小溝拓@アカデミック先生

今冬、マガジン『New体育論』の内容を中心に書籍化決定!!スポーツを理解するために、小…

小溝拓@アカデミック先生

今冬、マガジン『New体育論』の内容を中心に書籍化決定!!スポーツを理解するために、小学校教員を休職して大学院でスポーツマネジメントを学びました。現在は小学校現場に復帰し、スポーツの観点から体育に新しい発想を持ち込んだ実践をしています。 Twitter:@63academic

マガジン

  • 運動嫌いがゼロになる!子どもが考えて楽しむ体育ゲーム 動画集

    2024年1月出版の拙著『運動嫌いがゼロになる!子どもが考えて楽しむ体育ゲーム』内で紹介されているゲームのプレイ動画です。 マガジン内の記事や動画は、書籍を購入した方のみが見られる設定となっております。

  • New体育論-Management Perspective-

    小学校で体育を指導しながら、スポーツ産業のマネジメントを学んだ私が、スポーツが発展するためにあるべき体育の姿を様々な切り口から解説するシリーズ。これまでにはなかった「新しい体育の考え方」をマネジメントの視点で理論から実践まで幅広く紹介!

最近の記事

  • 固定された記事

体育とは、マーケティングである。

「体育はスポーツとは違う」「体育が目指すところは何だ」 「体育は子供をスポーツ嫌いにしている」 などといわれるようになって久しい。 なぜこういわれるようになったかといえば、それは「体育」に求められているものが時代とともに変わったからだ。 学校が扱う「体育」は、時代とともに学習指導要領の改訂とともに「修正」されてきた。しかし、その変化のスピードは社会のそれに比べると非常に遅く、「修正」程度では到底追い付けない。にもかかわらず、体育はその姿を大きく変えることもなく現代も存在して

    • 【実践編】ミッション達成型おにごっこ~逃走中~

      おにごっこにはさまざまなバリエーションがあり、各変数を調整することで無限にオリジナルおにごっこを作ることができる。そして、それらの変数の構造化は別稿でしてきた(『楽しいおにごっこのつくり方8選』を参照されたい)。 一方で、TV番組の企画でもあり、子どもたちの間でも非常に人気の高い「逃走中」というおにごっこゲームは、また違う要素が含まれる。そこで本稿では、一般的なおにごっこと「逃走中」の違いを整理し、私が実際に学級で行ったゲームのマネジメントについて紹介する。 1.【おにご

      • 【実践編】ゴール型ゲーム~サッカー~

        1.「ゴール型ゲーム」の特徴そもそも体育においては、「サッカー」を指導するのではなく、「ゴール型ゲーム」を指導するのであり、そのための題材がサッカーやバスケットボールなどの種目になっている。つまり、サッカーとは何かを考える前に、まずはゴール型ゲームについて理解しておく必要がある。 現在の体育では、「ゴール型」「ネット型」「ベースボール型」と大きく3つに分類されている(近年は「ターゲット型」のようなジャンルを追加している指導者もいる)。これらはゲームの構造をもとに区別されたも

        • 評価のときにもつべき5つの視点

          教師に限らず、すべての人は何かしらの対象を評価している。個人の成績かもしれないし、自分の健康状態かもしれないし、今日訪れたレストランの料理の味かもしれない。学校で教師が「評価」と聞くとすごく堅苦しい感じがするが、実はもっと日常的で感覚的なことなのだとも思う。 評価するとは、ものごとを価値づけし、場合によってはその因果関係などを推測する知的作業である。また、その評価の結果が自分の行動選択に影響を与えることも少なくない。では、我々は対象について、何をどのように評価しているのだろ

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        記事

          【実践編】マット運動×ゲーム ~カードバトル~

          今回は、マット運動の新たな実践スタイルを提案する。これまでのマット運動といえば、「開脚前転」や「後転」などの技がテーマとなり、全員が同じ技を練習することが当たり前となっていた。したがって、個人の能力差が顕在化しやすく、また「できることが正義」のような強いプレッシャーもあり、極めて淘汰的な体育授業になりがちであった。 その解決策として、私は以前「パルクールスタイル」を提案し、多くの方に実践もしていただいている。他の実践を見ても、「シンクロマット」のような表現運動の要素をミック

          【実践編】マット運動×ゲーム ~カードバトル~

          運動会の表現種目に関する一考察

          ここ数年はさまざまな分野で「あたりまえの見直し」がされてきている。学校もその例外ではなく、各校の努力で様々な部分にメスが入れられていることだろう。特に大きな見直し点の1つが学校行事であり、運動会の在り方は多くの学校で再検討がなされているはずである。 しかし、なかなか大幅な変更に踏み切れないのは、ある意味運動会の象徴ともいえるだろう「表現種目」の存在がかなり大きく影響しているのではないかと思う。実際、運動会準備や練習の大半がこの表現種目に向けられたものであり、正直表現種目さえ

          運動会の表現種目に関する一考察

          「面白い!」「うれしい!」「楽しい!」の意味とその違い

          私の記事を読んでくださっている方は、少なからず体育や子どもの運動指導に関心があるだろう。多くの方があるいは教師や指導者として子どもの前に立っていると想像する。自らが指導者として子どもたちに運動の場を提供したとき、やはり気になるのは子どもの生の反応である。わざわざ感想を記録させる人もいるが、それよりも実際の表情やついこぼれる一言の方がより多くの情報を与えてくれる。 当然、提供する側としては子どもにポジティブな体験をしてほしいし、ポジティブな言葉や反応が子どもから聞きたいもので

          「面白い!」「うれしい!」「楽しい!」の意味とその違い

          体育は「study」か「play」か

          体育をなんとかしたいと考えている教員はとても多い。積極的に研修に参加して専門性を高めようとしているモチベーションに満ち溢れた教員は、体育にとって希望の光である。私もその中の一人だが、いざ研修会に参加してディスカッションをすると、多くの場合で次のような質問がとんでくる。 「評価はどのようにしたらいいのですか?」 「学習カードはどのように活用していますか?」 「楽しい体育にしたいけど、どうしても技の指導もしなくちゃいけなくて…」 非常にまじめである。まじめといえば聞こえはいい

          体育は「study」か「play」か

          体育における学習者の「解放」

          このマガジンでは、体育に関連する具体的な実践だけでなく、しばしば哲学的なテーマで考察を展開してきた。「中動態」や「エトス(ethos:倫理)」、「贅沢」といった概念を参照しながら、体育授業における新たな可能性の模索をしている。本稿もそのようなやや哲学的なロジックを書き綴った文章になるだろう。今回のテーマは「解放」である。 学習者を「解放する」とは本稿の中心的な概念となる「解放」は、ジャック・ランシエールの『解放された観客』で提示されたものである。そもそも「解放」という語には

          体育における学習者の「解放」

          体育は、目的を「超越」できるか。~体育における「贅沢」~

          「体育とスポーツのギャップを埋めることはできないのか」 この漠然とした問いから私の知的探求は始まっている。これまでもマガジンで50本近い記事をまとめてきたが、具体的な実践アイデアは思いついても、それを裏付ける理論や哲学はまだまだ途上にある。そんな中で最近読んだ2冊の本が重要なヒントをくれた。本稿は、それを体育に援用した考察である。初学者の私の理解では論理が飛躍していつになく難解になるかもしれないが、なるべくかみ砕いて記述するようにしたい。 1.目的的なスポーツと手段的な体

          体育は、目的を「超越」できるか。~体育における「贅沢」~

          楽しい『おにごっこ』のつくり方8選

          だれもが好きな遊びといっても過言ではないだろう「おにごっこ」。氷おに、ドロケイなどが有名だが、実は多くの遊びやゲームの『原種』とよんでもいいくらい、その根底的な構造は単純である。そして、「スポーツ鬼ごっこ」や「カバディ」などの競技化や、「逃走中」などのエンタメ化、ボール要素などの追加で「ベースボール」や「ラグビー」などの複雑系スポーツへと進化している。 0.おにごっこの基本構造まず、おにごっこの基本構造をみると、「逃げる者」vs「追う者」という『狩り』の図式がその原型となっ

          楽しい『おにごっこ』のつくり方8選

          なぜ体育は「エンタメ」になれないのか?

          先日私は次のようなツイートをした。 この真意を知りたいというコメントをいただいたので、私がこのように感じた理由を本稿にまとめることとする。まず簡単にロジックの整理をすると以下のようになる。 学校教育という文化の役割世の中に存在する文化は「それ自体を楽しむための文化」と「他の文化を生かすための文化」に分けることができる。教育という文化は後者であり、人々が他の文化を理解したり堪能したりするための”補助”的な役割を持つ。 中でも学校教育は、子どもたちにそれらの文化の「試食」を

          なぜ体育は「エンタメ」になれないのか?

          今年度の体育を総括する

          1年間の学級が終わりを迎えた。今年度は昨年度と同じ学年を持ちあがったが、クラス替えもあって初めての子と2年連続の子がシャッフルされた学級だった。この1年間も私の実践の中心は体育にあったが、子どもたちは何を感じていたのだろうか。また、今年度は5年生担任だったので、新体力テストの全国統計の対象でもあった。スポーツ庁から返ってきた自校の結果も非常に興味深い結果を示していた。さらに最終日の子どもたちへのアンケートも含め、結果から見えてきたことをまとめてみる。 1.今年度の主な体育実

          今年度の体育を総括する

          【実践編】授業マネジメント~ハンドボール~

          過去に実践した「ハンドボール」は、多くの方に評価していただけた自身を代表する実践の1つである。前回は4年前の4年生での実践だったが、今年度5年生で改めて実践した。しかし、その間に職場も異動していたため、道具もまったく同じとはいかなかった。同じ内容のゲームを構想したが、学年や環境が違う中で適応させ、結果的に今回も大成功な単元とすることができた。 そこで、その授業を考案した本人が、学年や環境が違う中でどのように修正をして実践したのかを記すことで、今後の皆さんにとって参考になるだ

          【実践編】授業マネジメント~ハンドボール~

          「ルールを守る」だけで本当にいいのか?

          体育では、スポーツやゲームを通してルールを守ることの大切さを伝えなければならない。それは多くの教員が無意識に、あるいは非常に高い優先度をもって指導していることだろう。しかし、本稿はあえて「ルールを守る」ことを批判的に捉えたい。先日読んだ川谷茂樹氏の「スポーツにおけるルールの根拠としてのエトスの探求」という論文が非常に重要なインプリケーションを与えてくれた。やはり「エトス」がキーワードになるのだが、その詳細は後述するとし、先に具体的な事例から考えたい。 次の4人の行為を、あな

          「ルールを守る」だけで本当にいいのか?

          ベースボール型の中でも「野球」が特殊なワケ

          体育の授業でも毎年必ず扱う「ベースボール型」とよばれるゲーム。最も代表的というべきはやはり「野球」だが、他にも「キックベース」、「クリケット」、「Baseball5」など多様にある。これらはサッカーやバレーボールなどの他の球技とは違う「型」として区別されているが、一体ベースボール型とは何が特徴なのだろうか。そして、その中でも「野球」という一大スポーツがベースボール型の中でも特殊であるとはどういうことか。 「攻撃」と「守備」まず、スポーツに限らず「ゲーム」とよばれるもの一般に

          ベースボール型の中でも「野球」が特殊なワケ