこを作ることができる。そして、それらの変数の構造化は別稿でしてきた(『楽しいおにごっこのつくり方8選』を参照されたい)。

一方で、TV番組の企画でもあり、子どもたちの間でも非常に人気の高い「逃走中」というおにごっこゲームは、また違う要素が含まれる。そこで本稿では、一般的なおにごっこと「逃走中」の違いを整理

もっとみる
【実践編】ゴール型ゲーム~サッカー~

【実践編】ゴール型ゲーム~サッカー~

1.「ゴール型ゲーム」の特徴そもそも体育においては、「サッカー」を指導するのではなく、「ゴール型ゲーム」を指導するのであり、そのための題材がサッカーやバスケットボールなどの種目になっている。つまり、サッカーとは何かを考える前に、まずはゴール型ゲームについて理解しておく必要がある。

現在の体育では、「ゴール型」「ネット型」「ベースボール型」と大きく3つに分類されている(近年は「ターゲット型」のよう

もっとみる

評価のときにもつべき5つの視点

教師に限らず、すべての人は何かしらの対象を評価している。個人の成績かもしれないし、自分の健康状態かもしれないし、今日訪れたレストランの料理の味かもしれない。学校で教師が「評価」と聞くとすごく堅苦しい感じがするが、実はもっと日常的で感覚的なことなのだとも思う。

評価するとは、ものごとを価値づけし、場合によってはその因果関係などを推測する知的作業である。また、その評価の結果が自分の行動選択に影響を与

もっとみる
【実践編】マット運動×ゲーム ~カードバトル~

【実践編】マット運動×ゲーム ~カードバトル~

今回は、マット運動の新たな実践スタイルを提案する。これまでのマット運動といえば、「開脚前転」や「後転」などの技がテーマとなり、全員が同じ技を練習することが当たり前となっていた。したがって、個人の能力差が顕在化しやすく、また「できることが正義」のような強いプレッシャーもあり、極めて淘汰的な体育授業になりがちであった。

その解決策として、私は以前「パルクールスタイル」を提案し、多くの方に実践もしてい

もっとみる

運動会の表現種目に関する一考察

ここ数年はさまざまな分野で「あたりまえの見直し」がされてきている。学校もその例外ではなく、各校の努力で様々な部分にメスが入れられていることだろう。特に大きな見直し点の1つが学校行事であり、運動会の在り方は多くの学校で再検討がなされているはずである。

しかし、なかなか大幅な変更に踏み切れないのは、ある意味運動会の象徴ともいえるだろう「表現種目」の存在がかなり大きく影響しているのではないかと思う。実

もっとみる

「面白い!」「うれしい!」「楽しい!」の意味とその違い

私の記事を読んでくださっている方は、少なからず体育や子どもの運動指導に関心があるだろう。多くの方があるいは教師や指導者として子どもの前に立っていると想像する。自らが指導者として子どもたちに運動の場を提供したとき、やはり気になるのは子どもの生の反応である。わざわざ感想を記録させる人もいるが、それよりも実際の表情やついこぼれる一言の方がより多くの情報を与えてくれる。

当然、提供する側としては子どもに

もっとみる
体育は「study」か「play」か

体育は「study」か「play」か

体育をなんとかしたいと考えている教員はとても多い。積極的に研修に参加して専門性を高めようとしているモチベーションに満ち溢れた教員は、体育にとって希望の光である。私もその中の一人だが、いざ研修会に参加してディスカッションをすると、多くの場合で次のような質問がとんでくる。

「評価はどのようにしたらいいのですか?」
「学習カードはどのように活用していますか?」
「楽しい体育にしたいけど、どうしても技の

もっとみる

体育における学習者の「解放」

このマガジンでは、体育に関連する具体的な実践だけでなく、しばしば哲学的なテーマで考察を展開してきた。「中動態」や「エトス(ethos:倫理)」、「贅沢」といった概念を参照しながら、体育授業における新たな可能性の模索をしている。本稿もそのようなやや哲学的なロジックを書き綴った文章になるだろう。今回のテーマは「解放」である。

学習者を「解放する」とは本稿の中心的な概念となる「解放」は、ジャック・ラン

もっとみる

体育は、目的を「超越」できるか。~体育における「贅沢」~

「体育とスポーツのギャップを埋めることはできないのか」

この漠然とした問いから私の知的探求は始まっている。これまでもマガジンで50本近い記事をまとめてきたが、具体的な実践アイデアは思いついても、それを裏付ける理論や哲学はまだまだ途上にある。そんな中で最近読んだ2冊の本が重要なヒントをくれた。本稿は、それを体育に援用した考察である。初学者の私の理解では論理が飛躍していつになく難解になるかもしれない

もっとみる
楽しい『おにごっこ』のつくり方8選

楽しい『おにごっこ』のつくり方8選

だれもが好きな遊びといっても過言ではないだろう「おにごっこ」。氷おに、ドロケイなどが有名だが、実は多くの遊びやゲームの『原種』とよんでもいいくらい、その根底的な構造は単純である。そして、「スポーツ鬼ごっこ」や「カバディ」などの競技化や、「逃走中」などのエンタメ化、ボール要素などの追加で「ベースボール」や「ラグビー」などの複雑系スポーツへと進化している。

0.おにごっこの基本構造まず、おにごっこの

もっとみる

なぜ体育は「エンタメ」になれないのか?

先日私は次のようなツイートをした。

この真意を知りたいというコメントをいただいたので、私がこのように感じた理由を本稿にまとめることとする。まず簡単にロジックの整理をすると以下のようになる。

学校教育という文化の役割世の中に存在する文化は「それ自体を楽しむための文化」と「他の文化を生かすための文化」に分けることができる。教育という文化は後者であり、人々が他の文化を理解したり堪能したりするための”

もっとみる

今年度の体育を総括する

1年間の学級が終わりを迎えた。今年度は昨年度と同じ学年を持ちあがったが、クラス替えもあって初めての子と2年連続の子がシャッフルされた学級だった。この1年間も私の実践の中心は体育にあったが、子どもたちは何を感じていたのだろうか。また、今年度は5年生担任だったので、新体力テストの全国統計の対象でもあった。スポーツ庁から返ってきた自校の結果も非常に興味深い結果を示していた。さらに最終日の子どもたちへのア

もっとみる
【実践編】授業マネジメント~ハンドボール~

【実践編】授業マネジメント~ハンドボール~

過去に実践した「ハンドボール」は、多くの方に評価していただけた自身を代表する実践の1つである。前回は4年前の4年生での実践だったが、今年度5年生で改めて実践した。しかし、その間に職場も異動していたため、道具もまったく同じとはいかなかった。同じ内容のゲームを構想したが、学年や環境が違う中で適応させ、結果的に今回も大成功な単元とすることができた。

そこで、その授業を考案した本人が、学年や環境が違う中

もっとみる